私の提言 高等教育の質保証を品質管理の観点から考える
筑波大学 伊藤 誠
高等教育(筆者の関心は大学教育)における「質保証」の重要性が大学内外で指摘されるようになってきました。実際に、筆者の所属する大学でも、教育の質保証、PDCA、マネジメント、といった用語を見たり聞いたりすることは日常的になりつつあります。最近では、教学マネジメントをしっかりやれ、と言われるようになっています。
高等教育の質保証のために日本国内で行われている取組は、日本品質管理学会(本会)で議論されてきた品質管理の考え方、方法論とは異なる独自の発展をしてきたように思えます。たとえば、高等教育の質保証という文脈では、質保証に内部、外部の違いがあり、内部質保証、外部質保証、という言い方をします。内部質保証については、(独)大学改革支援・学位授与機構のサイトに定義が示されていますが、これを見る限り、本会の定義する「品質保証」とはずいぶん考え方が異なるように筆者は感じます。
高等教育の質保証に、本会はいかにかかわっていくべきでしょうか。日本の品質管理学は製造業を中心として発達してきたのは事実だと思いますが、他方で医療や、広くサービス一般の品質も議論されるようになってきています。日本の品質管理学において、高等教育がスコープの範囲外であるとは思えません。高等教育の品質管理に、本会の専門家が貢献できるところはたくさんあるようにおもいます。方法論の開発はもちろん重要です。品質管理の研究者としての本分はそこにあるのでしょう。さらには、学術界の品質管理研究者が、自身の所属する高等教育機関において当事者として、高等教育の質の向上に取り組むことを積極的に行ってもよいのではないでしょうか。品質管理研究者でなくても、教学マネジメントにかかわる担当教員が、職域会員として本会に参画し、TQMの考え方や方法論を高等教育の質の向上に活かしていくという道筋もありそうです。
「そんなの無理だよ、わかってんだろ」という声も聞こえてきそうです。他方で、いくつかの大学では、学長のリーダーシップのもと、改革に成功し、教育の質向上を実現しているようです。競争的資金獲得のためのやらされる改革にとどまらず、自主的なマネジメントを各教育機関・教育組織が活発に取り組んでいくことを期待していますし、私自身も所属組織でどう取り組むべきかを考えていくつもりです。
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