私の提言 医療界の品質管理
総合犬山中央病院 院長 齊藤 雅也
昨年10月に、麻生飯塚病院が医療界では初めてデミング賞を受賞されました。同院が約30年前からTQMに取り組んでこられた素晴らしい成果だと思います。
1999年に横浜市大病院事件、都立広尾病院事件が起こって以来、医療安全、医療の質管理が改めて重要視されてきました。私は、2003年に4病院団体が主催する「医療安全管理者養成講習会」に参加し、TQMをマネジメント手法として使っている病院があることを初めて知りました。これは病院運営に極めて有用と考え、前任の関中央病院にTQMの導入を図り、2005年に品質管理の専門家の助言をいただき、品質管理学会中部支部の下部組織として「中部医療の質管理研究会(CMQM)」をつくり、11医療機関と連携して小カイゼン活動やQCに取り組んできました。2006年3月の第1回関中央病院QC大会では、一応10演題の報告があったのですが、QCストーリーになっていない未熟なものが多く、「忙しい」を連発する医療従事者にはなじめない感がありました。ところがこの第1回QC大会での優勝チームが、2006年6月にある地方新聞の夕刊の一面に「病院も改善」という見出しで取り上げられ、この記事がスタッフのモチベーションを上げ、やらされQCではなく、各部署で自ら考え自ら実装する活動が増えていきました。全国に目を向けると「医療のTQM推進協議会」があり、全国的にはTQMに取り組んでいる病院が150程度あることを知りました。
2010年にCMQMはLean Managementに取り組んでいるアメリカの病院の視察ツアーを企画しました。4つの病院と、IHI(Institute of Healthcare Improvement)を視察できたことは幸運でした。アメリカには医療の改善活動を推し進める研究所があることにある種の衝撃を受けましたが、JSQCには医療の質・安全部会があります。医療は、高度複雑化したプロセスが増え、高齢化社会になり患者さんとのコミュニケーションに時間と労力を要する業界です。産業界の品質管理手法を学び、麻生飯塚病院の活動を参考にしながら、やはり各病院が自院の資源(人・物・金)を考慮した創意工夫・改善活動を進めていくことが益々重要となっていくでしょう。
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