トピックス 論文誌編集委員会の紹介

論文誌編集委員会 委員長 山本 渉

 論文誌編集委員会は品質誌に関わる編集組織の一つで、投稿論文を取り扱います。投稿論文の受領から始まり、査読や改訂など著者と審査員の間のコミュニケーション、そして掲載などの判定までの一連のプロセスが、論文誌の編集です。論文投稿、学位審査、論文審査などの経験のある産学の学会員を中心に20名前後の委員で構成され、8月を除いて毎月、開催されている常設の委員会です。

 2名以上の匿名の審査員による査読に基づいて審査が行われる区分は(1)報文、(2)技術ノート、(3)調査研究論文、(4)応用研究論文、(5)投稿論説、(6)研究速報論文の6つです。これらの審査は投稿論文審査内規(学会規則207)に基づきます。宮川雅巳先生(東京工業大)が1996年に品質誌に書かれた「投稿論文のあり方と書き方・直し方」にも紹介されているように、当初の投稿区分は報文のみでした。数回の変更を経ており、最新の投稿区分は、黒木学先生(横浜国立大)の下で2018年に新設された、研究発表会で発表された内容の投稿を勧める研究速報論文です。
 他の3つの投稿区分(7)クオリティレポート、(8)レター、(9)QCサロンは原則として、論文誌編集委員会の委員1名が幹事として審査を担当します。この対応はクオリティーレポート、レター及びQCサロン審査基準(学会規則322)に基づきます。同規則に、高度な学術的レベルは要求せず、以下のような基本的事項に合致する論文を積極的に掲載することを主眼とする、として7つの事項が規則に記されています。
 森田浩先生(大阪大)の下で2022年に、エディトリアルマネージャーという投稿・審査システムを導入しました。このシステムは投稿論文を扱うプロセスの大半を電子化するもので、事務局と編集委員会の仕事にも少なからず変更が生じました。それでも、投稿論文の編集プロセスに実質的な変更が生じないように気をつけて運用を開始しています。
 ここで査読について紹介します。投稿論文審査内規には、2名の審査員を指名し,論文の専門的・技術的内容について審査を依頼する、と記されています。これを一般に、論文審査または査読と呼びます。投稿論文の著者はその内容の掲載時の責任者、審査員は投稿論文の審査に足る専門知識や技術を有する方にお願いしています。査読はこの両者の間の、文書によるディスカッションです。
 著者が論文を投稿し、審査員が審査意見を提出し、編集委員会が判定することまでをディスカッションの1ラウンドと数えると、そのラウンドで掲載に向けた判定が可能か、次のラウンドを開始するために著者に原稿の改訂を依頼するか、あるいはそのラウンドでディスカッションを打ち切ることが望ましいか、などを委員会で検討し、必要な判定を行います。あるラウンドを終えた時点で、採択に向けた前向きな見通しが立たない時などに、掲載不可というお返事を差し上げることもあります。論文誌編集委員会は合議制ですが、その判定の責任は委員長が負います。
 審査員が起草する審査意見には、優しく助言する意見、学術的な議論を持ちかける意見など、様々な意見が並んでいて、初めて受け取るときには戸惑いが生じるかもしれません。論文が解決したと主張する問題に関して、基本的な文献調査や現状調査に不足があり評価できない、とする意見が混じることもあり得ます。それらに対して、著者は自らの責任で対応を選択できます。査読というディスカッションの方法において、よい論文に関わりたいという点で、著者と審査員の価値観が一致して欲しいと編集委員会は願っています。
 また審査員は、修正が必要な箇所をすべて指摘するとは限りません。指摘事項が多く、逐一挙げることが困難な場合には、最初の幾つかを指摘して、あとは同様の対応を望むという指摘の仕方もあり得ます。これは学術論文に限らず、業務文書に対するメンター、上司、先輩、また周囲からの助言と同様と考えています。指摘事項のみの対応ではなく、審査員の趣旨を読み取った上での、原稿の修正対応をお願いしたいと考えています。
 最後に、論文誌編集委員会は、学会員からの投稿論文の編集を担当します。そして論文誌編集委員会はいつでも、会員の皆様からの論文投稿をお待ちしています。


 

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