4月開催のクオリティートークレポート
品質管理に関わるすべての人を対象に開催している「クオリティートーク」。話題の書籍の著者や、旬なスピーカー、魅力的な学会メンバーなどが情報発信して、参加者と本音で語り合う「場」です。
今回は、4月に開催した名古屋工業大学で元 トヨタ自動車の藤原慎太郎先生とトヨタ自動車 デジタル変革推進室 島田 悟氏の『トヨタ流DXを支える心理的安全性と仕事のスピードアップを実現する2つのカタ -若手に響く「ものの言いカタ」と「仕事の進めカタ」-』をご紹介します。
スピーカー1 トヨタ自動車 デジタル変革推進室 島田 悟氏
島田氏は主に人事系の仕事畑を歩み、現在はデジタル変革推進室で業務をされています。
なぜDXに「心理的安全性」が必要なのか?
最近の職場では、マネージャー層は、上からは「昭和風おやじキャラの上司」。下からは「上司にパワハラするメンバー」や「強く言うと退職してしまう若手」の間で悩んでいます。
マネージャーが孤独を感じたり、自信を失っています。
現在、トヨタ自動車はモビリティ・カンパニーへのフルモデルチェンジに挑んでいます。
モビリティ・カンパニーへの変革はヒト・組織・ルール・プロセス・システムを抜本的に
変えていく必要があり、その一つの手段として、デジタル化があります。
デジタル変革推進室は2021年1月に立ち上がった部署です。デジタルを駆使し、お客様体験の向上や
業務プロセスの改革・従業員の働き方改革をミッションにしています。
デジタル化は、ツールの導入だけで留まってはならず、働き方や風土を変えることが重要です。
その際「心理的安全性」がポイントになります。
「心理的安全性」とは、意見が言いやすい、本音でものを言いやすい、助けを求めやすいなどを
イメージするとよいでしょう。
デジタルで心理的安全性が必要な理由を簡単に説明します。
現代は「正解がない時代」と言われます。
従来型のピラミッド組織よりも、全員活躍できる組織がフィットし、
アジャイルな働き方で早く失敗し、失敗を許容し、失敗から学ぶ働き方をしていきます。
そのためには、健全な対話が必要で、その土台として「心理的安全性」が必要です。
トヨタでの「DX×心理的安全性」の取り組み
心理的安全性の取り組みは、最初は草の根活動的に始めました。できるところから、半径数メートルを変えていくようなボトムアップ活動でした。
スローガンは「月曜、会社に来たくなる心理的安全性とは」です。
また、心理的安全性を自己学習できるよう、「お道具箱」を用意しました。基本講座の動画、心理的安全性の講演のアーカイブ動画、ショート動画など充実しています。
お道具箱などは、個人を対象とした取り組みですが、最近は部門や事業部を対象とした取り組みも増えてきました。たとえば事業部長が心理的安全性に関心を持ち、事業部に導入したいといったニーズが生まれており、導入支援をしています。導入支援でポイントになるのが「リーダーづくり」です。
心理的安全性の取り組みはトヨタグループ全体にも広がってきています。そして、グループ外の企業とも活動する機会も生まれてきました。今回のトークもその一つです。
スピーカー2 名古屋工業大学 藤原 慎太郎氏
はじめに(最近の状況)
学生を含む「若手」について感じることがあります。
たとえば、褒めて育てる教育を受けてきたため叱られる・責められることに不慣れである、競争心や欲がない、わからないことは検索して答えを探すなどです。
一方で会社は従来型のものの言いカタ、たとえば「どれだけ自分の頭で考えたの?」「そもそも目的はなんだっけ?」と若手に聞くことも多く、うまく答えられず自信を失ってしまうケースが多いようです。
ものの言いカタはモチベーションや生産性に影響を与えます。そこで、上手なものの言いカタを考えてみました。
上手なものの言いカタ
若手に対する上手なコミュニケーションのポイントは4つです
1.モチベーションが上がるように伝える
2.指導内容を納得できるように伝える
3.具体的な行動をイメージできるように伝える
4.やり直しをできるだけ減らせるように伝える
「モチベーションが上がるように伝える」はまずは、行動したことをほめることと、本人にとってのメリットとして成長につながることを説明するとよいでしょう。
「指導内容を納得できるように伝える」の背景は若者が将来に不安を感じていることです。高度成長やバブル期のように右肩上がりでやることが明確な時代ではありません。そのため、なぜ行うかを納得するまで説明することが大事です。
仕事の進めカタをつかったコミュニケーション
「やり直しをできるだけ減らせるように伝える」は若手に対する上手なコミュニケーションのポイントの1~3を言わなくて済むようにするため行います。
そのためには、考える視点やプロセス(手順)をはじめに学ぶ必要があります。それが「仕事の進めカタ」です
「仕事の進めカタ」はツール化しています。先ほどの島田様のトークでも話があった「お道具箱」にも保管されています。
また、後述の書籍を購入すると日科技連出版社のホームページからダウンロードできます。
募集中のイベント・行事のご紹介
品質管理学会では様々なテーマでイベント・行事を開催しております。
募集中のイベント・行事は下記からご確認ください。
[blogcard url=”https://jsqc.org/category/event/”]
関連書籍
トークで紹介したものの言いカタ、仕事の進めカタを詳しく解説しています。
また、日科技連出版社のホームページから仕事の進め方ツールをダウンロードできます。ダウンロードで必要なパスワードは書籍に記載されています。ツールは©マークを付けていませんので、利用者の皆様で改良し、それぞれの職場流にカスタマイズして問題ありません。
トヨタ流DXを支える心理的安全性と仕事のスピードアップを実現する 2つのカタ
若手に響く「ものの言いカタ」と「仕事の進めカタ」
藤原慎太郎 著
A5/144頁
定価 1,980円(税込)
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