11月開催のクオリティートークレポート

~品質管理の旬な話題や情報をお届けするクオリティートーク~

品質管理に関わるすべての人を対象に開催している「クオリティートーク」。話題の書籍の著者や、旬なスピーカー、魅力的な学会メンバーなどが情報発信して、参加者と本音で語り合う「場」です。
今回は、11月に開催した細見純子氏の「モノからコトへの品質保証体系図-新しい価値創造のビジネスモデルを描く- 」をご紹介します。

海外企業の視察受け入れからスタートした品質保証

細見氏のキャリアは、中部品質管理協会で海外事業を担当するところからスタートします。

GM、フォード、クライスラー、ボーイング、オリベッティ、ルノーなどの大手海外企業の経営層がトヨタグループや松下などの日本企業を視察する際に通訳を兼ねて同行し、日本の品質経営や品質管理を紹介する役割を果たしてきました。

視察を通じて現場を見ていく中で、日本の品質管理の仕組みや働き方などに触れ、素晴らしい取組みだと深い関心を持つようになりました。

以降、デザイン思考や論理的思考なども学び、現在では企業だけでなくNPOや病院など幅広いフィールドで品質管理の指導者として活躍されています。

モノからコトへ

トークでは品質管理の概念を問題解決と顧客価値の最大化と捉え、現代の変化する環境に適応する方法についてお話しいただきました。

特に、自動車業界における変化と新しいビジネスモデルの必要性に焦点を当てており、持続可能な発展としての品質管理が重要になります。

自動車業界における将来の変化と、それに伴う品質管理のアプローチの変革について取り上げました。

2030年までに自動車業界を取り巻く環境が大きく変わると予測され、これに対応するために新しい品質管理の方法が必要です。

特に自動車業界の変化として、自動運転、コネクテッドカー、シェアリング、電動化などが注目されています。

これらの変化を持続可能な発展のためにどのように捉え、どう対応していくべきでしょうか。

従来のモノづくり中心のアプローチにプラスして顧客の体験価値を中心に据えたアプローチが必要になり、モノづくりだけでなくコトづくりも並行して対処する時代になります

技術革新だけでなく、これからは顧客の感情的価値を重視していく必要があります。

感情的価値について、顧客満足(CS)と顧客体験(CX)の概念を次のように説明されました。

顧客満足(CS)は、期待通り・満足などのモノの「機能的品質」が中心です。

一方、顧客体験(CX)は、驚きや感動など「感情的品質」が中心になり、センス、情緒的価値、知的価値、ライフスタイル価値、社会的価値などの要素が顧客の体験価値を形成します。

自動車産業においては、製品そのものの販売だけでなく、使用に基づくサービスもますます重視されていくのではないでしょうか。

2030年の品質保証へ向けて

社会やお客様の価値観は「モノ」から「コト」へシフトします。

また、通信機器やデジタル技術が進化し、モノの品質は データ活用とデータ分析を駆使して未然防止ステージに移行します。

そして、お客様が体験するコトの品質保証も情報処理技術や通信技術を活用して担保していきます。

品質はお客様への提供する価値となり、これまでの「Quality Control」とこれから重視すべきことである「価値創造」が加わったものになります。

価値創造はモノ・情報・経験・行動・持続性などの質の創造です。

細見氏は現在、「2030年の質・価値創造研究会」で産学と連携しながら、積極的に活動され、フレームワークやツールの開発にも携わり、書籍の執筆や講演を通じて力強いメッセージを発信していらっしゃいます。

今回のクオリティートークも非常に熱のこもった語り口で参加者も引き込まれ、質疑も本音ベースでアグレッシブな内容でした。

細見氏は書道も嗜まれており、その縁でドバイ万博でドバイの王族と世界の安寧を祈って平和の揮毫(きごう)をされました。

その際、ドバイの若き王女様から「私は生き甲斐(IKIGAI)という言葉が好きです」と声をかけられたそうです。

細見氏が標とされている、西堀榮三郎博士の理念に通じた言葉が巡り巡ってドバイで聞けたという話はとても印象的で、これからは多様性としての「個」が重要になり、個人が働くことの喜びややり甲斐も一層重要になると勇気づけられたクオリティートークでした。

品質管理学会では様々なテーマでイベント・行事を開催しております。

募集中のイベント・行事は下記からご確認ください。

2030年の品質保証: モノづくりからコトづくりへ

一般社団法人中部品質管理協会監修 細見純子編 IoT時代の品質保証研究会著
A5/160頁
定価 1,980円(税込)

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