トピックス ISO/TS 23686:2022サービスエクセレンス-サービスエクセレンスのパフォーマンスの測定 (Service excellence — Measuring service excellence performance)について
東京大学 水流 聡子
ISO/TC312/WG1(原則、モデル及び測定)にて開発が進められていたISO/TS 23686(サービスエクセレンス-サービスエクセレンスの測定)が2022年10月6日に発行されました。
本規格は、基本規格であるISO23592(サービスエクセレンス:原則及びモデル)が提示するサービスエクセレンスモデルを構成する以下の4つの側面のうち、第4側面(要素としては、「サービスエクセレンスの活動と結果のモニタリング」)について、より詳細化・具体化した規格となっているため、サービスエクセレンス規格を活用しようとするユーザにとって、有用と思われます。基本規格と同時発行されたISO/TS24082(サービスエクセレンス:卓越した顧客体験を実現するためのエクセレントサービスの設計)は、基本規格の第3側面(要素としては、「顧客ニーズ・期待・要望の理解」「卓越した顧客体験の設計と改良」)についてより具体的に設計活動のモデルなどを提示しており、同様にユーザにとって有用です。
- 第1側面:サービスエクセレンスのリーダーシップ及び戦略
- 第2側面:サービスエクセレンス文化および従業員エンゲージメント
- 第3側面:卓越した顧客体験の創出
- 第4側面:運用面でのサービスエクセレンス
本規格には、サービスエクセレンスのパフォーマンスを測定する測定基準及び方法が、サービスエクセレンスモデルを構成する4つの側面及び9つの要素に沿って「サービスエクセレンスのパフォーマンス」を測定する測定基準及び方法として、規定されています。
本規格は、エクセレントサービスを提供する全ての組織で、活用することができます。サービスエクセレンスのパフォーマンスを測定するために使用できる一連のアプローチ、特に卓越した顧客体験及びカスタマーデライトを向上させるために最も影響力のある要素を提供しているといえます。
自社にとって大切な顧客のために、顧客満足だけでなくカスタマーデライトをずっとお届けすることができる組織となるために、この測定規格を活用して、サービスエクセレンスという組織能力を獲得しその能力を活かした諸活動ができているか、サービスエクセレンスのパフォーマンスを測定しながら、改善のための介入(アクションプラン)の実施ができるようになることに役立てていただきたいと、われわれサービスエクセレンス規格開発の関係者は考えています。
基本規格であるISO/DIS 23592の規定に基づく形で、本規格では、組織はサービスエクセレンスモデルの4つの側面全てを測定することが望ましく、測定は、カスタマーデライト及び財務パフォーマンスの改善に貢献する、個別の優れたサービスの提供(サービスエクセレンスピラミッドのレベル3)、及び驚きのある優れたサービスの提供(サービスエクセレンスピラミッドのレベル4)に焦点を当てることが重要としています。
この規格の中では、metrics(メトリクス)は「測定基準」という意味で用いられています。サービスエクセレンス測定システムの中に、サービスエクセレンス(という組織能力)に関する、パフォーマンス測定システム・キーパフォーマンス指標・パフォーマンス指標システムがあります。
TC312/WG1プロジェクトリーダーは、ドイツ大手エネルギー企業E.ONのグローバルインサイト&カスタマーエクスペリエンス、グローバルリサーチ&インサイトリーダーであるChristopher Rastin氏です。彼は、オタワ大学で心理学と犯罪学を学び、初期のキャリアでは、カナダ矯正局や王立カナダ騎馬警察による先住民警察サービスの犯罪者治療プログラムや犯罪者プロファイリングの研究を行っていました。2013年、モントリオールからデュッセルドルフに移り、2018年からはE.ONでブランドと顧客体験の調査を行っていて、2022年よりE.ONのグローバルリサーチ&インサイトチームを率いています。
ISO/TC312のWG1とWG2における主査およびプロジェクトリーダーは、すべて、大学あるいは企業の研究者となっており、学術的・科学的観点から論理性・再現性のある社会システム構築を支援する規格の開発が進められているといえるかもしれません。
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