私の提言 「組織の質」へのアプローチ

桜美林大学ビジネスマネジメント学群 准教授 川﨑 昌

 日本品質管理学会に入会してちょうど10年になります。社会人大学院生として当学会で初めて研究発表を行ってから現在まで、調査や実験の方法論やそれらをデータサイエンス教育で活用するための手法を中心に、研究会で発表を重ねてきました。発表のたびに座長や参加者の皆さまから貴重なコメントをいただき、それにより研究を発展的に継続させることができています。
 私が専門とする研究領域は、工学ではなく経営学・社会学・心理学に関連する社会科学です。そのため、学会に入会した当初は未知の世界に飛び込んだような感覚がありました。しかし10年が経ち今では、今回の研究発表会ではこの発表を聞きたい、この発表や論文は自分の(あるいは指導している学生の)研究の参考になりそうだと思えるような状態に変化しました。さらに、日本における品質管理の歴史や学会に蓄積している知見を理解するにつれ、これらを社会科学の研究領域にもっと応用できるのではないか、ぜひ応用したいという気持ちが強くなりました。
 これからの10年で私が研究したいテーマのひとつが「組織の質」です。当学会の中心には「製品・サービスの品質」があるように感じていますが、学会のミッションには「製品・サービスの質、仕事の質、生活の質などあらゆるQuality(質)向上に役立つ技術・手法を研究・開発し、その成果をすべての分野に普及させることによって人と組織、社会の幸福に貢献します」と示されています。
 「組織の質」や組織風土づくりに関しては、1960年代から続くQCサークル活動の現場やTQM(総合的品質管理)の取り組みの中にも知見の蓄積があると思います。一方で、近年急速に労働環境の変化や個人の価値観の多様化が進み、人工知能による仕事の質の変化にも注目が集まるなか、その影響は”組織”にも及ぶと考えられます。よって、時代の変化を捉えた「組織の質」の定義、「組織の質」向上に寄与する要因の整理、そして「組織の質」を高める技術・手法の開発まで、検討・アプローチが必要です。企業に所属する会員も多い学会ですから、産学連携して「組織の質」に関する議論・研究を進めることができます。興味がある方、ぜひ一緒に進めませんか。

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