私の提言 産と学との相互啓発の促進
中央大学 中條 武志
1971年に日本品質管理学会が設立されてから、半世紀が経ちました。学会の設立目的は、初代会長・原安三郎氏が品質誌1巻1号の巻頭言で述べられているように、「多くの優れた研究が学会を通じて発表され、それを企業の場で実践し、企業での貴重な経験が新しい理論と結びつく」ことでした。
しかし、今の学会の状況を見ると,産と学との相互啓発の中で新たな実践や理論を生み出す場になっていないように思われます。学術誌として新たに英文誌Total Quality Scienceが発刊されるようになり、毎年10数本の論文が掲載されていますが、学の研究報告ばかりで、それを受けた産の実践報告はありません。また、品質誌については、解説記事が多く、学術論文の投稿数・掲載数が年々減少しています。
どうやったらこの状況を打開できるか、会員一人ひとりが真剣に考え、議論していく必要があると思います。
なかなか良い方法はありませんが、一つは、比較的活発に活動が行われている研究発表会やシンポジウムの要旨集をJ-Stage等を活用し、会員が容易に閲覧できるようにしてはどうでしょうか。有料の行事なので公開すべきでないという意見もあるとは思いますが、「産と学との相互啓発」というありたい姿に一歩でも近づく努力をすることが必要ではないでしょうか。
品質誌については、「ケースメソッド資料」を投稿区分として復活してはどうでしょうか。マネジメントにおいては、基本的な行動原則を踏まえた上で、それぞれの組織・職場の状況に適した活動を行うことが大切です。汎用性や、有効性の検証を求め過ぎると、新たな実践や理論が生まれなくなると思います。
計画研究会・公募研究会、2010年ごろに積極的に取り組んでいた産学協同研究についても、学術論文につながっていないものが少なくないのですが、再挑戦が必要ではないでしょうか。
JSQC規格やJSQC選書の発行、QC検定への関わりなどを通じて、学会として情報発信力は着実に向上しています。品質管理に関する新たな実践や理論を生み出すという学会の設立目的の達成に向けた取り組みが、他の団体と密接に協力しながら着実に進むことを期待したいと思います。
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