私の提言 JSQCの社会的責任
岡谷電機産業(株) 斉藤 忠
筆者は47年度から50年度までの4年間、事業と広報の担当の理事を務めさせていただきました。産業界のものがこの担当理事に任命されるのはJSQCの50年の歴史で初めてとお聞きしています。
当時、最初の任務は、にわかに社会現象化として注目をされはじめた“品質不正”の緊急シンポジウムの開催でした。その際、当時のJSQC会長であった小原会長(元前田建設工業(株)会長)や棟近副会長(早稲田大学教授)の強いリーダーシップのもと品質と名のつく不正に対して我が学会の対応指針を示されました。その後も、現在の永田会長のもと、手をこまねくことなく、品質不正を起こさないための標準づくりを進め、テクニカルレポート(以下TRと略す)をこの度、標準委員会の平林前委員長((株)テクノファ会長)や中條現委員長(中央大学教授)を中心にまとめていただき23年2月には発行できるまでに至っています。近日中にこのTRの講習会やTRをベースにしたシンポジウムも計画中です。
JSQCは他の学会に比較して学界よりも産業界の会員が多い特徴があります。これまでの産業界では、品質管理・品質保証の多くの研修はこれら品質不正を起こす前提になく、より確実な品質体制を築くための研修が中心と認識しています。JSQCは学術団体から品質不正がなぜ起き、永きに渡って発見されてこなかったのかを研究し、再発防止策を提案することも役割のひとつであると考えます。
JSQCは、産業界の会員が多い特徴からもこの品質不正について正面から向き合い解決していくことに取り組み、JSQCとしての社会的責任を果たすべきと私は考えています。
これまでも歴代JSQC会長のリーダーシップのもと、JSQCはこの品質不正に取り組んでまいりましたが、社会から見て評価いただけるレベルであったか否かはわかりません。社会はこの問題が公表されることと同期して疲弊してきています。必ず言えることは、我が日本の産業界はこの問題を解決して、日本の産業界の特徴のひとつである“品質第一”をあらためて社会から認知していただく必要があり、それは今の実態を観察すると産業界独自で治癒するのは難しいと私は考えます。そのためにもJSQCが果たす役割は重要であると私は考えます。
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