私の提言 オンライン研修を機に教育訓練の仕組みの見直しを
静岡大学 梶原 千里
新型コロナウィルスを契機に、オンライン授業・研修の普及が進みました。大学はオンライン授業の実施が余儀なくされ、昨年度はその対応に追われる日々でしたが、ようやく教員、学生ともに慣れてきました。大学の授業以外でも、私は本学会の医療の質・安全部会が主催する「医療のための質マネジメント基礎講座」のオンライン化に取り組みました。
この講座は、医療の質・安全の向上を目的とした、医療従事者向けのQMS教育コースです。転倒転落事故防止といった医療に特化した内容だけでなく、標準化、文書管理などのQMSの基本的な考え方や活動に関する内容も含んでいることが特徴です。2007年度の講座開始当初から集合研修で実施してきましたが、コロナを契機に昨年度からオンデマンド型コンテンツを作成し、配信しています。このような状況下なので、申込者は少ないと予想していましたが、結果的には集合研修時よりも増加しました。オンラインの強みをいかし、同じ組織の方ならば、期間中は誰でも何度でも受講できるという団体プランを導入したのですが、これが多忙な病院の方々のニーズにマッチしたようです。
一方で、すべての単元でオンデマンド型が最適な手段ではないという課題もあります。例えば、危険予知トレーニングなどは、演習が不可欠です。当面は、Zoomなどを用いたリアルタイム型でこれらを実施する方針ですが、いずれは対面とオンラインを併用する予定です。座学が主体の単元はオンラインで、演習を行う単元は対面で実施することで、オンラインのよさをいかしつつ、演習効果の向上や受講者間交流も可能となり、より魅力的な講座となるでしょう。
大切なことは、オンライン研修になったとしても、育てたい人材像と教育目標を明確にし、それを達成できるような教育研修体系を整え、各内容を習得してもらうために最も効果的な手段を選定していくことだと考えます。対面で行っていたことをそのままオンラインで実施しても、効果が得られない場合があり、教育内容の見直しも必要かもしれません。人材育成はTQMで特に重視されていますが、昨年度の活動を通して、改めて教育の体系的管理の大切さを実感しています。経営環境も大きく変わりつつある今、教育訓練の仕組みを振り返られてみてはいかがでしょうか。
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