トピックス 「組織能力:サービスエクセレンス」と「エクセレントサービスの設計活動」の規格
―ISO 23592及びISO/TS 24082について―

東京大学 水流 聡子

 成熟した先進国として生き残るための変化の手段として、欧州では「組織能力:サービスエクセレンス」を獲得し、エクセレントサービスの提供による金銭的・非金銭的な利益による組織のサクセスと、価値共創する従業員と顧客の幸せ度の向上が目標となりました。
 ドイツでは2011年にDIN SPEC 77224、イギリスでは2014年にBS 8477が発行され、欧州規格としてCEN/TS 16880が2015年に発行されました。産業領域におけるこれら規格の活用と成果に基づき、ドイツからの提案でISO/TC312 Service in Excellenceが設置され、2021年6月に2つの規格が発行されました。

 (1)IS23592 Service Excellence-Principles and model
    IS23592 サービスエクセレンス- 原則とモデル
 (2)TS24082 Service excellence
   -Designing excellent service to achieve outstanding customer experiences
    TS24082 サービスエクセレンス-卓越した顧客体験を実現するエクセレントサービスの設計

 【サービスエクセレンスという組織能力の要素(4側面・9要素)】
 優れたサービスを提供し続けることができるようになるために、ISO 23592では、卓越した顧客体験とデライトにつながる組織活動の要素を、サービスエクセレンス・モデルとしてまとめています。モデルの中心には顧客デライトを絶え間なく実現するという目標が示されています。つまり、顧客デライトを生み出せる組織能力は、以下に示す4つの側面・9つの要素から、組織をみなおし、変化させていくことが必要であることがわかります。これらの側面や要素の間に順序関係はありません。経営者・中間管理者・スタッフが顧客のデライト創出へ向けて一体となって、新たな価値創造のための活動が展開される組織能力を獲得していくことを支援するための原則とモデルを提示してくれる規格といえます。

 (1)サービスエクセレンスのリーダーシップと戦略
   ・リーダーシップとマネジメントの条件
   ・サービスエクセレンスのビジョン、ミッション、戦略
 (2)サービスエクセレンスの文化と従業員エンゲージメント
   ・サービスエクセレンスの文化
   ・従業員エンゲージメント
 (3)卓越した顧客体験の創出
   ・顧客ニーズ、期待、要望の理解
   ・卓越した顧客体験の設計と改良
   ・サービスイノベーションマネジメント
 (4)運用面でのサービスエクセレンス
   ・顧客体験に関わる効率的で効果的なプロセスと組織構造のマネジメント
   ・サービスエクセレンスの活動と結果のモニタリング

 【新たな価値創造を実現するためのエクセレントサービスの設計活動(5つの活動)】
 ISO/TC312/WG2の会議では、エクセレントサービスとしての記述に特化すること、そのために組織が取るべき行動を中心に書くこと、が方針として決まりました。
 図は、優れたサービスの設計活動内の関係を示しており、左側にあるエクセレントサービスの設計プロジェクトの計画を経て、図の中央にある(A)-(E)を適宜追加したり繰り返し行ったりすることを通じて、顧客デライトを目指していきます。設計し終えたエクセレントサービスが実際に提供・使用されれば、新しい評価活動のきっかけとなるフィールドデータが生み出されます。これらのフィールドデータには、サービスの運用や顧客体験に関するデータが含まれており、点線矢印に示されるように必要に応じて他の(A)-(D)の活動が反復されていきます。どの活動段階からでも開始することが可能です。

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