私の提言「不確実な「初期段階」を科学する 
-商品企画研究の再興に向けて-」

日本文理大学 経営経済学部 小久保 雄介

 企業が持続的に成長を遂げるためには、絶え間ない新製品・サービスの創出が不可欠である。このプロセスの入り口を担う「商品企画」という領域は、かつて日本において「商品企画七つ道具(P7)」として世界に類例を見ない形で体系化され、実務で広く活用されてきた。
 しかし、私が計量テキスト分析を用いて国内の製品開発関連論文を調査した結果、「商品企画」という言葉の登場頻度は1990~2000年代の隆盛期と比べて相対的に低下しており、論文数も2007年をピークに減少傾向にあることが確認された。学術的な探究はいまや実践事例や教育現場での言及に留まっており、かつての熱量は見る影もない。この「退潮」は単なる流行り廃りではなく、研究コミュニティ全体が真剣に向き合うべき問題だと私は受け止めている。
 特に深刻なのが、新製品開発の初期段階への研究の手薄さである。海外では「ファジー・フロント・エンド(FFE)」や「フロント・エンド・オブ・イノベーション(FEI)」として相応の研究蓄積があるこの領域において、国内では品質管理・ 経営学・マーケティングといった各分野がそれぞれの文脈で断片的に論じるにとどまり、領域をまたいだ体系的な研究知見が形成されにくい状況にあるのではないか。顧客ニーズが高度に多様化・複雑化する現代において、この「曖昧さ」を論理的に制御可能なプロセスへと昇華させることは、日本企業の持続的な競争力に直結する喫緊の課題である。
 では、何をすべきか。私が強調したいのは、P7をはじめとする日本固有の商品企画手法をFFEおよびFEIと積極的に接続すべきだという点である。 P7が扱うニーズ調査・アイデア発想・コンセプト評価といった一連のプロセスは、これらの概念が対象とする領域と本質的に重なる部分が大きい。海外の概念を単に輸入するのではなく、日本の実務経験を理論として昇華させる独自の研究軸を打ち立てること、そして手法研究と実証研究を両輪として着実に積み重ねていくことを、学会内外の研究者に広く呼びかけたい。
 なお、JSQCの「商品開発プロセス研究会 WG1」においても、他分野の知見を参照しながらこの議論を継続していく予定である。学際的な探究こそが、日本の価値創造を支える新たな知の基盤となると信じている。かつて品質管理分野が牽引した商品企画研究の熱量を現代に取り戻すこと、それが私の提言である。
 以上よろしくお願い申し上げます。

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jimukyoku01
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