第148回講演会ルポ
再発防止の質向上のための視点と進め方
2023年5月12日(金)に第148回(中部支部第62回)講演会がオンラインで開催された。講演者はSQCテクノサポート代表の小杉敬彦氏で、トヨタ自動車(株)でSQC、自工程完結、再発防止の推進に長年尽力されたご経験から上記テーマでご講演いただき、参加者は67名であった。
事故・災害が発生した際の再発防止策には「注意確認を徹底する」「管理体制を強化する」など、人の意識や記憶に頼るものが挙げられることが多い。しかしそのような対策では継続性や有効性に不安が残ることから、真因を追求して本質を捉えた再発防止策を立案するための手順・考え方が重要となる。全体を見える化し、問題を発生・流出させた部署と仕事を洗い出す「振り返り」、仕事を詳細なプロセスに分解して問題を特定する「プロセス解析」、なぜなぜ分析などを用いて仕事の進め方を深掘りする「真因追求」を経て、継続性や汎用性を備えた再発防止策を立案する手順について説明いただいた。
続いて、こういった考え方を普及・拡大していく推進活動についてのお話があった。初期は社内にて取り組み、負担感を抑えることや早期に各部署で自立して活動できることを目指し、成果を挙げた。続く段階では一部の取引先企業に活動を拡大し、各事業部などの単位で自立的に再発防止が実施可能な状態を目指し、活動が順調なグループでの取り組みをフィードバックするなど活動計画に反映し、活動の質向上を果たした。さらなる段階は現在も推進中で、活動範囲と活動形態をさらに拡大し、調達の仕組み・制度として確立した。また取り組みにおける成功・失敗事例を共有し、推進担当者マニュアルを作成して展開しているとのことであった。
最後に、再発防止の推進においては未来志向で活動することが重要で、失敗した人を追及するのではなく、傾聴して想いや事実を引き出すことで真因追究するべきであると提言をいただいた。製造業に限らず、多くの場面で大変参考になると感じたご講演であった。
石井 成(名古屋工業大学)
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