第150回講演会ルポ
飯塚病院のデミング賞受賞に寄せて
-飯塚病院で学んだ品質管理-

 2023年9月4日(月)に第150回(中部支部第63回)講演会がオンラインで開催された。講演者は(株)麻生飯塚病院特任副院長の安藤廣美氏で、当病院がデミング賞を受賞されたのを機会にこれまでの品質管理の取り組みについてご講演いただいた。
 飯塚病院は1918年(大正7年)に九州の筑豊地域に地域医療の中核を担う地域医療支援病院として“群民のために良医を招き、治療・投薬の万全を図らんとする”を創業の精神に掲げ、今年開院105周年を迎える歴史のある高度急性期・急性期病院である。
 医療の質向上のため、1992年より改善活動(TQM活動)を開始。米国の医療の質向上に関する国家実証事業(NDP)がもたらした効果から、医療ケアを“プロセス”として捉え、患者一人に一つの“医療記録”が用意されることが顧客重視の考え方につながることなどを学んだ。院内に改善推進本部を置き、問題解決の力量を獲得する教育実践手段であ“飯塚病院TQM大会”を全職員の満足度向上の大切な機会とも位置付けている。
 また、国内医療のTQM実証プロジェクト(日本版NDP)にも参加し“質・安全”、“医療に関わるシステム”の考え方や“患者本位の質”のあり方などを学んだことが今日の“医療の質保証システムと組織的な質安全管理の能力及び組織運営体制の構築”につながっている。即ち患者の安全確保のためプロセスに着目し、工程を分解し観察することで問題、課題が見えてくる。看護ナビや電子カルテなどのICTも駆使しClinical Pathを活用・整備し各工程の完結(医療では仕掛品状態では終業不可)、医療の質の改善を推進してきた。
 ISO9001認証取得においては、リーダーや現場スタッフの役割分担の共通理解がTQM構築の基本要素として大切であり、患者をお待たせしない効率的な診療体制を確立するためにTPSの考え方による改善(サイクルタイム改善や7つのムダの視点等)、RPAの活用などにより業務量を9割以上削減できたことなども含め、他業界も大いに参考にしたいと感じたご講演であった。

 深谷 公宣(トヨタ車体(株))

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