第127回クオリティートーク ルポ
歩車共有空間を走行する自動運転の価値と安全の共創

 2021年12月21日(火)、第127回クオリティトークが開催され、筑波大学の伊藤誠先生から「歩車共有空間を走行する自動運転の価値と安全の共創」という興味深い話題をご提供いただきました。
 近年の自動運転では、自動ブレーキや高速道路での運転軽減のための自動化などがしばしば話題に上りますが、期待されている実用化の一つに、低速での移動サービスがあります。移動に困難さを感じる人をサポートする自動運転では、車道と歩道とが分離されている通常の空間だけではなく、両者が一体となり空間を共有する使い方が可能になるというのです。歩者共有空間は、Shared Spaceとも言われ、そこでは自動運転が新しい社会生活のあり方、価値を生み出す可能性があるという夢の膨らむお話でした。実際、歩車が分離されている現在の道路では、安全性が高い反面、向かい側のお店に行くために、遠くにある横断歩道まで歩いて渡らなければならないという不便さを感じることは、よくあります。Shared Spaceには信号や横断歩道はなく、歩行者が行きたいお店にどこからでも直進できて、車が自動的に人を避けて通ってくれるのです。
 このような空間では、歩行者と自動運転車との間のコミュニケーションのあり方が問題になりますが、筑波大学のVRを使った大掛かりな実験施設での体験風景や、東京科学未来館での椅子型移動用機器を利用したカルガモ方式での集団移動、空間共有の試みなどが動画で紹介され、声掛けの工夫、心理学的な問題点なども含めて、歩車共有空間実現に向けた現状を説明いただきました。
 意見交換の場では、どのような所で歩車共有空間が作られてゆく可能性があるのか、歩車間での互いの意図理解の方法、使われているQC手法などに関して多様な質問が挙がり、丁寧に答えていただきました。
 安全を獲得しながらも、新しいタイプの社会生活を生み出す創造性ある話に、興味の湧いたクオリティトークでした。

田中 健次(電気通信大学)

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