トピックス JSQC規格「根本原因分析(RCA)の指針」について
原案作成委員会委員長 中條 武志
RCAに関する推奨事項をまとめたJSQC-Std 62-001が発行されました。
規格開発のねらい
近年、事故、品質トラブル、品質不正の報道を聞くことが多くなりました。これらの原因を調べてみると、「人の不適切な行動」(知識・スキル不足、意図的な不遵守、意図しないエラーなど)に起因するものが少なくありません。
人の不適切な行動の特徴を一言で言えば、個々の発生頻度は低いが、あらゆるところで起こる可能性があることです。このような問題を防ぐには、製品・サービス又はその生産・提供プロセスで起こり得る失敗を系統的に洗い出し、リスクの大きなものに対してあらかじめ対策を行う「未然防止活動」が大切になります。
ところが未然防止活動を徹底して行えていないと、類似の原因による問題が様々なところで次々に発生します。このため、無視できないような事故・品質トラブル・品質不正が発生した場合又は発生する恐れがある場合には、起因となった個別の原因を見つけて取り除くことに加え、未然防止活動の弱さを追究し、その改善を図ることが大切になります。このような分析は、根本原因分析(Root Cause Analysis、以下、RCAと略す)と呼ばれます。
本規格は、このようなRCAの実施を支援することを目的に、RCAの基本的な考え方、RCAの実施手順に関する推奨事項、RCAの組織的な推進・運営に関する推奨事項をまとめたものです。
開発から発行までの経緯
2021年7月の標準委員会において開発が承認され、JSQC-TR 12-001「テクニカルレポート品質不正防止」の後に作業を開始することが決まりました。
2023年10月~2024年1月に品質保証・人間信頼性の専門家10人からなる原案作成委員会が開催され、既存の書籍や論文を参考にしながら検討が行われ、原案が完成しました。
その後、様々な分野の実務家を加えた審議委員会(2024年5月~7月)が開催され、パブリックコメントの募集や集まったコメントに対する対応の審議を経て規格最終案がまとまりました。
2024年9月25日に理事会でこの最終案が承認され、発行に至りました。
規格の内容
本規格の構成は、1章「適用範囲」、2章「引用規格」、3章「用語と定義」、4章「RCAの基本」、5章「RCAの実施手順に関する推奨事項」、6章「RCAの組織的な推進・運営に関する推奨事項」となっています。
4章では、1)RCAを理解する上で大切となる人の不適切な行動の4つのタイプ、2)これらの行動を引き起こす要因を局所要因と組織要因に分けて捉えることの大切さ、3)RCAの基本的な流れとその難しさ、4)不適切な行動だけでなく望ましい行動を分析することの必要性、などについて解説しています。
その上で、5章ではRCAの実施手順を8つのステップ(事例の収集、事例の選定、事象の整理、局所要因の分析、組織要因の分析、対策の検討、効果の確認)に分け、活用するとよい具体的な手法、判定のためのフローチャート、要因や対策を考える際に参考となる表などを示しながらどう進めるのがよいのかについて詳しく解説しています。
最後の6章では、1)RCAの活用に当たって経営層がどう行動するのがよいのか、2)分析チームの編成と運営において考慮すべき事項、3)未然防止活動の推進に当たって注意すべき点、をまとめています。
規格の講習会
2025年1月29日の午後、100名を超える参加者が集まり本規格の講習会が開催されました。原案作成委員会のメンバーによる解説の後、1)未然防止活動とRCAの関係、2)なぜなぜ分析ではどうしてだめなのか、3)局所要因の説明の仕方、 4)人の望ましい行動を集める方法、5)集積RCAを行う場合の事例の件数、6)不適切な行動と適切な行動、失敗と犯罪の切り分け、7)抽象的な対策にしないためのポイント、などに関する熱心な質疑が行われました。
投稿者プロフィール
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