私の提言 「生産性向上」と「人材育成」をもっと前面に

元リコー 熊井 秀俊

 いま日本では、人口減少や少子高齢化による労働力不足・国際競争力の低下が叫ばれ、国別の生産性指標の順位は低迷しており、これに対して労働生産性の向上や学びなおしが注目されています。
 一方、品質管理は、「顧客の満足」と「社会の満足」をめざして、アウターの品質保証として「顧客価値の創造」「基本品質の確保」を掲げていますが、そこでもう一つの「働く人々の満足」をめざしたインナーの品質保証として「生産性向上」と「人材育成」を明示して前面に出したいと思います。
 「生産性向上」は「顧客価値の創造」「基本品質の確保」を効果的、効率的に行えるようにするものであり、それをできるようにするためには「人材育成」も実現も必要です。そしてこの2つが実現すれば、働く人々が豊かになり、ワクワク働けるようになり「働く人々の満足」につながっていきます。
 「生産性向上」も「人材育成」も、品質管理の得意技であり大きな成果をあげてきていますが、活動の中に内包されていて外には目立ちにくかったのではないかと思います。いま品質管理をこれまで以上に世の中に広めていこうとしていますが、「生産性向上」「人材育成」をあえて加えて前面に出すことで、より多くの方々に品質管理がより広く役に立つものであるという理解を助けることになり、品質管理の活動により弾みがつき、広く世の中への普及にも役に立つと思います。
 ただし、注意すべき点もあります。「生産性向上」は単に人件費削減ではなく、付加価値を生み出す効率をあげることであると留意し、単純に総量で残業規制だけをして結果的にサービス残業を生み出すようなことがあってはいけません。実績のあるわかりやすい実例があります。原価管理担当者が最初は自分の担当する見積書作成作業の効率化にとり組んでいましたが、そこから発展して、工場・営業と連携して、お客様の見たいものが書かれてあり受注率のアップにつながる見積書の作成を実現し、それにより関連部門全体の効率化にもつながりました。こうした取り組みから「生産性向上」を狙いましょう。
 これらは「あたりまえ」のことですが、あえてここを強調して前面に出すことで、さらなる品質管理の普及に役立てたいと思います。

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