私の提言 モノづくりの根底をなす品質管理教育のあり方

金沢工業大学 藤井 寛

 最近の日本のモノづくりに対して、強みが失われていると警鐘が鳴らされることがあるが、日本の製品・サービスは品質が真髄であると私は考える。
 石川 馨先生(1915-1989)の著作『名著復刻 品質管理入門』(日科技連出版社、2024年)の2ページに、「品質管理を効果的に実施するためには、市場の調査、研究・開発、製品の企画、設計、生産準備、購買・外注、製造、検査、販売及びアフターサービス並びに財務、人事、教育など企業活動の全段階にわたり、経営者を始め管理者、監督者、作業者など企業の全員の参加と協力が必要である。」と記されている。具体的に示されていることに意義があるが、平たく言うと「品質管理は、全ての企業活動を対象にして、全てのメンバーが行う活動」となる。
 そのために、同書5ページの「QCは教育に始まって教育に終わる」ことが求められる。品質管理の教育を一過性のものとしていないので、担うのは教育機関であり、企業でありということになる。大学での教育と企業での研修やOJTが連続して、学びがステップアップしていくことが望ましい。
 現在、金沢工業大学では全学部・全学科を対象に必修科目として「技術者と持続可能社会」を開講し、その中で品質の講義を行っている。この科目の教科書として、この度拙著『技術者の視点』(藤井 寛 編著、長尾政志・山下恭正・中野 真 著、日科技連出版社、2025年)を出版した。本書には、企業での経験を踏まえて、大学生のうちから押さえておくべき内容を織り込んだつもりである。
 品質管理の教育には、QC的ものの見方・考え方といった精神的な側面と、統計的手法など実践するための方法論的な側面がある。どちらが欠けても、総合的品質マネジメントのTQMはなし得ず、2つの側面がバランス良く配置されることが肝要となる。
 精神的な側面は繰り返し伝える必要があり、一朝一夕に浸透するものではないため、大学においてはこちらの方が先行して良いと私は考えている。一方、企業においては精神的な側面を踏まえた上で、目で見える効果を上げるために方法論的な側面に習熟することが必要となる。
 日本の全ての大学で品質の教育が行われ、企業内の教育に結び付き、これらが発展していくことを夢見ている。

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jimukyoku01
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