JSQC規格
テクニカルレポート品質不正防止 講習会ルポ
2023年5月9日(火)午後、JSQC規格「テクニカルレポート 品質不正防止」講習会がオンラインで開催された。JSQC規格講習会としては最多となる171名の参加登録があり、社会的課題としての関心の高さを伺わせるものであった。
永田会長の開会挨拶では、「品質管理活動の再活性化の一つのトリガーとして品質不正の問題に取り組み、よりレベルの高い品質立国をめざすことができれば」との言及があった。規格に関する説明として、冒頭で中條氏より「制定のねらい」、続いて平林氏による「組織で何が起きているのか」、永原氏、篠氏による「品質不正はなぜ起きるのか」、安藤氏、古谷氏による「品質不正をなくすために組織はどうしたらよいのか」、伊藤氏による「品質不正をなくすために社会はどうしたらよいのか」に関する説明があった。最後に全体討論として、参加者からの質問に講演者各氏が回答を行った。
本テクニカルレポートは、品質不正が起きている組織について、(1)実態、(2)発生要因、(3)対策が順序立てて説明されている。(1)実態は、多業界の45事例を選択したうえで、製造業18組織についての第三者委員会調査報告書の内容整理と、特に社会的影響の大きかった6組織の分析に基づく。(2)発生要因は、6組織のプロセスや組織文化を含む特徴、人の不適切な行動の面から解説される。(3)対策は、組織としてはTQMの適用が、社会としては啓発や教育等の視点で説明される。
7名の講師による講習はどれも濃密だった。その中で品質管理屋として重視したい点を挙げるとすれば、品質不正をTQM組織運営の不備として捉え、対策にTQMの適用を掲げている点である。すなわち、品質不正の発生過程は、善から悪へと切り換わるような明確な事態ではなく、日常業務の中の些細な行動から時間をかけて派生するものといえる。地道な取組は、報道等で耳目を集める状況とは乖離するが、品質不正の事象から日常管理までもが整理されたテクニカルレポートを参考にしたい。
下野 僚子(早稲田大学)
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