第138回クオリティトークルポ
モノからコトへの品質保証体系図
-新しい価値創造のビジネスモデルを描く-
2023年11月30日、上記表題のクオリティトークが開催された。講演者は『2030年の品質保証-モノづくりからコトづくりへ―』の編者として知られる細見純子氏である。
講演の冒頭で変化する現在の社会を概観し、組織においては従来型(ピラミッド型)のマネジメントから循環型への転換が必要であることが提示され、これは企業にいる者として非常に同感できるものであった。
また、品質(価値)を決めるのはお客様である部分は不変であるが、対象となるお客様が変わり、お客様の期待の内容も変わっていくこと、また、VUCAの時代・多様化の時代だからこそ、ある顧客層を想定したマーケットインというより、個へ直接アプローチするコトづくりが必要という提示があった。
今後は「コト」の市場規模が拡大していくことから、モノが期待どおりであるというCSだけでなく、驚き・感動の領域であるCXを狙わなければならないという主張があり、これをサービスエクセレンスのピラミッドも交えて説明された。加えて、SEDAモデル、デザイン思考といった紹介もなされた。
コト品質のためには、リアルタイムでお客様の行動を把握し、すぐに、あるいは予防的に対処できることが必要である。また、顧客ニーズも多様化しており、スピード重視で新しい取組みができ、60点でも褒められる文化、そのための積極的な権限移譲ができる組織に転換しなければならないという点も同意である。
続いて「2030年の質価値創造研究会」の活動について紹介された。QC×DX×SDGsのSDQキューブという概念や、研究会で考案したバリューチェーンシート、SDQテンプレートなどの提示があった。さらに、ある伝統工芸企業がデジタルを活用しながらコト品質を追求している事例とその品質保証体系図の紹介があった。
多くの企業がコト品質についての様々なアプローチを試みていると思うが、そのための考え方や手段についての具体的な示唆に富んだ、有益な講演会であった。
小川 文子(オークマ(株))
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