第136回クオリティトークルポ
人間工学にもとづく改善活動
-人間の限界を知り、克服する-
2023年7月5日(水)に第136回クオリティトークがオンラインで開催された。三菱重工業で勤務経験を持つ、東京大学大学院 新領域創成科学研究科 准教授 福井類 氏を講師に迎え「人間工学にもとづく改善」をテーマに講演をいただいた。組織の継続的な発展には、常にPDCAを回して、今回のテーマにある現状の改善を進めていく必要がある。しかし、その前進の過程でマンネリ化という壁に直面する事もある。本講演はその様な場合に、多角的な視点(人間工学)から、改善のサイクルを回すアプローチで壁を乗り越えるという提案である。今回、講師の福井類氏とは、ブレイクアウトセッションでも同じグループに入り、意見の一つとして人間工学的に見る、人によるボルトとナットの締結作業にはいくつかの問題があるという提言は興味深かった。また、本公演の冒頭、コメントスクリーンを使っての双方の対話形式での講演進行には、斬新さを感じた。講演内容の前半では、講師プロフィールの後、知能機械としてのロボットと人間の関係性、人間工学の源流にもとづく人間の限界の見方などを、概論を示し解かり易く講義され、例えば「失敗や事故は、一部の人間の注意 能力不足で起こるが、当該者はその時点で(全ての理由を問わず)最適な対応をしているという局所的合理性原理などの話を通じながら、人の失敗の原因は必ずしも一つで無く、複数ある事が多い」といった洞察力に基づいて原因究明と再発防止を考える必要性を述べられ、その為には先ずは、人間の限界を知ることが大変重要であると学んだ。講義の後半にかけては、人間の限界を知った上で、バットユーアイ(悪例の比較)や言い訳法による改善対象の発見法からFTAで見える化を行い課題を抽出し、アフォーダンスという考え方で改善策の糸口を見出すという一連のサイクルは、現場で是非とも、繰り返し実践し、身に付けたい技術だと感じた。まとめに人間とロボットには、それぞれの得意な性質がありその特性を上手く組み合わせ(競合し)て改善を考えることと、「原理 原則」の再認識の必要性を強く感じた有意義な機会であった。
戸村 栄一 ((株)ニッコー)
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