トピックス ISO→TQM研究会(日科技連)の設立
研究会主査/東海大学 金子 雅明
日科技連に設置した本研究会の目的は、(1)新TQMの概念、手法を確立すること、(2)将来のデミング賞審査委員となれるような育成・交流の場を作ることの2点にあります。
(1)については、品質管理・TQMに関する若手・中堅の大学研究者が不足していることや大学業務が忙しくなかなか研究者間の交流ができないことから、なんとか大学研究者どうしが定期的に研究交流できる場を作りたいという思いが元々ありました。また、TQMそのものに目を向けますと、1997年のTQM宣言がなされてから25年経過しており、その間にDXやSDGs、働き方改革、機械学習・AIなど、社会的に大きな変化が生じていますが、これら変化に対応した新たなTQMモデルを構築し、提唱することが強く求められています。そのためにも、現在の若手・中堅研究者の各専門分野の知識や研究成果を集積しなければならないと考えています。また、品質管理やTQMは“実学”ですから、TQM推進の実務に造詣が深い企業の方々のニーズや期待、問題認識をお聞きすること、また産学による共同研究フィールドの提供という意味でも、企業の方々の参画と協力は非常に重要です。
(2)については、皆様がご存じの通り、デミング賞は日本が世界に誇るTQMの世界最高ランクの賞ですが、この賞を審査する委員の担い手不足がかなり前から指摘されています。私もその一員ですが、委員の減少傾向はさらに顕著になってきているため、近年は審査実務にまで影響が出てきているように思います。これまでは審査員候補をほぼ“一本釣り”のような形で探してきていましたが、それでは限界があり、やはりきちんとした育成の場を中長期的な視点で整備していかないといけないと考えました。これと関連して、日本品質奨励賞のリバイスも視野に入れています。近年、デミング賞を受賞する日本企業がなかなか出てこないのですが、それを増やすためにも、ISO 9001認証取得した企業・組織を如何にTQMにうまく導くことができるかが重要で、その観点から日本品質奨励賞の在り方を抜本的に見直ししたほうが良いと思っています。
あるきっかけで、日科技連の小野寺専務理事、島田理事が上記の危機意識を同様に持っていることが確認できたことから、大変ありがたいことに本研究会の運営事務局を担ってもらえることになりました。現時点(2023年8月)での本研究参加メンバーは18名で、日科技連事務局3名を加えた全21名となっています。メンバー18名のうち、大学研究者は13名、産の方々は5名です。特に、大学研究者は“若手・中堅”と標榜していますから、私自身が40歳中盤であることから±5歳程度を目安として、30後半から40後半ぐらいの方々を中心に参加してもらいました。このように研究・校務や実務でご多忙の方々に多く参加いただけたのは、将来の品質管理、TQM界のためという共通の思いが皆様にあるからだと、改めて心動かされました。
本研究会の第1回を8月7日15:00~17:00に日科技連本部ビル(西新宿)の会議室で開催し、現地参加者が8名、オンライン参加者は3名の参加でした(なるべく早く第1回目の会合を開きたいということで、開催候補日が少なく、参加できなかった方が多数出てしまい、申し訳なく思います)。当日は研究会の設立趣旨を説明し、メンバー間の自己紹介の後、本研究会で研究する対象について議論しました。まだ議論を始めたばかりですが、総じていえば、(1)、(2)についての基本的な課題認識は参加メンバー全員でほぼ共通していたと思います。今後は、1.5か月ぐらいに1回の頻度で開催し、研究対象を具体化していきます。議論した結果はまた別の機会に報告できればと思います。なお、研究会後には必ず懇談会・情報交換会をやることにしていて、個人的にはこれが一番重要だと思っています。少しアルコールを入れて雑談していくと、いろんなアイデアや深い議論ができてとても有意義な時間になります。今回もそうでした。こんな雰囲気の研究会ですが、今後の本研究会の活動にご期待ください。
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