トピックス「第112回品質管理シンポジウム報告」

~新しい社会づくり、新たな顧客価値創造に必要となる品質経営の姿を探る!~

一般財団法人 日本科学技術連盟 品質経営創造センター 部長 安隨 正巳

 半世紀を超える歴史を誇る、日科技連主催「品質管理シンポジウム」(以下 QCS)」の第112回は、集合(大礒プリンスホテル)とオンラインのハイブリッド形式で 2021年12月2日~4日の日程で150名を超える参加者のもと開催された。テーマは「新しい社会をつくる 新たな顧客価値創造への変革」であった。これからの品質経営、TQMの姿を探るべく先進的な討論が行われたが、その模様を報告する。

 QCSは、(1)講演(2)グループ討論・発表(3)総合討論の3本柱で構成されている。
  今回の講演者は以下の通りであった。

 紙面の制約から講演内容の紹介は割愛するが、今回は複数の講演実施後に「座談」と称し、パネル的に講演者と参加者間での討論時間を設け、これが参加者の理解促進に大きく繋がった。座談で議論された内容は以下の通り。

 〔顧客価値創造に不可欠なトピック〕
1.先立つものは,自社製品の今後ではなく,社会的課題
2.ビジョン設定の勘所と未来に達成すべき課題をどう定めるか
3.脱自前主義。多くの仲間が必要
4.顧客Do:顧客Doからスタート!
5.自社Do:その為に我々は何をすべきか
6.モノづくりの組織オペレーションから,コトづくりのオペレー
  ションへの変革の重要性

 今回のQCSでは、より効果的な議論を行うため、「品質は、モノの出来栄えではなく、“ 顧客及び社会のニーズを満たす度合い”」と定義し、工場出荷時点で「モノ」に価値が備わっている「グッズ・ドミナント・ロジック」の考え方ではなく、ハード・ソフトは価値を実現するための道具にすぎず、顧客がモノを使いこなすことによってはじめて価値が生まれる「サービス・ドミナント・ロジック」の立場を前提にしていることは特筆すべき事項と言えよう。
 「新たな顧客価値創造に必要となる品質経営」を目指すため、8つの切り口からグループ討論テーマが設置され、熱い討論が深夜まで繰り広げられた。
 最終日には、8グループからの討論結果の発表の後、総合討論が行われた。

総合討論 実施風景

 総合討論のキーワードは、以下の9項目で実施された。
 *まとめ内容は、QCS webサイトに掲載しているので、是非参照して欲しい。

 (1)ビジネスモデル再構築(2)DX対象は2つ(3)⼩集団活動(4)コト品質保証(5)コト価値創造推進を阻む困難(6)KPI再検討(7)TQM推進部の新たな役割(8)組織⾵⼟改⾰と⼈財育成 (9)潜在ニーズ発掘
 最後に、本シンポジウムの主担当組織委員であるトヨタ自動車 CF推進本部長 宮本眞志氏から、まとめとしてコト価値創造時代における品質経営の在り方が述べられ、112QCSは幕を下ろした。
 次回のQCSは、大阪電気通信大学 名誉教授 猪原正守氏が主担当を務め、テーマ「顧客価値創造と価値獲得に貢献できる現場⼒の育成と強化-コト価値の発⽣が求める現場⼒-」として2022年6月2日~4日に開催される予定である。多くの会社役員、部門長ならびに学術関係者の参加を期待したい。

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