第53年度事業報告

自2023年10月 1日   至2024年 9月30日

1. 概況(会長:若林 宏之)

 本学会の53年度の取り組みは、これまでの日本品質管理学会のミッションとビジョンを継承した3カ年中期計画の初年度として開始しました。活動の柱として、A.会員・賛助会員にとって魅力ある学会づくり、B.品質管理の正しい理解と普及促進・社会への貢献、C.更なる会員サービスの向上を掲げて推進しました。
 Aについては、AI品質のガバナンス強化を目的に昨年度の研究会の成果をガイドラインとしてまとめて発行しました。また、モノづくりにおける工程内ビッグデータを用いた品質管理を提唱し、無償解析ツールを公開して講習会や研究会での事例紹介を実施しました。
 Bについては、これまでの問題解決の教育支援に加えてビッグデータ活用を念頭においた小・中・高への品質・統計教育支援を開始するとともに、第11回科学技術フォーラムを開催し、デジタル時代の新たな教育改革を提唱しました。また、相次ぐ品質不祥事への対応として、JSQCをはじめ品質関連5団体が参加する日本クオリティ協議会(JAQ)に対し、品質不正防止に向けた企画を提案し、第1回 JAQシンポジウム「新時代を切り開く品質立国日本の再生に向けて」を開催するとともに、品質不正防止を契機にTQM活動を通じた「品質の仲間」づくりを提案しました。更に本年度はANQ(Asian Network for Quality)総会を慶應義塾大学で開催し、アジア・日本のQualityの研鑽を行いました。
 Cについては、各種委員会や研究会などの会合をオンライン中心で行い、各種研究発表会や各行事は会員の利便性を考慮した対面とオンラインのハイブリッド開催を中心に実施しました。
 昨年度、会員データベースのセキュリティ問題が発生しましたが、これに対してはセキュリティ強化を目的とした特別委員会を設置して必要な対応を完了しました。
 また、賛助会員へのサービス向上を意識した特別講演会では、広く職場・現場で役立つ内容の企画により、会員、賛助会員のこれまでにない多数の申し込みがあり、多くの支持が得られました。

2. 総合企画委員会(委員長:若林 宏之)

 重点実施事項3ヶ年中期計画の進捗管理および54年度の取り組みに繋げる場と位置づけて、総合企画委員会を計7回開催し活動を進推しました。メンバーは会長、副会長を中心に重点実施事項に関係する少人数の構成で行いました。学会の会員数の減少が続く中、魅力ある学会の実現に向けて、議論および初年度としての施策を開始しましたが、未だ会員増につながる成果はあがっていません。会員増に向け、重点実施事項3ヶ年中期計画を着実に実行してまいります。

【研究発表会実行委員会(特別委員会)】
 2023年11月開催の年次大会研究発表会のプログラム作成などを行いました。2024年5月開催予定の第134回研究発表会でのチュートリアルセッションの企画・実施しました。同時に、研究発表会のプログラム作成などをサポートしました。2024年11月開催予定の第54回年次大会の研究発表会の準備を行いました。

3. 庶務委員会(委員長:中村 浩一)

 庶務委員会では、理事会での議題整理、イレギュラーな対応等、これまでの委員会活動を継続しました。具体的には、「オンライン選挙の定着化」、「セキュリティ強化を目的とした特別委員会の設置」、「更なる会員サービスの向上を目的とした会員限定の特別講演会の開催」などに注力しました。特に、特別講演会では、広く職場・現場で役立つ、多くの方々に支持される企画により、会員140名、賛助会員 24 社1012 名と1000名を超える申し込みがあり、多くの支持が得られました。

【会員サービス】(委員長:西 敏明) 
 会員数(2024年9月現在)(括弧内2023年9月比)は、現在、名誉会員 24名(1名減)、正会員1617名(41名減)、職域会員50名(1名増)、準会員72名(15名減)、賛助会員  162社234口(6社4口増)、賛助職域会員11名(社数増減なし)、公共会員14口(2口減)となっています。
 前年度に引き続き、「JSQC認定品質技術者」((1)上級品質技術者、(2)品質技術者)に関して認定証を発行し、同制度の認知度を高める取り組みを行いました。また、QC検定1級および2級の合格者に対しても、前年度に引き続き、学会年会費が割引となるキャンペーンを行いました。
 庶務委員会、理事会および学会行事等を通じて、会員増に向けて検討を進めました。

第52年度 第53年度
名誉会員: 25名 名誉会員: 24名
正会員: 1667名 正会員: 1632名
準会員: 86名 準会員: 68名
職域会員: 51名 職域会員: 51名
賛助会員: 156社230口 賛助会員: 162社234口
賛助職域会員: 12名 賛助職域会員: 11名
公共会員: 17口 公共会員: 12口

【規程の制定、改定】(委員長:奥 展威)
 学会規則の見直しは、学会運営の透明性確保、および各委員会等と協力し、活動実態との整合性の観点から規定・内規等の見直しを進めました。

4. 活動委員会(事業を含む)(委員長:若林 宏之)

【研究開発】(委員長:黒木 学)

 研究開発委員会では、以下の活動を行いました。

  1. (1) 例年通り、各研究会の活動予算を審議し、各研究会に配分しました。
  2. (2) 本年度も研究会を公募していましたが、設置要請はありませんでした。
  3. (3) 本年度も、研究会の研究成果や活動内容を学会誌へ掲載する活動を実施しました。品質誌の「部会研究活動報告」、「研究活動報告」の欄において、継続的に発表しました。一部の研究会は、連載の形で研究活動報告を行いました。

【学会誌編集】(委員長:丸山 一彦)

 第53年度も例年どおり、年4冊の学会誌『品質』を発刊し、JSQCニューズを年8回発行しました。事業・広報委員会、研究開発委員会、中部支部・関西支部と密接に連携し、研究会報告や部会報告を中心に掲載してきました。また、クオリティトーク、QCサロンの講演内容の収録や、注目の研究者のまとまった研究を紹介する招待論説にも注力し、学と産の橋渡しを狙いとしました。また、特集はVol.54・No.1・No.3にて、年間2回掲載しました。さらに、次年度から開始する新連載企画についても委員会内で議論しました。

【事業・広報】(委員長:廣野 元久)

 第53年度はコロナ禍明けの観点から、事業所見学会の再開を企画し、実施いたしました。
 特に、感性品質に着目して、感性にまつわる品質、音の品質のテーマで松本記念音楽迎賓館の見学会と講演会を実施しました。また、JAQ主催の緊急シンポジウム「新時代を切り開く品質立国日本の再生に向けて」の企画を担当し、魅力ある学会づくりに向けてクオリティトークの強化を図り、オンラインで午後開催、夕方開催等、開始時間に融通を持たせて、計画5件に対して6件を開催できました。
 53年度の反省点としては、他学会、他団体が主催する無料や低額の行事が増加しており、それらの行事に埋没しないように差別化を計り、認知向上と興味を引くための広報活動の在り方を検討する必要を感じており、54年度の施策に盛り込んでいきます。

▼(表) 第53年度事業計画・実績

  年次大会 研究発表会 講演会
(座談会)
シンポジウム JSQC規格
講習会
事業所
見学会
クオリティ
トーク
第53年度計画 1 1 2 2 6 2 5
第53年度実績 1 1 1 3* 6 3 6

*)JAQ主催シンポジウム1件を含みます

【JSQC選書】(委員長:飯塚 悦功)

 品質に関わる概念・方法論・手法を社会が理解し適切に適用できるように支援するための一方法として、品質マネジメントに関わる、基本的考え方、マネジメントシステム、手法・技法、推進・運用、さらには品質に関わる時事の背景・意味の解説をする一連の書籍の出版化検討(企画・編集)をJSQC選書刊行特別委員会で進めました。
 同委員会を2回開催し、発行書籍候補の列挙、短期(1年程度)的な発行計画(主題、著者、発行時期など)を審議し決定しました。決定された主題にかかる構想の審議や原稿案の査読を行い、下記の書籍の発行、及び発行に向けた準備を進めました(出版社:日本規格協会)。

 ・『品質不正の未然防止』(永原 賢造)2023年10月
 ・『統計的工程管理』(仁科 健)2024年6月
 ・『現場から経営へ(仮称)』(木内 正光)2024年11月予定
 ・『慢性期医療の品質マネジメント(仮称)』(進藤 晃)2025年1月予定

4-1. 東日本支部(支部長:鈴木 知道)

 東日本支部のコミュニティ強化を目指して、活動委員会(事業・広報)が中心となりクオリティトーク、事業所見学会を企画しました。積極的にオンラインで実施し、講演会などを中心に発信いたしました。また、昨年度に引き続き、JSQC規格講習会を企画・実施しました。

4-2. 中部支部(支部長:中村 元志 )

(1)研究会活動

 1) 東海地区 若手研究会[主査:南山大学 松田教授 ](計画6回/実績6回Zoomまたは名古屋工業大学で開催)

 *産業界から実務上の問題点(困り事、関心事など)、SQCに関連した話題、大学院や学部の学生の研究などを持ち寄り議論しました。

  2) 北陸地区 若手研究会[主査:金沢工業大学 中野准教授](計画2回/実績1回)

 *研究発表会:2024年2月24日(土) 発表件数4件、参加者9名(Teamsで開催)

 *講演会:2024年5月 講師 儀谷雅子氏 <中止>

  3) 中部医療の質管理研究会[主査:代表世話役・事務局 木村 茲 氏](計画1回/実績1回)

 *活動テーマ 「医療の質向上に関する活動の推進」

 *シンポジウム:2024年3月9日(土) 第17回シンポジウム(場所:ホテルリソル岐阜)

 *2024年3月末をもって活動終了

  4) 中部支部産学連携研究会[主査:名古屋工業大学 川村准教授](計画6回/実績6回、Teamsまたは名古屋工業大学で開催)

 *産学から持ち寄ったテーマを基に6つのテーマを登録し、主担当を決め、学と産が双方向に情報発信を行いました。

(2)研究発表会(第135回:中部支部第41回)[参加者:63名]

 *日 程 :8月28日(水)13:00~18:25(場所:台風接近のため名古屋工業大学からZoomに変更)発表件数16件
 *Zoomへの変更に伴い情報交換会は中止

(3)シンポジウム(第182回:中部支部第42回)[参加者:172名]

 *日 程 :7月8日(月)13:30~16:30 (場所:Zoomウェビナー)

 *テーマ:『「お客様と共に取組む価値創造」を考える』

 *講演内容:基調講演1件、事例講演2件、パネル討論会
 (昨年度に引き続き賛助会員を対象として大口参加(5万円で50名までの参加)を実施.4口の参加を得ました)

(4)講演会(第151回:中部支部第64回)[参加者:47名]

 *日 程 :7月26日(金)13:30~15:15(場所:Zoomウェビナー)

 *講演者:西崎 友康 氏 [(株)ブリヂストン]

 *講演内容:「ブリヂストンのDXを支えるソリューション品質管理の取り組み」
 (シンポジウムと同様賛助会員を対象として大口参加(3万円で50名までの参加)を実施。1口の参加を得た)

(5)事業所見学会

 (第439回:中部支部第109回)[参加者:15名]

 *鍋屋バイテック会社関工園(岐阜県関市)[日程:2月28日(火) 13:30~17:00]

 *テーマ『機械要素部品専門メーカーとしてお客様の成功をサポートする開発・製造・販売体制の取り組み』

 (第443回:中部支部第110回)[参加者:17名]

 *三菱重工業株式会社大江工場(愛知県名古屋市)[日程:6月25日(火) 13:30~17:00]

 *テーマ『ボーイング777胴体パネル部品工場/787主翼組立工場における航空機製造の品質管理』 

(6)幹事研修会

 *第1回 5月14日(火)15:00~16:30:勉強会(場所:Zoom)

 ・テーマ:『パス解析と分割表分析を活用した品質データ解析事例』 

 ・講師: 松田 眞一 氏 [南山大学 教授]

 *第2回 6月21日(金)~22日(土):北陸地区見学会

  ・見学先:コマツ氷見工場

4-3. 関西支部(支部長:森本 国浩)

(1)講演会

 第152回  6月25日(火):ハイブリッド形式 

 <テーマ:「人材育成と品質不正の防止」>

講演①:事実に基づいて考え、判断できる技術人材の育成
    猪原 正守 氏(大阪電気通信大学 名誉教授)
講演②:KOBELCOグループの品質への取り組み~KOBELCO TQM活動~
    輿石 房樹 氏(株式会社 神戸製鋼所 フェロー)
 を実施計画し、96名の申込があった。近年、本テーマに対する関心度は高く、理論と具体的な実践事例の双方を視点で考察し、多くの方に自社の取組みについて、考えるきっかけを提供できた講演となりました。

(2)シンポジウム

 第180回 8月19日(月):オンライン

 <テーマ:「品質の多様性における状況と組織マネジメント」>

講演①:観光と地域活性における企画とサービスの品質
    須佐 淳司 氏(就実大学 経営学部 教授)
講演②:小児感染症の医療現場の状況および対策の質
    笠井 正志 氏(兵庫県こども病院 感染症内科 部長)
講演③:製品開発における知財戦略の質創造
    赤松 勝 氏(コベルコ科研、弁理士)

 パネルディスカッションを実施計画し、9名の申込がありました。質創造の総合的視点での概要と向上のための現場強化について、考えるきっかけを提供できたシンポジウムとなりました。

(3)研究発表会

 第136回 9月20日(金):関西大学 千里山キャンパス
 特別講演:今野 勤 氏(神戸学院大学 経営学部 経営学科 教授)

 ・本年度は「マネジメントモデルによる経営学入門 ー企業事例に学ぶ現代マネジメントの革新ー」をテーマに講演。研究セッションと事例セッション賛助会員用の特別セッションを実施し、18名の方が参加しました。

(4)事業所見学会

 第440回 5月30日(木):月桂冠株式会社

 「月桂冠株式会社のマネジメントシステムについて」

 ・本見学会では、品質向上の取り組みに加え、大手蔵の酒の造り方・材料・歴史などを紹介があることから、29名の方が参加しました。大変好評でした。

 第444回 7月26日(金):新日本理化株式会社

 「新日本理化株式会社 京都R&Dセンターについて」

 ・本見学会では、一般の方に向けた実験教室等に活用できる共同実験室、フラスコワークから実験プラント生産までのスムーズな移行を可能にするパイロットプラント等の見学が行われた。30名の方が参加しました。

(5)QCサロン

 第140回 2月6日(月)「生成AI – 産業における活用」
   荒木 孝治 氏(関西大学 商学部 教授)

 第141回4月9日(火)「農業オタクが挑む、農業革新とカーボンニュートラルの社会実装」
   須貝 翼 氏(スパイスキューブ株式会社 代表取締役)

 第142回6月11日(火)「ドローンの新事業展開の現状」
   那須 善行 氏(株式会社那須管財 代表取締役)

 第143回8月20日(火)「AI時代におけるコト価値づくりと品質保証研究会」からの話題紹介
   猪原 正守 氏(大阪電気通信大学 名誉教授)

(6)その他

・5月31日(金)ダイナミックロバストマネジメント(DRM)研究会を実施しました。
・AI時代におけるコトづくりと品質保証研究会を実施した。

4-4. 西日本支部(支部長:高橋 勝彦)

 西日本エリアのコミュニティ強化を目指して、活動委員会(事業・広報)と連携して、下記の事業所見学会を実施いたしました。 また、事業所見学会の内、若林会長による講演会については、クオリティトークとしてオンライン配信するハイブリッド開催といたしました。

第441回事業所見学会(西日本)

日 時: 2024年9月13日(金)13:30-17:00
見学先: 株式会社デンソー九州 本社 北九州工場
参加者: 17名

第142回クオリティトーク(西日本)

日 時: 2024年9月13日(金)15:40~16:40
テーマ: 「品質の仲間」づくりに向かって
会 場: オンライン(Zoomミーティング)
ゲスト: 若林 宏之 氏 日本品質管理学会 会長 (元株式会社デンソー副社長)
参加者数: 41名(事業所見学会からの参加17名含む)

4-5-1. 信頼性・安全性計画研究会(主査:横川 慎二 15名)

 第4、5期の議論に基づき、本研究会委員の尽力によるJSQC選書『品質不正の未然防止:JSQCにおける調査研究を踏まえて』が出版されました(2023/10/10)。研究会やその他の研究成果をもとに、近年多発している品質不正問題に対する具体的な取り組みを紹介するものであります。製品・サービスの信頼性や安全性に着目し、品質不正の実態を把握した上で、日本産業全体での未然防止策の提案がなされました。

4-5-2. テクノメトリックス研究会(主査:黒木 学 13名)

 テクノメトリックス研究会では、「統計的手法を中核とした品質管理手法の開発・普及」のために、手法、考え方、事例などについて幅広い視点から研究してきました。研究会はおおむね3ヶ月に1度の開催で、メンバーが上記の手法、考え方、事例などについて紹介し、メンバー間での議論により研究成果を練り上げていきました。議論したテーマは、観察データと実験データの融合による因果効果の潜在的異質性評価のための効果回復法、操作変数法を用いた条件付き平均偏因果効果の識別可能性、連続変量に対する原因の確率、交絡バイアスデータを利用した因果効果の感度分析法、確率分布の主要点の推定量、非直積型計画を利用した望目特性のパラメータ設計など多岐にわたっています。また、JSQC研究発表会や品質誌をはじめとするさまざまな学術雑誌をとおして、研究成果を報告しました。なお、今年度は、第134回研究発表会において、テクノメトリックス研究会30 周年記念企画セッションを実施しました。

4-5-3. 商品開発プロセス研究会(主査:椿 広計 31名)

  (一社)品質工学会との共同研究活動を実施し、顧客価値創造の上流工程プロセスの開発、創造性と効率性を両立した技術開発プロセスの研究、損失関数の新事業プロセス評価への提供研究の3つのWGあるいはその下に設けられたSub-WGによる研究会活動を毎月1回のペースで行いました。53年度JSQC年次大会では商品開発プロセス研究会のセッションを実施し、研究会以外の会員から多くの意見を頂戴しました。WG2は、その研究成果を出版しました(福原、田口、細川、 2024日本製造業復活のための技術開発とマネジメント、 日本規格協会)。

4-5-4. 社会基盤型運輸システム品証研究会(主査:岡部 康平 12名)

 交通・物流系における自動・自律化の先端技術が社会インフラの中核として社会に定着するために求められる品質管理、特に、品質保証の在り方について、学術的・実務的な観点で検討しました。検討テーマは主に下記の分野を重点的に議論しました。

  1. (1) 自動車の自動安全運転技術
  2. (2) ドローンの自動航行技術
  3. (3) サービスロボットの自律搬送技術
  4. (4) 対話型AIの利活用と課題

 今年度の前半は、大規模言語(LLM)に代表される対話型AIの技術と実用化動向について情報共有し、宅配サービスと連携するソーシャルロボットなどを題材に、対話型AIに求められる安全管理やELSIに対する運用などを幅広く議論しました。また、ライドシェアや無人タクシーなどのサービス評価にSNSの口コミを活用する事例を取り上げ、デジタルプラットフォームを通じた新たな品質保証体制などにいても議論しました。そして後半は、外部の有識者に講演を依頼するなどし、リテラシーやコンピテンシーなどのAI時代に求められる人的能力について調査し、安全教育や自己学習の観点から品質管理・運用について議論しました。これらの議論を通して、新たな挑戦を促進する組織能力や管理方針の検討を深め、これまでの総括として、新たな挑戦を促す冒険安全文化の提唱とその醸成に向けた品証活動の提言を進めました。
 若手の参画により自律化技術の議論を拡充することができた一方で、充分な総括には至らず、新たな研究会等を立ち上げて提言活動を継続することで合意し、本研究会を終了しました。

4-6. サービスエクセレンス部会/生産革新部会(部会長:木内 正光 62名)

 サービスエクセレンス/生産革新部会は、サービスと生産に携わる幅広い職域を網羅する側面に加えて、各職域が求める課題を部会名に示し、課題の達成に向けて定期的に知識共有会などを開催しています。そして、課題達成の原動力と位置付けるDX(Digital Transformation)は両部会の共通課題であり、コトづくりとして包括的にとらえて調査研究を行うために、合同で取り組みを進めています。
 第53年度は、「顧客価値づくりの実装事例・フレームワーク」にフォーカスして、知識共有会、およびワークショップを以下の通り開催しました。

【知識共有会】
・旭化成におけるDXの取り組み(2023年12月)
・新しい消費の創出へ。既存ファッション業界へのシェアリングビジネスの挑戦(2024年8月)
・製品の循環性情報伝達における国際ルール形成動向(2024年9月)

【ワークショップ】
・トランスフォーメーションが進まない現場の現状を打破するには(2024年2月)

 また、サービスエクセレンスの普及を目的として、日本科学技術連盟主催のクオリティフォーラム(2023年10月)において、企画セッション『「共創」による、究極のコト価値開発、設計デザイン業務の変革~卓越した顧客体験を実現するためのエクセレントサービスの設計~』の企画・運営に携わりました。
 さらに、「サービスエクセレンスのフレームワーク」の開発と普及を目的として、研究メンバーを選抜し、調査研究活動を進めました。
 今後は、「サービスエクセレンスのフレームワーク」の論文化、職場の現状打破・既成概念打破を論点とするワークショップの活性化を重点課題として、「未来志向の顧客価値づくり」の体系化を志向します。

4-6-1. サービスのQ計画研究会(主査:安井 清一 17名)

 第53年度も第52年度に引き続き、サービスの質に関する新たな展開を模索するため、サービスエクセレンス部会が主催する知識共有会にて情報収集を主な活動としました。
 本研究会の一部のメンバーは、ISO/TC312のメンバーでもあり、日本から積極的に意見を出しています。また、ISO/TS 19390のWorking Draft「Service excellence― Implementation approach for ISO 23592(Service Excellenceを組織に導入するためのアプローチ)」の作成や、ISO/TC312が作成しているISの改訂等に、主体的に関わっています。

4-7. 医療の質・安全部会(部会長:棟近 雅彦 105名)

 今年度の研究活動は、QMS-H研究会との共同研究、医療QMS監査研究会、医療経営の総合的「質」研究会の3研究会で、医療の質マネジメントの方法論に関する研究を進めました。また、医療の質マネジメント基礎講座は、昨年度と同様にオンデマンドコンテンツの提供により開講しました。

(1)QMS-H研究会との共同研究

 例年開催している最終成果報告シンポジウムは、2024年3月3日に、早稲田大学での現地開催とオンラインでの配信によるハイブリッドで開催しました。テーマは「異業種交流から考えるTQMモデル」とし、トヨタ自動車九州の高倉宏(株)氏に「トヨタ自動車九州におけるビジョン実現に向けた方針管理の取り組み」と題して講演いただきました。また、共同研究グループの成果発表、企画運営委員会の報告、学生による共同研究テーマの発表を行いました。
 QMS-H研究会の活動は、すべての参加病院に重点活動を設定してもらい、2024年度の活動を進めています。2024年6月に第1回研究会を早稲田大学で開催し、9月には、中間報告会を宮崎の古賀総合病院で開催しました。グループ研究活動、将来構想を検討する企画運営委員会も継続中で、2025年3月に開催する最終成果報告シンポジウムで、将来構想を発表する予定です。

(2)医療QMS監査研究会

 今年度も、2ヶ月に1回の頻度で開催しました。2024年7月には対面で開催し、交流会も開催しました。今年度は、昨年度に引き続き、審査・監査における標準質問例の作成を進めています。2024年11月の年次大会研究発表会で、成果を発表予定です。

(3)医療経営の総合的「質」研究会

 第53年度は、月1回の定期ミーティングをハイブリッド(メイン会場:練馬総合病院講堂)で開催しました。検討項目は、①非製造職場における小集団改善活動の効果的な運営と推進、②組織安全文化の構築に向けて、③人に起因する品質クレームの未然防止活動の難しさと克服策、④医療機器ソフトウェア・標準規格・危害・ハザード・危険状態・通常使用・使用ミス・異常使用の定義、⑤ISQua(国際医療の質学会)でのAI関連の発表、⑥医療DXの現状と課題、⑦医療機器ソフトウェア(SAMD)の現状、⑧HAIP(医療AIプラットフォーム技術研究組合)における医療AIへの取組、⑨生成AIと電子カルテに関する話題提供、⑩医療機関のIT-BCP、⑪インターシステムズジャパンの取組、⑫日立製作所の医療ビジネスへの取組などで、その成果を講演会、年次大会研究発表会、学術誌等で発表しました。

(4)医療の質マネジメント基礎講座

 アウトリーチ活動の一環として開催している「医療の質マネジメント基礎講座」は、2023年4月~12月に、オンデマンド教材を提供する形で開講しました。今年度も個人で受講する個人プランと、同じ勤務先であれば開講期間内は人数無制限で視聴できる団体プランの2種類の受講形式で提供しました。また、一部の演習科目については、集合形式で開催しました。2024年も5月~12月で開講中です。

4-8. ソフトウェア部会(部会長:茨木 陽介 62名)

・ソフトウェア開発に関する議論

 オンライン会議で、最近注目されているテーマの議論や新たな試みとしてロールプレイ方式の会合も行い、理解を深めました。また、コロナが明けたことを受け、数年ぶりに対面で集合して親睦を図りました。

・学会誌への記事掲載

 Vol.54,No.2,2024で、「活動報告 ソフトウェア部会」を掲載しました。生成AIやローコードアプリケーションなど最新のテーマに加え、部会設立以来の研究内容およびソフトウェア開発における知見や注意すべき点をまとめ、製造・サービス業などソフトウェア分野以外の会員にもわかりやすく解説いたしました。

・ソフトウェア開発関連の行事に積極的に協賛・後援

 昨年度同様、他団体との連携を行い、各種行事の後援などを行いました。

4-9. 管理技術部会(部会長:金子 雅明 103名)

 前期に新たな運営体制を整備したので、今期はその2年目となります。基本的に前期のやり方・進め方を踏襲し、以下のような内容を実施しました。

(1) 既存WGの継続

 既存の4つのWGについては、前期と同様に、小集団での研究会合という性格を維持しながら、会員や社会のニーズが高い新たな研究テーマを定め、研究活動を推進しました。
 WG1では、「品質マネジメントの改善・発展・活用の道~中小企業のQMSモデルの研究~パート2」として、各場面で遭遇した「工夫した内容」と「得られた効果」についてメンバーで収集しました。現在、収集したデータを解析中です。
 WG2では 「DX時代における品質保証の仕方の研究」をテーマに挙げました。その目的は、DX時代における品質保証の仕方を研究し、品質保証部の仕事を明確にし、従来の仕組みをアップデートし、実践し、品質コスト低減を目指します。今年は2年目の研究で、4回の会合を実施済で、今期は、情報セキュリティ脆弱性の改善方法を見つける事が大事であると考え、解決のための要件を特定しました。
 WG3では、52期以降4つのサブグループに分けて活動しています。研究テーマは52期からの継続とし「先進的企業に対する審査のありかた」「統合マネジメントシステム」「内部監査(事例研究)」「食品企業のSDGs(23企業の事例収集)」です。
 WG4では、参加メンバー企業の本社TQM/品質管理部門が主導して行っている活動や取組の紹介、及び活動時の悩みや課題について議論しています。今期では「品質不正防止の取組について」と「内部監査について」に関して参加企業での取り組みとその課題を議論しました。

(2) 勉強会/情報共有会の導入

 今期も、昨年12月から今年9月末の間に、7回の勉強会を企画し、開催しました。前期は5回でしたので、今期は2回多く開催できたことになります。各講演テーマ、講演者と参加者数(参加申込数)は以下の通りです。

 ・第7回(2023年10月13日(金)17:30~19:00)「企業の持続的発展を支える人材育成: 品質を核にする教育の実践」、
  村川技術士事務所 村川 賢司 氏、57名
 ・第8回(11月17日(金)17:00~18:30)「ISO内部監査で、SDGsの達成状況を併行して自己評価する方法」、
  JCSRA登録SDGs評価員 長谷川 泰子 氏、41名
 ・第9回(12月11日(月)17:30~19:00)「TQM活動状況の自己診断方法について」、
  川崎重工業株式会社技術開発本部プロセスエンジニアリングセンターTQM推進部 鈴木 啓介 氏、42名
 ・第10回(5月13日(月)17:00~18:30)「品質不祥事の嵐のなかで~いま求められる健全な組織体質・風土~ 」、
  東京大学名誉教授、公益財団法人日本適合性認定協会理事長 飯塚 悦功 氏、191名
 ・第11回(6月26日(水)17:00~18:30)「トラブル未然防止のための知識の構造化」、
  株式会社 構造化知識研究所  田村 泰彦 氏、92名
 ・第12回(7月16日(火)17:00~18:30)「おもてなし規格認証 (サービスエクセレンスISO23592に準拠した基準導入)の活用 」、
  株式会社イー・キュー・マネジメント技研 代表取締役社長 前田 浩 氏、36名
 ・第13回(8月23日(金)17:30~19:00)「人財育成について~品質保証フォーラム立ち上げの話を中心に」、
  旭化成(株) モビリティ&インダストリアル事業本部生産基盤統括部品質保証部シニアマネージャー 五味 俊一 氏、49名

(3) 情報発信力の強化

 メーリングリストを用い、部会での活動や関連情報の広報を行いました。前期にWGの活動経過にて定期的にメーリングリストに流して一巡しましたので今期では行いませんでしたが、今期に新規参加メンバーも増えてきたので、来期はまた再開したいと思います。

 

5. 標準委員会(委員長:中條 武志)

(1)JSQC規格およびJIS規格の改定・改正に取り組みました。

  • JSQC-Std 32-001 日常管理の指針(改正版)
  • JIS Q 9024 マネジメントシステムのパフォーマンス改善―継続的改善の手順及び技法の指針(改正版)

(2)新しいJSQC規格を発行しました。

  • 2024年9月25日制定 JSQC-Std 62-001 根本原因分析(RCA)の指針

(3)新規作業項目についての検討を行いました。

  • JSQC-Std 62-002 プロセス保証におけるリスクマネジメントの指針

(4)制定済みのJSQC規格の見直しを行いました。

  • JSQC-Std 22-001 新製品・新サービス開発管理の指針は、2024年3月に見直しを行い、[継続]を決定しました。

(5)事業委員会提案の学会規格講習会に講師を選定、派遣しました。

6. 学術委員会(委員長:山本 渉)

6-1. 論文誌編集、表彰(学術)小委員会

【論文誌編集】(委員長:山本 渉)

   論文誌編集委員会では以下の活動を行いました。

(1) 8月を除き毎月1回の論文誌編集委員会を開催しました。論文誌編集委員会の責任に基づき、査読意見を参考にしながら、編集委員会が掲載の可否を判断してきました。「著者責任」を基本とし、新規性・価値のある主張を含む論文については掲載する方向で進めました。

(2) 日本で開催されるANQ Congress 2024にあたり、国際交流委員会の委託を受けて、以下の活動を行いました。

  1)JSQCから提出されたすべてのアブストラクト(全46本)に対する審査

  2)フルペーパーに対するBest Paper Awardの審査

(3) 51年度に投稿論文審査のスピード化を目指して導入されたEditorial Managerによる投稿受付を継続しました。また、学会規則313機関誌「品質」投稿要項および学会規則314「品質」論文誌編集委員会運営マニュアルを、Editorial Managerを活用する現体制に合わせて改定しました。

(4) 国際交流委員会と連携して、ANQ 発表論文を対象とした英文電子ジャーナル(Total Quality Science)の発行を行いました。第53年度はVol.9、 No.1、No.2およびVol. 10、No.1を発行しました.論文数は14報でした。

(5) 第53年度も、昨年度に引き続き論文掲載料の検討をいたしました。論文掲載には相当なコストがかかるため、学会の財政状況を鑑みますと、論文掲載料の徴収は避けらない状況です。会員の理解を得つつ、引き続き検討を続けます。

(6) 学会誌編集委員会と連携して、品質誌の電子ジャーナル化(J-Stageでの発行)を検討しました。詳細につきましては、引き続き検討を続けます。

(7) 研究発表会の活性化を目的として創設された研究発表会(本部)の優秀発表賞制度への協力を継続しました。

(8) 表1に過去5年間(第49年度~第53年度)の月別投稿論文数を、表2に過去5年(第48年度~第52年度)の投稿区分別採択数を示します。第53年度は審査中のものがありますので、採択数は第48年度から第52年度を示しました。一度却下されたものが再投稿される場合もありますので、単純に採択率を計算することはできませんが、おおむね4割程度が採択されています。

▼表1 過去5年間の月別論文投稿数

  10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月
第49年度 1 0 0 1 1 3 1 2 2 1 1 2 15
第50年度 0 1 1 2 3 3 1 0 2 0 1 1 15
第51年度 1 2 1 4 3 1 0 1 0 1 0 0 14
第52年度 2 3 1 1 0 0 2 0 1 0 0 1 11
第53年度 1 1 0 0 0 1 0 0 1 1 0 1 6

▼表2 過去5年間の投稿区分別採択数

  第48年度 第49年度 第50年度 第51年度 第52年度 採択率
20 9 15 8 15 4 14 4 11 6 41.33%
報文 5 3 4 2 2 1 3 1 3 2 52.94%
技術ノート 2 0 3 0 2 1 1 0 1 0 11.11%
調査研究論文 2 1 0 1 4 1 0 0 4 3 60.00%
応用研究論文 4 0 0 0 2 0 3 0 0 0 0.00%
投稿論説 0 0 0 0 1 0 1 0 0 0 0.00%
研究速報論文 0 0 0 0 0 0 2 1 0 0 50.00%
クオリティレポート 5 5 8 5 2 1 4 2 3 1 63.64%
QCサロン 2 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0.00%
レター 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0.00%

【研究助成】(委員長:川村 大伸)

 本事業は学会創立30周年記念事業として第31年度より開始されたものです。助成金額は1件5万円で5件以内。対象者は、日本品質管理学会の正会員もしくは準会員、申請時に35歳以下で大学・研究所・研究機関等において研究活動を行っている者、留学生の場合は日本の大学院に在籍する外国籍の留学生等の要件を満たす者です。本年度は6名の応募があり、研究助成選考内規に則り5名を選考しました。

6-2. 国際交流、学会間交流小委員会(委員長:鈴木 知道)

【国際交流】

(1)ANQ Congress Yokohama 2024の開催

 ANQ(Asian Network for Quality)Congress Yokohama 2024が、2024年9月16-20日に、慶應義塾大学(神奈川県横浜市)にて開催されました。日本でのANQ Congressは2009年の早稲田大学での開催以来、15年ぶりとなります。JSQCからのAbstract、Full Paperの登録件数は、46件です。

(2)ANQの安定的発展のための調整

  ANQ理事会が3月にオンラインで、9月に対面(慶應義塾大学)・オンライン併用で開催されました。JSQCは2023-2024年度の議長組織となっており、山田秀副会長がANQ理事会の議長を務めています。

(3)英文電子ジャーナルの刊行

  英文電子ジャーナルTotal Quality Science(TQS)の9年目の刊行が完了しました。TQSへの投稿に対する期待もあり、ANQ CongressにおけるJSQCからの発表件数は安定しています。

(4)海外の品質に関連する学協会とのアライアンスに関する検討

  幅広く海外の学協会と交流をもつための具体的方策について継続して検討しています。

【学会間交流】(委員長:佐野 雅隆)

(1)FMES

 FMES代表者会議が延期されました。今年度はJABEE審査等での活動はありませんでした。 学会内での候補者を選定し、依頼しました。

(2)横幹連合関係(委員長:椿 広計)

 2023年12月に、横幹連合20周年行事としてハイブリッドで開催された第14回横幹連合コンファレンス(東京大学本郷キャンパス)「対立・矛盾を克服する横幹知イノベーション:領域融合のトランスフォーメーションを目指して」の企画にも協力するとともに、学会を超えた産官学3調査研究会(SDGs、 ELSI、 DX)活動を支援しました。特に、「コトつくり至宝」の選出について全学会トップへの協力要請がなされることが決まり、JSQCが横幹連合「コトつくりコレクション」に登録してきた、「QCサークル」「QFD」、「タグチメソッド」といった日本の品質管理活動に係るコトが至宝候補なっています。関連して第14回横幹連合コンファレンスには、永田靖顧問が至宝登録の方向性を議論する特別企画セッションのパネル討論に参画されました。
 52年度に引き続きJSQCから推薦された下野 僚子 会員と椿 広計 会員が連合理事として事業企画、機関紙編集などの任に当たりましたが、椿 氏は2024年5月に開催された横幹連合総会において第7代の横幹連合会長に選任されました。当該総会では、標準化とアカデミアとの関係を強化する活動方針が承認されるとともに、朝日弘日本規格協会理事長による特別講演も実施された。2024年9月には経済産業省からの要請で第6回横幹会議を開催し、横幹連合としてが、標準化とアカデミアとをつなぐプラットフォームとして何ができるかなどを議論しました。

7. 安全・安心社会技術連携特別委員会(委員長:伊藤 誠)

 日本原子力学会(ヒューマン・マシン・システム研究部会)等との共催の「安全・安心のための管理技術と社会環境」ワークショップ(第24回)を、2024年12月に実施すべく準備を進めました。また、自動車事故対策機構等の審議についても引き続き参加・協力し、ISO TC241でも活動し、ISO39001等の普及をめざした活動を行っています。

8. TQE(問題解決力向上の為の初等中等統計教育)特別委員会(委員長:鈴木 和幸)

 新たな学習指導要領の鍵となる“次世代への問題解決教育”、“情報・ICT・AI世代への教育”、“産官学の連携”にむけて、オンラインによる活発な議論を継続し、種々のシンポジウム・ワークショップ等にて情報発信を行い、生徒・子供たち自らが主体性を持って行動し、人に優しく、社会に貢献し、人間的成長を図るべく、本委員会として下記の活動を行いました。

(1)これまでの日本の品質管理界が培ってきた主体的・協働的な科学的問題解決の知を結集し、問題解決プロセスの確立とともに、新たな学習指導要領の定着に向けて、議論を継続し委員メンバーが組織的にかつ自発的に以下の企画・講演への全面的な寄与・協力を通して情報発信を行いました:

  1. 2024年2月2日:統計数理研究所公開シンポジウム「COVID-19データ解析−今後のパンデミックのために−」 (統計数理研究所)の企画・講演への全面的な寄与・協力、鈴木委員長が講演、椿委員がパネル討論の座長を行ないました。
  2. 2024年3月2・3日:日本統計学会統計教育分科会等主催の「AI 社会のデータリテラシー再構築とデータサイエンス教育の体系化―AI 社会がもたらす統計・データサイエンス教育の課題と展望―」への共催と山下委員・林委員が発表を行いました。
  3. 2024年3月9日・3月16日・3月23日:高橋武則先生(統計数理研究所 客員教授)を招いた東京学芸大学先端教育人材育成推進機構主催の研修「学校生活における問題解決プロセスの体験と初歩から始める回帰分析」へ協力し品質管理的問題解決の啓蒙普及に努めました(山下委員が企画・コーディネートを実施)。
  4. 2024年9月1日~5日:統計関連学会連合大会において竹内委員・渡辺委員が 企画セッション「生成 AI がもたらす新しい統計・データサイエンス教育の展開と課題」を立ち上げ、この中で「【人工知能学会・日本統計学会公式】全国中高生 AI・DS 探究コンペティション 2023 の実施報告と展望」(林委員)を発表。
  5. 2024年 9月12日『第35回神奈川県品質管理セミナー』(神奈川県)の企画・講演への全面的な寄与・協力(委員長が基調講演を行ないました)。

(2)文科省がすすめるDXハイスクール採択校(高等学校等1、000校程度)への支援を行いました:DXハイスクールとは、文部科学省が推進する事業で、情報や数学などの教育を重視するカリキュラムを実施し、ICTを活用した探究的な学びを強化する高校を支援するものです。

  1. データサイエンス、探究的な学び等に関する「DN7によるビッグデータのデータドリブン解析の体験セミナー」の提供 (DN7:ビッグデータ向けのデータの分析・可視化手法。詳細は、 https://data-fun.jimdofree.com/ をご参照下さい)
    1-1.講師派遣(試行)
    ※本年度は複数拠点(生徒向け[クラス単位]・教師向け[複数校合同])で試行。
    下記にてセミナー動画等を公開予定。
    1-2.データ活用に関するe-Learning用動画公開
     https://www.youtube.com/@Take_the_AP-DN7
      
  2. データサイエンス、探究的な学び等に関する補助教材の提供
    2-1.「科学的問題解決法」生徒用教材(講師派遣の可能性も有り)
  3. データサイエンス、探究的な学び等に関する
    3-1.トヨタ自動車士別試験場の事例動画公開
    3-2.データ駆動型社会への講演動画2件の公開
     下記URLにて公開:https://suzukilab.wordpress.com/jsqc-tqe/

(3)問題解決高校授業検討WG活動の推進が加速されました:

 古谷委員・ 熊井氏・菅生氏を中核とする問題解決高校授業検討WG(2023年5月)を設立し、「生きる力」・「助け合い」・「生きる喜び」を次世代の全国民に与える方法・プロセスである科学的問題解決プロセスと身の回りの問題解決事例を含む副教材の作成・提供を目的に、53年度は下記の活動を行いました。
*高校生向けの教材づくりに着手
*「探究的な学び」の方法の補助教材として、「科学的な問題解決」(生徒用)を提供(2024年6月公開済)
*本教材に基づく授業(試行)を愛知県立美和高等学校の1年生5クラスで実施
 2024年6月6日、13日(50分×2コマ)

 この結果、7割の生徒が前向きな評価であり、「自ら考えて解を見つける体験型」の教育が、高校生に対しても有効であることが示されました。

(4)40年度に設立された統計グラフ全国コンクールにおける 日本品質管理学会賞の周知・徹底を図り、その質の向上に努め第71回統計グラフ全国コンクールにおいて日本品質管理学会賞授賞を行ないました(2023年12月)。

過去の事業報告