私の提言「Qの創造に資するイノベーションを発動する場(BA)づくり」

名古屋大学 名誉教授/椙山女学園大学 栗本 英和

 「質」を基盤にした、新たな景色や世界観を描けないだろうか。かつて椿 先生や古谷 様と意見交換する機会があり、入会しました。学会のビジョンである『Qの確保』『Qの展開』『Qの創造』は魅力あるタグ・ラインであり現在、中部を拠点とする活動に参画しています。
 提言よりも提案として浮かぶのは「品質管理」という言葉です。学会規格の品質管理用語ではQuality Management(質のマネジメント)です。一方、学会名はQuality Controlであり,制御や統制の意味合いが強くなります。歴史的な背景と思われますが、ビジョンに照らして再考するならば、Quality Control, Management, and Design(略称QC)の方がむしろ納得感があります。
 過去の延長で将来を考える姿勢は事実前提といわれるのに対して、ありたい姿から考える姿勢は価値前提といわれます。本学会の未来を想像する時、ありたい姿を目指すためには、質を追求する取組(改善、改良、改革を含む)が拡がっているのだろうか、質による新たな価値創造のための挑戦をしているのかを振り返ってみる(self-assessment)必要があります。
 もう1つはコスパやタイパとよばれる、狭義の生産性に偏りがちな仕事文化のなかで、過去に拘泥せず、未来に向けて忌憚なく意見交換できる心理的安全性が確保された、野中 郁次郎 博士が描く「場(BA)づくり」です。とりわけ、次世代を担う技術者や研究者がわくわくする、どきどきする勇気ある挑戦や投資を通した、失敗も共有し学べる、業種業態を超えたコミュニティを形成します。
 趣旨は学協会の取組が、それぞれの枠内の部分最適に陥らず、 Japan Association for Qualityに資する共通認識を礎に、越境することで新たな価値を目指す実践協働体(community of practice)を醸成する仕掛に他なりません。昨今、話題にでる生成AIも、多様性ある協働から生まれる、従来にない景色や俯瞰から本質を突いた、より的確かつ適切な解を導くこともできるからです。これは自らの課題を他部署や他機関に転嫁しない、後回しにしない考え方にも通じます。
 品質管理以外の、経営の質、教育の質、医療の質など、Qualityのありたい姿を目指すBAづくりによって、新たな切り口から『Qを創造する』文化の再興を期待します。

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jimukyoku01
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