私の提言 サステナブル社会実現のための品質管理の役割と責任
千葉商科大学 サービス創造学部 横山 真弘
1970年に設立された日本品質管理学会は、既に50年以上の歴史を重ねています。当時のわが国は高度成長期にあり、敗戦国として異例の経済成長を遂げ、GDPで世界第2位に達しました。しかし、その経済の進展とともに環境破壊といった負の遺産も抱えることになり、品質管理による国際競争力の維持というミクロ的視点と、環境保全というマクロ的視点がわが国に課せられることになりました。このようにして、日本品質管理学会の使命と責任は技術の進展とともに増し、現在の安心・安全な技術基盤を支えていくことになりました。
折しも、2015年には国連においてSDGsが掲げられ、時代はサステナブル社会へと進んでいます。
「一人も取り残さない」というテーマは、日本品質管理学会にとっても原点を問い直す大きなきっかけになると考えます。特にSDGsの目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」は、この実現のためには品質管理や品質保証の役割が重要であることを示しています。今後も技術はAI化などにより進展し、社会課題の解決への取り組みが不可欠です。
これまでの日本品質管理学会の歩みを振り返ると、品質管理は企業の開発の可能性やビジネスの広がりと、それが引き起こす環境負荷といった社会課題という相反性をいかに乗り越えていくかといった道のりでもありました。つまり、製品の安心・安全を担保しつつ生産効率の向上が求められる中で、企業の利益最大化と消費者の安全確保という二律背反が顕在化するのです。しかし、それでもわが国の企業は、この両者を両立させる努力を継続し、「メイドインジャパン」として世界から高い信頼を得てきました。
それでも、こうした品質管理が実効性を持つためには、企業が利潤を上げ、投資が続けられる環境が必要です。わが国はこれまで「失われた30年」という長い経済停滞を経験してきましたが、品質管理をめぐる近年の不祥事もこれとは決して無関係とは言えないでしょう。だからこそ、サステナブル社会に貢献するためには、より着実なイノベーションが不可欠なのです。
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