私の提言 「令和大磯宣言」後の、これからの品質経営の姿

(一財)日本科学技術連盟 品質経営創造センター
デミング賞委員会事務局 部長 安隨 正巳

 近年多くの企業では、品質管理の対象を単に狭義の品質として捉え、真の「品質経営」に進化させるまでに至らないまま今日を迎えていることは否めない。品質に関し全責任を持つ品質担当役員(CQO:Chief Quality Officer)の立場と責務、取締役会における品質に関するプライオリティも、残念ながら企業間で大きなばらつきがあると言わざるを得ない。
 日科技連では、2017年に品質経営懇話会(委員長:坂根正弘氏(コマツ顧問))を創設し、22名のメンバー(2023.10現在)を擁し様々な議論を重ねてきた。そこでクローズアップされたキーワードは「顧客価値創造」である。企業の競争力の源泉は、マーケティングなどの「外部適応」と組織能力、コア技術、人材などの「内部適応」の2軸で成り立っているといわれるが、激変する経営環境下、外部適応と内部適応の両立が重要になる。品質経営の推進もこの2軸の実現を目指し。持続的成長のための「ビジョン、戦略」を実現できる「組織能力の獲得」により顧客価値創造を実現する、これを品質経営の枠組みの中でパッケージ化しようとするものである。

 「ビジネスモデルで先行し,現場の戦いに持ち込めば日本は負けない」。半世紀以上の歴史を誇る品質管理シンポジウム(日科技連主催;以降QCS)の記念すべき第100回で発信されたこの提言が大きな反響を呼んだ。提言者は、前出の坂根正弘氏である。和製英語にもなった“KAIZEN”は、我が国製造業の製品品質を飛躍的に高め、90年代初頭に国際競争力をトップ水準に押し上げたことは周知の事実である。しかし、この成功体験が「良いモノを作れば売れる」という暗黙的な価値観を強固にしてしまっている点も否めない。品質とは「モノの出来栄え」ではなく、「社会や顧客のニーズを満たす度合い」である。第109回QCS(2019年12月)で「令和大磯宣言:これからの品質経営の枠組み」が発出され、この普及に努めているがまだ道半ばである。SQCからTQC更にTQMと品質管理の手法は時代の要請に適応し続けて来たが、TQMの進化、新たな機能の追加検討を日科技連では継続していきたい。

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