私の提言 やる気のある学生にデータ解析の実践する機会を!

横浜国立大学 黒木 学

 横浜国立大学(横国)に異動して4年目になります。横国に経済学部・経営学部があることを知っている方は多いと思います。でも、理工学部があることを知っている方はあまりおらず、横国理系といえば「工学部」というイメージなのかもしれません。実は、2011年に教育人間科学部と工学部を改組してできたのが理工学部です。このときの改組で最も目を引いたのは、ハード的な「モノづくり」を重視する学科ばかりの工学部に、数理科学に特化した教育プログラムができたことだと思います。この教育プログラムは、主に、純粋数学の教官で構成されていますが、統計科学、計算流体力学、画像・知識情報処理の教官もいます。私はここに所属しています。


 純粋数学科みたいなところですが、意外にも統計科学に興味を持つ学生さんがたくさんいます。不思議なことに、その学生さんの興味の多くが、昨今のデータサイエンス・ブームとは無関係なところから生まれています。もともと数学が好きでありながら、本学部の風土を反映して「実践できる数理科学」を探し求める学生さんが多いからなのかもしれません。他の大学とは異なり、3年生で研究室に配属されるまで、統計科学に接する機会はほとんどなく、「データはばらつく」という感覚がありません。

 しかし、未知なる世界への好奇心からなのか、研究室配属後は貪欲に統計解析技術を身に着け、果敢に学会発表に挑戦し(4年生がANQでBest Paper Awardをいただきました)、学術誌の査読に耐えうるレベルの卒論を書いて大学院へ進学しています。そんな学生と接するうちに、統計科学は最高の「実践的数理科学」ではないかと思いはじめました。一方、本学部は、現在のところ、データサイエンスに関する組織的な戦略をとっていないこともあり、実践的データ解析を経験する機会に恵まれていません。


 以上、所属学科の紹介になってしまいましたが、同じような状況にある研究室は少なくないと思います。“超”有名大学やデータサイエンス・ブームに乗って設立された学術組織との共同研究やインターン受け入れを希望する企業が多いと思います。そのような企業のなかに、小さな学科の小さな研究室にも目を向け、やる気のある学生に実践的データ解析を経験させてくれる企業はないかなと思う今日この頃です。

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