第54年度事業報告
自2024年10月 1日 至2025年 9月30日
1. 概況(会長:山田 秀)
本学会の54年度は、53年度に設定した3カ年中期計画の第2年度となります。そこで設定した活動の柱であるA.会員・賛助会員にとって魅力ある学会づくり、B.品質管理の正しい理解と普及促進・社会への貢献、C.更なる会員サービスの向上についてさまざま活動を行いました。
Aについて、昨年度提唱したモノづくりにおける工程内ビッグデータを用いた品質管理について、更なる普及を目指しました。その中では、無償解析ツールに関する講習会や、研究会での事例討論を実施しました。またBについては、これまでの問題解決の教育支援を継続するとともに、データ活用を念頭においた小・中・高への品質・統計教育支援をしています。さらに第12回科学技術フォーラムを開催し、新時代での教育改革を提唱しています。第2回 JAQシンポジウム「AI時代の『Qの確保』・『Qの展開』・『Qの創造』」を開催し、AI活用に関する倫理面などの討論を行いました。Cについては、各種委員会や研究会などの会合をオンライン中心で行い、各種研究発表会や各行事は会員の利便性を考慮し、適宜対面とオンラインを使用しました。加えて学会業務の合理化をねらいとして、ICTによる新サービス導入の検討を開始しました。上記の中には、標準委員会によるJSQC規格の開発と普及など、力強く継続しているさまざまな活動が含まれます。
2. 総合企画委員会(委員長:山田 秀)
総合企画委員会の役割は、3ヶ年中期計画の進捗管理と55年度への継続であり、メンバーは会長、副会長を中心に重点実施事項に関係する少数名です。学会の会員数の減少が続く中、3カ年中期計画に基づき様々な施策を導入していますが、残念ながら会員増につながる成果はまだあがっていません。今後も重点実施事項3ヶ年中期計画を着実に実行していく必要があります。また、支部活動についてより一層の活性化を目指し再編を検討し始めました。
【研究発表会実行委員会(特別委員会)】
2024年11月開催の年次大会研究発表会のプログラム作成などを行いました。2025年5月に開催した第137研究発表会でのチュートリアルセッションを企画・実施しました。同時に、研究発表会のプログラム作成などをサポートしました。2025年11月開催予定の第55回年次大会の研究発表会の準備を行いました。
3. 庶務委員会(委員長:金子 雅明)
学会運営が円滑に進むよう、庶務委員会を7回開催し、諸般の庶務活動を推進しました。選挙方法は、オンライン選挙に一本化し、関連する規定を改訂しました。品質管理推進功労賞、会計は、関係する規定に基づき進めました。
【会員サービス】(委員長:下野 僚子)
2025年9月現在の会員数(括弧内2024年9月比)は、現在、名誉会員25名(1名増)、正会員1574名(58名減)、職域会員48名(3名減)、準会員63名(5名減)、賛助会員 163社232口(1社増2口減)、賛助職域会員11名(増減なし)、公共会員11口(1口減)となっています。
前年度に引き続き、「JSQC認定品質技術者」((1)上級品質技術者、(2)品質技術者)に関して認定証を発行し、同制度の認知度を高める取り組みを行いました。また、QC検定1級および2級の合格者に対しても、前年度に引き続き、学会年会費が割引となるキャンペーンを行いました。
庶務委員会、理事会および学会行事等を通じて、会員増に向けて検討を進めました。
| 第53年度 | 第54年度 | ||
| 名誉会員: | 24名 | 名誉会員: | 25名 |
| 正会員: | 1632名 | 正会員: | 1574名 |
| 準会員: | 68名 | 準会員: | 63名 |
| 職域会員: | 51名 | 職域会員: | 48名 |
| 賛助会員: | 162社234口 | 賛助会員: | 163社232口 |
| 賛助職域会員: | 11名 | 賛助職域会員: | 11名 |
| 公共会員: | 12口 | 公共会員: | 11口 |
【規程の制定、改定】(委員長:奥 展威)
学会規則の見直しでは、学会運営の透明性確保、および活動実態との整合性の観点から各委員会等と協力し、規定・内規等の見直しを進めました。更に活動実態との整合性を検討する課題も残されています。
4. 活動委員会(事業を含む)(委員長:山田 秀)
活動委員会委員長として、各種の関連事項について検討、承認を行いました。
【研究開発】(委員長:黒木 学)
研究開発委員会では、以下の活動を行いました。
- (1) 例年通り、各研究会の活動予算を審議し、各研究会に配分しました。
- (2) 本年度も研究会の公募を行い、申請内容について検討を行いました。
- (3) 本年度も、研究会の研究成果や活動内容を学会誌へ掲載する活動を実施しました。品質誌の「部会研究活動報告」、「研究活動報告」の欄において、継続的に発表しました。一部の研究会は、連載の形で研究活動報告を行いました。
【学会誌編集】(委員長:丸山 一彦)
第54年度も例年どおり、年4冊の学会誌『品質』を発刊し、JSQCニューズを年8回発行しました。事業・広報委員会、研究開発委員会、中部・関西支部と密接に連携し、研究会報告や部会報告を中心に掲載してきました。また、講演会、クオリティトーク、QCサロンの講演内容の収録や、本年度から新設した「私のTQM履歴書」「品質管理推進功労賞授賞者の声」の連載企画をスタートさせ、学と産の橋渡しを狙いとしました。また、特集はVol.55・No.2・No.3にて、年間2回掲載しました。
【事業・広報】(委員長:廣野 元久)
第54年度は、受け入れ企業様のご協力により事業所見学会を計画を超えて5件実施し、特に東北及び甲信越での開催も実施できました。53年度に引き続き、資生堂の協力により、感性品質に着目して香りと触感の世界にまつわる品質のテーマでの見学会を実施できました。
今後も会員に役立つ事業所見学会の企画を取り上げていきます。また、しばらく途絶えていたヤングサマーセミナーを復活し実施いたしました。さらに、54年度は2つのシンポジウムを実施し、1つは商品開発プロセス研究会の中間報告会として、「新たな市場を拓く商品開発プロセスの3つの視点」のテーマでマーケティング・心理といった他分野の学会の方々をお呼びして活発な議論が行われました。また、JAQ主催の第2回シンポジウム「AI時代の『Qの確保』・『Qの展開』・『Qの創造』」の企画を担当し、人工知能・AI倫理の専門家をお呼びし、AIの利活用に対するリスクとそれをコントロールするための品質の在り方について、活発な議論が行われました。今後も異学会の専門家を招聘した活発な討論の場を設けたいと考えています。更に、魅力ある学会づくりに向けてクオリティトークの強化を図り、オンラインで午後開催、夕方開催等、開始時間に融通を持たせて、計画5件に対して6件を開催できました。特に「品質不正」をテーマとした回では、事前質問を受け付け、通常よりも討論時間を重視した新たな試みにより大いに盛り上がりました。
最後に、54年度の反省点としては、他学会、他団体が主催するWebによる無料や低額の行事が増加しており、それらの行事に埋没しないように差別化を計り、JSQCらしい認知向上と興味を引くための広報活動の在り方を検討する必要を感じており、55年度の施策に盛り込んでいきます。
▼(表) 第54年度事業計画・実績
| 年次大会 | 研究発表会 | 講演会 (座談会) |
シンポジウム | JSQC規格 講習会 |
事業所 見学会 |
クオリティ トーク |
ヤングサマー セミナー |
|
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 第54年度計画 | 1 | 1 | 2 | 2 | 6 | 2 | 5 | 1 |
| 第54年度実績 | 1 | 1 | 0 | 2* | 4 | 5 | 6 | 1 |
*)JAQ主催シンポジウム1件を含みます
【JSQC選書】(委員長:飯塚 悦功)
品質に関わる概念・方法論・手法を社会が理解し適切に適用できるように支援するための一方法として、品質マネジメントに関わる、基本的考え方、マネジメントシステム、手法・技法、推進・運用、さらには品質に関わる時事の背景・意味の解説をする一連の書籍の出版化検討(企画・編集)をJSQC選書刊行特別委員会で進めました。
同委員会を2回開催し、発行書籍候補の列挙、短期(1年程度)的な発行計画(主題、著者、発行時期など)を審議し決定しました。決定された主題にかかる構想の審議や原稿案の査読を行い、下記の書籍の発行、及び発行に向けた準備を進めました(出版社:日本規格協会)。
・『現場から経営を考える』(木内 正光)2024年12月
・『慢性期医療の品質マネジメント』(進藤 晃)2025年5月
・『モノづくりにおけるマネジメントへの誘い』(竹本 康彦)2025年8月
・『病院だからTQM』(福村 文雄・立石 奈々)2025年9月
4-1. 東日本支部(支部長:鈴木 知道)
東日本支部のコミュニティ強化を目指して、活動委員会(事業・広報)が中心となり事業所見学会を企画・実施しました。また、前年度に引き続き、クオリティトークやJSQC規格講習会を積極的にオンラインで実施しました。ただ、持続的かつ効果的な支部活動を行うための支部体制には課題があるため、次期では東日本支部体制の在り方も含め、JSQC全体として支部体制について検討する必要があります。
4-2. 中部支部(支部長:松浦 秀樹 )
(1)研究会活動
1) 東海地区 若手研究会[主査:南山大学 松田 教授 ](計画6回/実績6回、Zoomまたは名古屋工業大学で開催)
*産業界から実務上の問題点(困り事、関心事など)、SQCに関連した話題、大学院や学部の学生の研究などを持ち寄り議論しました。
2) 北陸地区 若手研究会[主査:金沢工業大学 中野 准教授](計画1回/実績1回)
*研究発表会:2025年 2月22日(土) 発表件数7件、参加者14名(Zoomで開催)
3) 中部支部産学連携研究会 [主査:名古屋工業大学 川村 准教授](計画6回/実績7回、名古屋工業大学で開催)
*産学から持ち寄ったテーマを基に6つのテーマを登録し、主担当を決め、学と産が 双方向に情報発信を行いました。
(2)研究発表会(第138回:中部支部第42回)[参加者:47名]
*日 程: 8月27日(水)13:00~17:45(場所:名古屋工業大学)発表件数15件
*終了後に情報交換会を開催
(3)シンポジウム(第184回:中部支部第43回)[参加者:282名]
*日 程 : 7月9日(水)13:30~16:30 (場所:Zoomウェビナー)
*テーマ:『品質を創造する力を磨く組織風土改革』
~欧米の企業が実践している、品質創造に加速度をつける方法論~
*講演内容:基調講演1件、事例講演2件、パネル討論会
(昨年度に引き続き賛助会員を対象として大口参加(5万円で50名までの参加)を実施.6口の申込あり)
(4)講演会
【第154回:中部支部第65回[参加者:70名]】
*日 程 :5月12日(月)15:00~16:15(場所:Zoomミーティング)
*講演者:竹内 伸一 氏 [トヨタ自動車(株)]
*講演内容:「アジャイル開発&IT/DX技術で実現するパワートレーン開発のスピードと品質の両立」
*幹事研修会と合同開催
【第156回:中部支部第66回[参加者:50名]】
*日 程 : 9月25日(木)14:00~16:00(場所:Zoomミーティング)
*講演者:今井 達也 氏 [ダイキン工業(株)]
*講演内容:「ダイキンのデジタル時代におけるグローバルものづくり製造業の変革・挑戦」
(賛助会員を対象として大口参加(3万円で50名までの参加)を実施。2口の申込あり)
(5)事業所見学会
【第449回:中部支部第111回[参加者:17名]】
*シンフォニアテクノロジー(株) 豊橋製作所[日程: 4月23日(水) 13:10~16:00]
*テーマ『人を大切に思う気持ちやお客様の心に響く技術で未来を創る100年企業を現地現物で確認する』
【第453回:中部支部第112回[参加者:10名]】
*DMG森精機(株) 伊賀事業所[日程: 7月29日(火) 13:30~16:45]
*テーマ『MXによるビジネスプロセスの変革』
(6)幹事研修会
*第1回<勉強会> 5月12日(月)15:00~16:15(場所:Zoomミーティング)
第154回講演会と合同開催
・テーマ:『アジャイル開発&IT/DX技術で実現するパワートレーン開発のスピードと品質の両立』
・講師: 竹内 伸一 氏 [トヨタ自動車(株)]
*第2回<北陸地区見学会> 6月20日(金)~21日(土)
・見学先:航空自衛隊 小松基地
4-3. 関西支部(支部長:阿部 賢一郎)
(1)講演会
第155回 7月1日(火):ハイブリッド形式
<テーマ:「品質保証と人材育成への取り組み」>
講演①:調達品品質確保のための人材づくりと仕掛けづくり
(元 株式会社村田製作所 鱠谷 佳和 氏)
講演②:“廉価・汎用・横展開” 内製DX技術を使ったお取引様との協創活動
~成果の秘訣は“一緒に考える”、“自己成長”、“現場からの感謝”~
(ヤマハ発動機株式会社 執行役員 茨木 康充 氏/
調達推進部 企画推進グループ グループリーダー 内田晴久 氏)
上記の講演会の実施を計画し、66名の申込がありました。調達部材の品質保証をテーマに、人材育成の重要性について講演しました。調達先の品質プロセス管理や問題顕在化、指導育成の在り方を学ぶ有益な機会となりました。
(2)シンポジウム
第185回 9月16日(火):オンライン
<テーマ:循環経済を前提とした製品開発と事業経営の変革による価値創出>
講演①:サーキュラー・エコノミーが引き起こすものづくり変革
(東京大学大学院 工学系研究科 精密工学専攻 教授 梅田 靖 氏)
講演②:サーキュラーエコノミーにおけるビジネス拡大
(野村総合研究所 エネルギー産業コンサルティング部 樹 世中 氏)
講演③:高品位な資源循環に向けた技術開発について
(パナソニックホールディングス株式会社 MI本部 松田 源一郎 氏)
循環経済への転換に伴う新たな品質管理の在り方をテーマに、講演とパネル討議を実施し、耐久性や再生可能性など「循環品質」の重要性を提供でき、25名の方が参加しました。
(3)研究発表会
第139回 9月 9日(火):関西学院大学大阪梅田キャンパス
特別講演:島崎 数喜 氏
(ダイキン工業株式会社 テクノロジー・イノベーション戦略室 技術戦略担当課長)
本年度は「ダイキン工業のDXの取組み」をテーマに講演.研究セッションと企業事例セッションを実施し、50名の方が参加しました。
(4)事業所見学会
第447回 1月21日(火):コマツ大阪工場について
本見学会では、生産ラインを通じて革新技術や人材育成拠点「匠の杜」を学べる貴重な機会となり、24名の方が参加しました。
第455回 9月17日(水):株式会社イトーキ 関西工場
本見学会では、オフィス家具の製造工程を間近で体感。ESやCS向上への取り組みや、働く環境改善の実践を学ぶことができ、27名の方が参加しました。
(5)QCサロン
第140回 2月 4日(火)「高校数学に「統計学」がやってきた!」
竹士 伊知郎 氏(QMビューローちくし 代表)
第146回 4月8日(火)「ひとり一人の“がんばり”にスポットライトを!~グローリー(株)のQCサークル活に ついて~」
名倉 三加代 氏(グローリー株式会社)
第147回 6月10日(火)「方針管理の基本」
猪原 正守 氏 (大阪電気通信大学 名誉教授)
第148回 8月 5日(火)「ダントツ品質を創りあげる処方箋」
飛田 甲次郎 氏(株式会社ゴールドラットジャパン)
(6)その他
・「AI時代におけるコトづくりと品質保証研究会」を通じて、AI技術を活用した顧客ニーズ探索などを研究する会を実施しました。
・「ダイナミックロバストマネジメント(DRM)研究会」を通じて、日本的TQMと先進技術を融合し、QC技術を基盤に問題解決手法を研究する会を実施しました。
4-4. 西日本支部(支部長:高橋 勝彦)
西日本エリアのコミュニティ強化を目指して、活動委員会(事業・広報)と連携して、下記の事業所見学会を実施いたしました。また、コミュニティ拡大のため、中国地区品質経営協会の「経営とTQM」講演会(2025年5月19日、ハイブリッド開催)に、元会長の永田靖氏を派遣し、「改善活動を見直す」と題して講演を行いました。
第454回事業所見学会(西日本)
日 時: 2025年8月29日(金)13:00-17:00
見学先: 株式会社麻生 飯塚病院
参加者: 22名
ただ、東日本支部と同様に、持続的かつ効果的な支部活動を行うための支部体制には課題があるため、次期では西日本支部体制の在り方も含め、JSQC全体として支部体制について検討する必要があります。
4-5-1. 信頼性・安全性計画研究会(主査:横川 慎二 15名)
信頼性・安全性計画研究会は、第54年度をもって所期の目的を達成し、その活動を終了しました。2006年の発足以来、未然防止を中核に理論と実務を架橋することを目的とし、製品ライフサイクル全般を対象に研究と実務提言を重ねてきました。設計段階でのハザード分析や故障メカニズムの体系化、運用・保全における状態監視・予兆管理、さらには事故後の再発防止策に至るまでを包括し、特に設計と運用を双方向に結ぶ「設計―運用循環モデル」の提示は活動全体を貫く理念となりました。
第1期から第3期にかけては、ストレス―故障メカニズム―故障モードの整理、RCA三視点フローの確立、エラープルーフ原理の拡張など、基盤的理論の整備に注力しました。第2期では東日本大震災を契機に「想定外」の再定義やBCM設計指針を提示し、第3期には長期使用製品や社会インフラの劣化管理、組織レジリエンス評価を展開しました。
第4期以降は応用を拡大し、自動運転やドローンの安全管理、社会インフラのリスク統合管理、「社会品質」概念の提唱に取り組みました。さらに第5期以降は品質不正問題に対し、自己点検を軸とした6種のチェックリストや、実務型・持続的QMSの設計指針を提示し、産業界の体質改善に資する枠組みを提示しました。これらは規格活用の可視化や品質コンプライアンスの強化に直結する学術的・実務的成果であると考えています。
20年近い活動を総括し、本研究会が築いた理論と実務モデルは、今後も制度設計や規格改訂、企業教育、安全文化の醸成など幅広い領域で応用可能な普遍性を有しています。本研究会の知的資産が次世代の研究者・実務家に継承され、信頼性・安全性分野のさらなる発展に寄与することを期待します。
4-5-2. テクノメトリックス研究会(主査:黒木 学 15名)
テクノメトリックス研究会では、「統計的手法を中核とした品質管理手法の開発・普及」のために、手法、考え方、事例などについて幅広い視点から研究してきました。研究会はおおむね3ヶ月に1度の開催で、メンバーが上記の手法、考え方、事例などについて紹介し、メンバー間での議論により研究成果を練り上げていきました。議論したテーマは、「製造データからの因果関係発見に向けて:分散不均一性と変数グループについて」、「トレードオフの関係にある因子に対するロバスト設計の実験計画とその指導」、「平均二乗誤差を利用した因果効果に関する感度分析法とその応用」、「分散安定化可能な連関係数」、「ステップワイズ式 D分離変数探索の提案」、「確率対応法と過飽和計画」、「離散変数の因果推論モデルと計算代数」など多岐にわたっています。また、JSQC研究発表会や品質誌をはじめとするさまざまな学術雑誌をとおして、研究成果を報告しました。
4-5-3. 商品開発プロセス研究会(主査:椿 広計 31名)
(一社)品質工学会との共同研究活動を実施し、顧客価値創造の上流工程プロセスの開発(WG1)、創造性と効率性を両立した技術開発プロセスの研究(WG2)、損失関数の新事業プロセス評価への提供研究の3つのWGあるいはその下に設けられたSub-WGによる研究会活動(WG3)を毎月1回のペースで行いました。2025年3月27日には、JSQC第183回シンポジウム(東日本)「新たな市場を拓く商品開発プロセスの3つの視点」では3WGの研究成果を発表し、経営学分野の専門家、海外で品質工学を展開する専門家などと意見交換を行うパネル討論も実施しました。
4-6. サービスエクセレンス部会/生産革新部会(部会長:木内 正光 57名)
サービスエクセレンス/生産革新部会は、サービスと生産に携わる幅広い職域を網羅する側面に加えて、各職域が求める課題を部会名に示し、課題の達成に向けて定期的に知識共有会などを開催しています。そして、課題達成の原動力と位置付けるDX(Digital Transformation)は両部会の共通課題であり、コトづくりとして包括的にとらえて調査研究を行うために、合同で取り組みを進めています。
第54年度は、「顧客価値づくりの実装事例・フレームワーク」「AI時代の製品サービスシステムによる顧客価値づくり」にフォーカスして、知識共有会、およびワークショップを以下の通り開催しました。
【知識共有会】
・生活者行動ビッグデータによる新たな顧客体験の創出(2024年11月)
・サービスエクセレンス国際規格の整備状況と実装挑戦事例(2025年7月)
・ドローンの標準化から見た日本における標準化活動の課題(2025年9月)
【ワークショップ】
・ビジネスモデルに「“個客体験”価値」を組み込むには(2024年10月)
・ビジネスモデルに「循環価値」を組み込むには(2024年10月)
また、「サービスエクセレンスのフレームワーク」の開発と普及を目的として、研究メンバーを選抜し、調査研究活動を進めています。
今後は、「サービスエクセレンスのフレームワーク」の論文化、普及、実装事例収集を重点課題として、「未来志向の顧客価値づくり」の体系化を志向します。
4-6-1. サービスのQ計画研究会(主査:安井 清一 17名)
第54年度も第53年度に引き続き、サービスの質に関する新たな展開を模索するため、サービスエクセレンス部会が主催する知識共有会にて情報収集活動を行い、その情報を分析し、サービスエクセレンスを実現するために必要な考え方、テクニック、道具を整理しました。本研究会の一部のメンバーは、ISO/TC312のメンバーでもあり、日本から積極的に意見を出しており、ISO/TC312が作成しているISの改訂等に、主体的に関わっています。
4-7. 医療の質・安全部会(部会長:梶原 千里 94名)
今年度の研究活動は、QMS-H研究会との共同研究、医療QMS監査研究会、医療経営の総合的「質」研究会の3研究会で、医療の質マネジメントの方法論に関する研究を進めました。また、医療の質マネジメント基礎講座は、昨年度と同様にオンデマンドコンテンツの提供により開講しました。
(1)QMS-H研究会との共同研究
例年開催している最終成果報告シンポジウムは、2025年3月8日に、早稲田大学での現地開催とオンラインでの配信によるハイブリッドで開催しました。テーマは「医療QMSの維持・継承、そして普及へ」とし、医療法人社団東山会調布東山病院の小川聡子氏に「品質管理(方針管理と日常管理)-顧客視点の仕事の見える化(PFC)は人を動かす」と題して講演いただきました。また、2つの共同研究グループの成果発表、参加病院からの重点課題テーマの報告、学生による共同研究テーマの発表を行いました。
QMS-H研究会では、すべての参加病院に経営目標に基づく重点活動を設定してもらい、1年間の活動を進めています。2025年度からは研究会代表を含めた推進体制を一新し、新たなスタートを切りました。2025年5月に第1回研究会を早稲田大学で開催し、9月には、中間報告会を埼玉県の埼玉病院で開催しました。グループ研究活動、将来構想を検討する企画運営委員会も継続中で、2026年3月に開催する最終成果報告シンポジウムで、将来構想を発表する予定です。
(2)医療QMS監査研究会
第54年度も、2ヶ月に1回の頻度で開催しました。昨年度に引き続き、審査・監査における標準質問例の作成を進めています。2024年11月の年次大会研究発表会では、本研究会の企画セッションを行い、適用事例の紹介を含めて成果を発表しました。
(3)医療経営の総合的「質」研究会
第54年度は、月1回の定期ミーティングをハイブリッド(メイン会場:練馬総合病院講堂)で開催しました。検討項目は、①医療アラーム(生体情報モニタ、ナースコール)疲労と不具合対応、②電子カルテの質・安全、③サイバーセキュリティとIT-BCP、④医療AIとAIプラットフォーム、⑤JSQC-Std 62-001:2024根本原因分析(RCA)の指針、⑥TQMによる変化に対応できる・変化を生み出せる組織能力の獲得、⑦非製造職場における小集団改善活動の効果的な運営と推進、⑧人に起因する品質クレームの未然防止活動の難しさと克服策、⑨品質不正の要因・原因、⑩専門職における志向倫理、⑪「医療のTQM七つ道具」(特性要因図、FMEA、 まあ、いいか防止メソッド)の検討と見直しなどで、その成果を品質誌、講演会、年次大会研究発表会で発表しました。
(4)医療の質マネジメント基礎講座
アウトリーチ活動の一環として、2024年5月~12月に「医療の質マネジメント基礎講座」を、オンデマンド教材を提供する形で開講しました。今年度も個人で受講する個人プランと、同じ勤務先であれば開講期間内は人数無制限で視聴できる団体プランの2種類の受講形式で提供しました。また、一部の演習科目については、集合形式で開催しました。2025年も5月~12月で開講中です。
4-8. ソフトウェア部会(部会長:茨木 陽介 60名)
ソフトウェア部会は、20年弱にわたり活動を継続しており、ソフトウェア品質や開発に関する多様な知見を蓄積してきました。これまでに「ソフトウェア開発における暗黙知の形式知化」「要件定義書における表現方法の研究」「ローコード開発」など、現場の課題解決に直結するテーマを研究してきました。第54年度は、以下の活動を行いました。
・生成AIを中心とした勉強会・議論
「AIリスクアセスメント ガイドブック」(当学会AI品質アジャイルガバナンス研究会 編)を題材に、Web会議形式の勉強会を開始しました。
前半はガイドブックの内容をもとにしたプレゼンテーション、後半はそれを踏まえ、企業実務や大学教育における様々なAI活用事例を中心に議論・情報交換を行い、理解を深めました。
さらに「特別回」として、佐藤孝司先生に、「VUCA時代のモダンソフトウェア品質保証を考える~AIシステムやモダンWebシステムの品質保証はどうあるべきか~」をテーマに2回に渡り解説いただきました。最新の技術動向であるAI・モダンWeb開発と従来型システム開発における品質保証の考え方の違いを整理し、AI時代の品質保証の在り方を議論しました。
・対面での情報交換
通常はWeb形式で開催している部会に加え、対面形式の情報交換会も実施し、部会員同士の交流・親睦を行いました。
・関連行事への協賛・後援
他団体との連携を図り、ソフトウェア開発関連の行事に協賛・後援を行いました。
4-9. 管理技術部会(部会長:金子 雅明 93名)
54年度も53年度と同様な活動を実施しました。具体的な実施事項は以下のとおりです。また、本年度をもって部会を解散することとしました。
(1) 既存WGの継続
WG1では、「品質マネジメントの改善・発展・活用の道」中小企業のQMSモデルの研究、パートⅡ「パフォーマンスを上げるには」と題して活動を実施しました。具体的には、76件の良好事例・改善事例を収集し、それをデータマイニングで分析し、「改善に結びつきやすい着眼点」「工夫次第で改善に結びつく着眼点」「積極的に工夫しないと改善に結びつきがたい活動」に分類し、各活動のポイントを明確にしました。
WG2では 「DX時代における品質保証の仕方の研究」をテーマに挙げています。その目的は、DX時代における品質保証の仕方を研究し、品質保証部の仕事を明確にし、従来の仕組みをアップデートし、実践し、品質コスト低減を目指します。今年は3年目の研究で、3回の会合を実施し、DX品質保証の仕方の全体像と課題を明確化しました。
WG3では、前年度に引き続いて3つのテーマで研究しました。内部監査については、「企業における有効な内部監査のあり方(トップマネジメントの関与を意識して)」として纏め、知識共有勉強会にて発表しました。統合MSについては、各規格の全箇条について比較表を作成し、審査の視点について検討しました。先進的審査については、品質不正防止・組織文化に踏み込む審査などについて検討しました。
(2) 勉強会/情報共有会の導入
今年度も、昨年12月から今年10月末の間に、5回の勉強会を企画し、開催しました。各講演テーマ、講演者と参加者数(参加申込数)は以下の通りです。
・第16回(2024/12/13):「自分たちから始める風土改革」、
三菱電機株式会社 井出 朋 氏、参加申込者 135名
・第17回(2025/4/21):「組織間連携と組織知に注目した品質DXの実現」、
岡山商科大学経営学部 門脇 一彦 氏、参加申込者 132名
・第18回(2025/5/16):「品質不正事案をめぐって:企業倫理(Business Ethics)の観点から」、
慶應義塾大学商学部 梅津 光弘 氏 参加申込者 145名
・第19回(2025/7/7):「企業の継続的発展を支える人材育成」、
村川技術士事務所 村川 賢司 氏、参加申込者 62名
(3) 情報発信
今年度の活動内容は、品質誌の第55巻、第4号の部会研究活動報告で取りまとめ、報告しました。
5. 標準委員会(委員長:山本 渉)
(1)JSQC規格を改正しました。
- JSQC-Std 32-001 日常管理の指針(改正版)
(2)JIS規格を改正しました。
- JIS Q 9024 マネジメントシステムのパフォーマンス改善―継続的改善の手順及び技法の指針(改正版)
(3)新規のJSQC規格の原案作成に取り組みました。
- JSQC-Std 52-001 プロセス保証とリスクマネジメントを統合し、より効果的な取り組みにするための指針
(4)新規作業項目についての検討を行いました。
- JIS Q 9026 マネジメントシステムのパフォーマンス改善―日常管理の指針(改正版)
- JSQC Std 32-001 (E) Guidelines for Daily Management (JSQC-Std 32-001 日常管理の指針の英訳版)(改正版)
(5)制定済みのJSQC規格の見直しを行いました。
- JSQC-Std 31-001 小集団改善活動の指針は、2025年7月に見直しを行い、[継続]を決定しました。
(6)事業委員会提案の学会規格講習会に講師を選定、派遣しました。
6. 学術委員会(委員長:安井 清一)
6-1. 論文誌編集、表彰(学術)小委員会
【論文誌編集】(委員長:安井 清一)
論文誌編集委員会では以下の活動を行いました。
(1) 8月を除き毎月1回の論文誌編集委員会を開催しました。論文誌編集委員会の責任に基づき、査読意見を参考にしながら、編集委員会が掲載の可否を判断してきました。「著者責任」を基本とし、新規性・価値のある主張を含む論文については掲載する方向で進めました。
(2) インドで開催されるANQ Congress 2025にあたり、国際交流委員会の委託を受けて、以下の活動を行いました。
1)JSQCから提出されたすべてのアブストラクト(全21本)に対する審査
2)フルペーパーに対するBest Paper Awardの審査
(3) 51年度に投稿論文審査のスピード化を目指して導入されたEditorial Managerによる投稿受付を継続しました。第54年度の投稿論文審査はすべてEditorial Manager上で行われました。
(4) 国際交流委員会と連携して、ANQ 発表論文を対象とした英文電子ジャーナル(Total Quality Science)の発行を行いました。第54年度はVol.10,No.2を発行しました。論文数は3編でした。
(5) TQSの編集委員会は論文誌編集委員会とは別に存在しますが、投稿論文査読は論文誌編集委員会との連携で行なっています。しかしそのことが外部に対して明確になっておらず、TQSの地位向上も目指して、TQSの組織体制を明示していくことを検討しました。詳細につきましては、継続的に検討を行います。
(6) 品質誌、および、TQSの論文データベースEBSCOhostへの収録について審議しました。第54年度は決定保留とし、今後、収録の利点および欠点を分析することとしました。
(7) 研究発表会の活性化を目的として創設された研究発表会(本部)の優秀発表賞制度への協力を継続しました。
(8) 表1に過去5年間(第50年度~第54年度)の月別投稿論文数を、表2に過去5年(第49年度~第53年度)の投稿区分別採択数を示します。第54年度は審査中のものがありますので、採択数は第49年度から第53年度を示しました。なお、第53年度に投稿され、採否が決定していない論文が1件あるため、今後、第53年度の投稿区分別採択数に変動が生じます。一度却下されたものが再投稿される場合もありますので、単純に採択率を計算することはできませんが、おおむね4割程度が採択されています。
▼表1 過去5年間の月別論文投稿数
| 10月 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 計 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 第50年度 | 0 | 1 | 1 | 2 | 3 | 3 | 1 | 0 | 2 | 0 | 1 | 1 | 15 |
| 第51年度 | 1 | 2 | 1 | 4 | 3 | 1 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 14 |
| 第52年度 | 2 | 3 | 1 | 1 | 0 | 0 | 2 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 11 |
| 第53年度 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 1 | 0 | 1 | 6 |
| 第54年度 | 1 | 1 | 2 | 1 | 2 | 1 | 0 | 1 | 0 | 2 | 0 | 0 | 11 |
▼表2 過去5年間の投稿区分別採択数
| 第49年度 | 第50年度 | 第51年度 | 第52年度 | 第53年度 | 採択率 | ||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 計 | 15 | 18 | 15 | 4 | 14 | 4 | 11 | 6 | 6 | 4 | 42.62% |
| 報文 | 4 | 2 | 2 | 1 | 3 | 1 | 3 | 2 | 4 | 3 | 56.25% |
| 技術ノート | 3 | 0 | 2 | 1 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 14.29% |
| 調査研究論文 | 0 | 1 | 4 | 1 | 0 | 0 | 4 | 3 | 2 | 1 | 60.00% |
| 応用研究論文 | 0 | 0 | 2 | 0 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0.00% |
| 投稿論説 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0.00% |
| 研究速報論文 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 50.00% |
| クオリティレポート | 8 | 5 | 2 | 1 | 4 | 2 | 3 | 1 | 0 | 0 | 52.94% |
| QCサロン | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0.00% |
| レター | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0.00% |
【研究助成】(委員長:川村 大伸)
本事業は学会創立30周年記念事業として第31年度より開始されたものです。助成金額は1件5万円で5件以内。対象者は、日本品質管理学会の正会員もしくは準会員、申請時に35歳以下で大学・研究所・研究機関等において研究活動を行っている者、留学生の場合は日本の大学院に在籍する外国籍の留学生等の要件を満たす者です。本年度は11名の応募があり、研究助成選考内規に則り5名を選考しました。
6-2. 国際交流、学会間交流小委員会(委員長:松浦 峻)
【国際交流】
第54年度の国際委員会では、以下の事業を実施しました。
(1)ANQ Congress 2025への貢献
ANQ(Asian Network for Quality)Congress 2025が、2025年11月3-7日に、Bengaluru、 Indiaにて開催されます。JSQCからはAbstract審査やANQ理事会を通じて開催準備に貢献しています。JSQCからのAbstractの登録件数は、21件です。
(2)ANQの安定的発展のための調整
ANQ理事会が2025年3月にオンラインで開催されました。JSQCは2023-2024年度の議長組織となっており、山田秀JSQC会長がANQ理事会の議長を務めていましたが、3月の理事会にて2025-2026年度に議長組織となるCAQ(China Association for Quality)に無事にバトンタッチいたしました。
(3)英文電子ジャーナルの刊行
英文電子ジャーナルTotal Quality Science(TQS)の10年目の刊行が完了しました。
ANQ CongressにおけるJSQCからの発表論文の内の優れたものに投稿を呼びかけ、さらなる査読を経て、TQSに論文が掲載されています。
(4)海外の品質に関連する学協会とのアライアンスに関する検討
幅広く海外の学協会と交流をもつための具体的方策について継続して検討しています。
【学会間交流】(委員長:下野 僚子)
(1)FMES
第1回代表者会議にて、2024年度末での活動停止、2025年度中の解散が決定しました。JSQCは、2025年度のFMES事務局として、解散に伴う各種調整や手続を進めています。そのなかで「経営工学関連学会における協賛等に関する覚書」を制定しています。
(2)横幹連合関係(委員長:下野 僚子)
2024年12月に、第15回横幹連合コンファレンス(東京科学大学大岡山キャンパス)「多分野連携研究と横断型人材育成」の企画にも協力するとともに、学会を超えた産官学3調査研究会(SDGs、 ELSI、 DX)活動を支援しました。特に、「コトつくり至宝」認定事業が進められており、JSQCが横幹連合「コトつくりコレクション」に登録してきた、「QCサークル」「タグチメソッド」といった日本の品質管理活動に係るコトが至宝候補となっています。
53年度に引き続きJSQCから推薦された椿 広計 会員、下野 僚子 会員、伊藤 誠 会員が連合会長、理事、監事として事業企画、機関誌編集などの任に当たりました。併せて経済産業省「標準化とアカデミア」事業への協力として、調査研究会の立ち上げ等が行われました。
7. ICT支援推進特別委員会(渡辺 喜道)
日本品質管理学会のICT対応推進体制を整え、以下の項目を検討しました。
- 会員データベースサーバの移行とセキュリティ強化対策の実施
- メーリングリストのセキュリティ強化と活用
- JSQCのICTを管理する体制の構築
8. 安全・安心社会技術連携特別委員会(委員長:伊藤 誠)
日本原子力学会(ヒューマン・マシン・システム研究部会)等との共催の「安全・安心のための管理技術と社会環境」ワークショップ(第25回)を、2025年12月に実施すべく準備を進めました。また、自動車事故対策機構等の審議についても引き続き参加・協力し、ISO TC241でも活動し、ISO39001等の普及をめざした活動及び関連する企画開発を行っています。
9. TQE(問題解決力向上の為の初等中等統計教育)特別委員会(委員長:鈴木 和幸)
新たな学習指導要領の鍵となる“次世代への問題解決教育”、“情報・ICT・AI世代への教育”、“産官学の連携”にむけて、オンラインによる活発な議論を継続し、種々のシンポジウム・ワークショップ等にて情報発信を行い、生徒・子供たち自らが主体性を持って行動し、人に優しく、社会に貢献し、人間的成長を図るべく、本委員会として下記の活動を行いました。
(1)これまでの日本の品質管理界が培ってきた主体的・協働的な科学的問題解決の知を結集し、問題解決プロセスの確立とともに、新たな学習指導要領の定着に向けて、議論を継続し委員メンバーが組織的にかつ自発的に以下の企画・講演への全面的な寄与・協力を通して情報発信を行いました:
① 2024年10月5日:本委員会主催「第11回科学技術教育フォーラム」を統計数理研究所にてHybrid開催し、「子供たちの未来を拓く学校創り」なるテーマにて科学的問題解決教育に関連する講演とパネル討論、ならびに成城中学校・成城高等学校 前校長 栗原 卯田子先生よりの「子供たちの未来と学びの創造」の特別講演を行いました。
② 2024年12月14日(土)・15日(日):第15回横幹連合コンファレンス(於 東京科学大学)にて本委員会による企画セッションを設け「科学的問題解決法と横断型人材育成ー全教科・全教師・産官学連携による問題解決教育ー」を主題とする4つの講演とパネル討論を行い、情報を発信しました。
③ 2025年2月28日・3月1日:日本統計学会統計教育分科会等主催の「第 22 回 統計・データサイエンス教育の方法論ワークショップ―デジタル人材育成を視野に入れた統計・データサイエンス教育を考える―新学習指導要領を見据えた生成 AI や探究学習を活用した統計・データサイエンス教育における文理横断・文理融合教育の展開―」への共催と竹内委員・山下委員・林委員が発表を行いました。
④ 2025年5月25日:林委員の企画により、人工知能学会全国大会において、「全国中高生AI・DS探究コンペティション2025」が開催されました。
⑤ 2025年 9月8日:『第36回神奈川県品質管理セミナー』(神奈川県)の企画・講演への全面的な寄与・協力を行いました。
⑥ 2025年9月9日:統計関連学会連合大会において竹内委員・渡辺委員が 企画セッション「生成 AI 時代におけるデータサイエンス教育の展望」を行い、生成 AI 時代における高大連携とデータサイエンス教育の接続などが議論されました。
(2)文科省がすすめるDXハイスクール採択校(高等学校等1、000校程度)への支援を行いました:
DXハイスクールとは、文部科学省が推進する事業で、情報や数学などの教育を重視するカリキュラムを実施し、ICTを活用した探究的な学びを強化する高校を支援するものです。
① データサイエンス、探究的な学び等に関する「DN7によるビッグデータのデータドリブン解析の体験セミナー」の提供(DN7:ビッグデータ向けのデータの分析・可視化手法。
詳細は、 https://data-fun.jimdofree.com/) をご参照下さい。
1-1.「DX時代のビッグデータ分析ツールDN7」の高校生向けセミナー模擬体験と使い方セミナーを2025年8月19日に実施し、18組織26名の先生方が参加されました。セミナー内容に対する満足度は、10点満点中平均8.92点の評価をいただきました。また、授業や課外活動で「データ分析をやってみたいと思う」の設問において「中立的」から「やりたい」側へのシフトが見られ、参加者の関心が高まりました。
1-2.データ活用に関するe-Learning用動画公開
https://www.youtube.com/@Take_the_AP-DN7
②データサイエンス、探究的な学び等に関する補助教材の提供
2-1. 「科学的問題解決法」生徒用教材(講師派遣の可能性も有り)
③ データサイエンス、探究的な学び等に関する
3-1.トヨタ自動車士別試験場の事例動画公開
3-2.データ駆動型社会への講演動画2件の公開
下記URLにて公開: https://suzukilab.wordpress.com/jsqc-tqe/
(3)問題解決高校授業検討WG活動の推進が加速されました:
古谷委員・ 熊井氏・菅生氏を中核とする問題解決高校授業検討WG(2023年5月)を設立し、「生きる力」・「助け合い」・「生きる喜び」を次世代の全国民に与える方法・プロセスである科学的問題解決プロセスと身の回りの問題解決事例を含む副教材の作成・提供を目的に、54年度は下記の活動を行いました。
*2024年度に作成した「探究的な学び」の方法の補助教材」とは別に、生徒が授業で使用する「科学的な問題解決ワークブック」を作成しました。
*補助資料として、パワーポイントで「問題解決概論」の動画を作成、さらにワークブックに基づく指導ガイドも教員用として作成しました。
*これらの教材に基づく授業を愛知県立春日井西高等学校の1年生全7クラスで実施しました:
2025年5月12日~6月9日(計7コマ)
アンケートの回収数は240名。集計結果は以下のとおりです。
・「楽しかった?」:5段階評価で、全体平均:3.65(トップ2比率66.6%)
・「理解度」:全体平均:4.02(トップ2比率82.8%)
・「役立度」:全体平均:4.19(トップ2比率84.9%)
*特に「役立ち度」の評価が高く、全体平均の4.19は、昨年の美和高校の実績4.03を上回る結果となりました。主なコメントとして、「これからの人生でとても役立つ」「自分の人生をかえていける」「モチベーションがとても上がった」「コミュニケーション能力の向上につながる」など、前向きなコメントが多数見られました。
(4)40年度に設立された統計グラフ全国コンクールにおける 日本品質管理学会賞の周知・徹底を図り、その質の向上に努め第72回統計グラフ全国コンクールにおいて日本品質管理学会賞授賞を行ないました(2024年12月)。
