第154回講演会ルポ
フレームワークに囚われないパワートレインアジャイル開発の道程
2025年5月12日(月)に日本品質管理学会第154回(中部支部第65回)講演会がオンラインで開催された。演者は竹内伸一氏(トヨタ自動車(株)/パワートレイン機能・性能開発部 基盤技術開発室)で、スクラム開発、モブプログラミングを用いて、品質保証とスピードアップの両立を実現するアジャイル開発手法についてのご講演であった。ちなみに、筆者は知らなかったのだが、パワートレインとは自動車の原動機~変速機~タイヤの直前までの総称であり、この分野におけるトヨタのアジャイル開発の道程を呈示された。アジャイルとは「すばやい」「柔軟な」という意味と理解しているが、事前準備としてまずチームをつくり、働き方合意、プロダクトゴールの明確化を進め、1~4週間の短いスプリント(開発サイクル)を定め全員でスクラムを組んで実装し、デイリースクラム(毎日のミーティング)を行い、AIを使ったMOBでの開発実践を行っていく。アジャイル開発を機能させるには、リーダー・マネージャーのマインド変革、内外緩衝などを経てアジャイル活動の種々の障害を取り除くなど、言うは易く、実行するのは難しいように筆者には思われたが、トヨタはこれを実装して成果を上げておられる。要求事項の複雑性の高低、技術的複雑性の高低の2軸からつくられるマトリックスで、それぞれの要素から「混沌」「複雑」「やや複雑」「簡単」と分野を分けた場合、アジャイル開発は「複雑」領域に適しているとのこと。
アジャイルチームに参加するスタッフには、心理的安全性の確保が必要で、Humility(自らの能力の限界、脆弱性を認める)→Respect&Collaboration(率直に意見交換・学び合う・相互信頼を高める)→Growth(自分自身であり続け、負担感なく自己成長を続ける)→Fearless(全体最適・全体発展に向けた挑戦を恐れない)というマインドセットのあり方に言及しておられ、これが重要なポイントかと思われた。
齊藤 雅也(総合犬山中央病院)
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