私の提言 DX時代に品質管理を学ぶ意味
東京理科大学 石垣 綾
現在、私が専門としているのは経営工学(生産システム工学)であります。経営工学においては、2000年当初まではQC、IE(Industrial Engineering)、OR(Operations Research)の3つが基礎技術となっており、それぞれの技術を発展させつつ、新たな技術を開発することが我々研究者の使命だと考えておりました。しかし、この数十年で情報技術が大きく発展し、⼀つの学問領域では解決できない問題に対し、その枠を越えた科学と技術の新しい領域が生まれ、新たな価値が創造される時代になりました。それとともに、QC、IE、ORという言葉が、AI(Artificial Intelligence)、DX(Digital Transformation)、データサイエンスなどといった言葉に置き換えられ、基礎技術であったものが概念に変化していったように思われます。だからこそ、今見直されるべきものは基礎技術であり、改めてQC、IE、ORが見直され、その必要性が強く示されるべきであると考えます。
品質管理は管理技術の⼀つであり、製品やサービスを作り出すための仕組みや活動を決定するものになります。例えば、需要予測を行う際、機械学習など最新の情報技術を使用することで精度の高い予測が可能になるかもしれません。しかし、現実の社会は複雑であり、多くの不確実性を持っていることから、100%予測を当てることは困難です。そのような環境において需要予測をもとに意思決定を行う場合、単に予測値を提示するのではなく、その値をもって意思決定を行うことによる妥当性が示され、例え外れたとしても意思決定者にとっての納得感が得られることが、意思決定のためには不可欠であると考えます。これは品質管理での仕組みや活動の決定プロセスそのものであり、QC、IE、ORが基礎技術となり発展していた時代の経営工学では当然のように行われておりました。しかし、多くのデータが氾濫し解析される時代になったことで、科学や技術の発展と現場に乖離が生まれているように感じることが多くなっております。
だからこそ、自身がより一層品質管理を学び、深く関わっていくことには大きな意味があるのであり、品質管理の基礎理念はそのままに、新たな価値を創造できればと考えております。
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