第135回クオリティトークルポ
MTシステムの探究

 「幸福な家庭はどれも似たものだが、不幸な家庭はそれぞれに不幸である」
 2023年9月19日(火)第135回クオリティトーク「MTシステムの探求」と題して、早稲田大学 教授の永田靖氏の講演で、約5年ぶりにこの言葉を聞いた。
 当時、私は中部品質管理学会の中部品質工学研究会と計装研究会の品質工学専門部会(北九州品質工学研究会)に属し研鑽しながら、MT法を活用していた時期であった。
 しかし、その後の機械学習手法ブームに伴い社内外の推進者として、異常検知手法の一つである「1クラスSVM」と対比する手法としてしか関われていなかった。
 実務での活用が疎かになった理由はいくつかあるが、最大の理由は100次元を超えるのビックデータ領域では、球面集中と言われる現象が発生し、平均的な事象である単位空間という概念がなくなるからである。また理論だけでなく、数十次元でも良品条件を主成分分析したら複数の群が観測された事例や、混合ガウス分布で20群に分かれた事例などを間接的に経験したからである。
 従来、モノづくりの通常の事象は5MEが管理された安定した状態であれば、多次元であっても分布は1つの群となる。つまり単位空間が存在するという神話が崩れた瞬間であった。
 しかし、改めて考えると、変数が増えるとゴミも増える。本当に目的に対して重要な変数はそれほど多くないはずであり、きちんと固有技術で重要な変数だけに絞って、多重共線性を回避して、シンプルな管理するのが、本来の管理の姿であり、これを実現するのが技術者としての腕の見せ所だと改めて思った。
 また、今回紹介された、高次元の分類手法RT法、多重共線性を回避したt法いずれも、ビックデータの世界でも十分通用する手法であると改めて感じ、もう一度学び直し、機械学習手法と対比しながら活用してみたい。
 最後に、MTシステムなど、品質工学を生み出した田口玄一博士の先見性には脱帽であり、その目的である「社会の自由の総和の拡大(人間は自由度の高い源流の仕事に集中すべき@則尾解釈)」という言葉で締め括りたい。

則尾 新一(トヨタ自動車九州(株))

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