第128回クオリティトーク ルポ
若手品質管理屋の目-品質管理の現場事例レポートとこれからの品質管理-

 2022年3月25日(金)第128回クオリティトークがリモートで開催され、首記のテーマでトヨタ自動車(株)高岡・堤品質管理部の小茂田氏が興味深い講演をされました。多くの質問が飛びかう刺激的で有意義なクオリティトークでした。
 氏はスーパーサイエンス・ハイスクール指定高校在学中に米国に研修で滞在した折に日本製品が溢れる状況を目の当りにして、「日本製品が”reasonable”な理由を学ぶ」ために経営システム工学科のある東京工業大学へ進学します。3年生の時に有名な伊奈製陶のタイル実験の講義に興味を持ち宮川教授の研究室に進みます。
 最初の話題は検査ラインでヘッドランプの高さを調整範囲に入るように調整する事例です。ばらつきの理論値と重回帰分析結果の回帰係数の違いに気づき、「測定誤差があると偏回帰係数は過小に推定される」ことを数理的に解明されました。2番目の話題は圧力センサの検査工程です。強制駆動後に圧力センサ出力が規定時間以内に既定値まで上がればOKという検査でNGが発生する問題を、既定値に達するまでの時間のばらつきに注目して管理図を書くことで解決されました。
 氏は「対象の種類/分布を聞く」ことの重要性を指摘されます。ばらつきを考慮せずに平均だけで分析する悪しき習慣や、前処理で分布を全く考慮しないことに対する警鐘です。「統計的に面白そうなネタは現場にたくさんある」という卓見にも考えさせられます。これは「問題を問題として認識」されず放置された結果ですが、氏の発見能力の高さは「異国から見えた日本の姿に驚き」、「検査データ活用に疑問を感じる」点にも現れています。氏の講演のなかで私は次の3点が大切だと思いました。第1に問題を発見に外部の視点が有効であること。裏返すと生え抜きには問題発見が難しいということ。第2は問題を解決するデータサイエンス力。「既存の手法を使い倒す」力ですが、問題発見なくして役立ちません。第3に日常業務から切り離して小茂田氏を現場に放り込むマネジメント力です。

細島 章(東林コンサルティング)

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