会長就任にあたって

早稲田大学 棟近 雅彦

 2018年11月より、本学会の会長を務めることになりました。48、49年度の2年間、どうぞよろしくお願いいたします。

  11月に開催された年次大会での新会長講演では、「学会の改革と50周年に向けて」と題して、今後の方針についてお話しいたしました。その中で、

  • 中長期計画“QSHIN2020”の達成に向けて47年度に開始した活動を軌道に乗せる
  • 組織改革が進められており、48年度は東日本、西日本支部を活性化する
  • 博士課程進学者・若手研究者が大きく減少している、英語論文しか業績として評価されないなど、学界で対応すべき重要な課題がある
  • まもなく学会創立50周年であり、記念事業の準備を開始する

ことなどを述べさせていただきました。英語論文の問題は、論文誌/学会誌の在り方検討WGを立ち上げ、対応策の検討を始めています。

 さて、創立50周年に関連して、講演の中で学会名称変更の検討を始めることを表明しました。まだ、変えることを決定したわけではありません。学会員の方から広くご意見を伺い、理事会でも議論して、50周年を迎えるまでには決定したいと思っています。

 学会名称変更は、今回初めて検討するわけではありません。約20年前にも議論されました。ちょうど、日科技連がTQM宣言を出し、TQCからTQMへ呼称変更した頃です。当時、会員の方々へのアンケートも行い、変更する・しないが五分五分であったことから、そのときは変更しないことにしました。

 今回名称変更を再度取り上げたのは、単に50周年の記念に何かやらねば、ということではありません。昨年4月の品質誌の巻頭言で、「品質と顧客価値創造」と題して、現在の「品質」という言葉の使われ方に対して問題提起をさせていただきました。その要点は、『私の理解は「品質がよい=顧客要求を満たす」ですが、「品質がよい=不具合がないこと」という意味で使われている方が多く、品質の概念がかなり狭くとらえられている』ということを指摘しました。

 その後、とある品質管理のセミナーで講義をする機会があり、参加者に自己紹介を行ってもらいました。そのセミナーでは、品質管理・品質保証部門の方だけでなく、商品開発・企画、生産技術、営業など、いろいろな部門の方が参加されており、TQMが理解されているのだと、喜ばしく思えました。ところが、品質管理・品質保証部門以外の方の自己紹介での発言は、「私は商品開発なので、品質管理とは関係ありませんが・・」、「品質管理がどのような仕事なのか、学んでおこうかと・・」といったことが、次々と出てきました。やはり「品質」あるいは「品質管理」が、非常に狭い意味で理解されていることを再確認させられました。

 本当に「品質管理」の意味を多くの方がそのように理解されているなら、本学会がめざしていることから考えるに、「品質管理学会」という名称はふさわしくないと思っています。「品質学会」あるいは「顧客価値創造学会」とする必要があるかもしれません。50周年を期に、「品質」の意味を会員の方々にも考えていただきたい、議論していただきたい、これが今回名称変更を検討する意図です。

 今後アンケート等を行い、学会員の方のご意見を伺う予定です。多くの意見を寄せていただくとともに、様々な場で議論されることを期待しています。

日本品質管理学会 会長

棟近 雅彦