会長就任にあたって

前田建設工業(株) 小原 好一

 日本品質管理学会(以下、JSQC)は、品質管理の一層の発展と学理の探究を目指して1970年に設立されました。当時の日本は高度経済成長の後期にあり、その原動力である製造業の躍進とともに、「ものづくりの品質向上」は企業の成長戦略の中で重要な位置を占め、経営の質にまで踏み込んだTQM(当時はTQC)は、国際社会からベンチマークされる存在となり、JSQCはその発展に大きく貢献しました。
 しかし、今日の日本企業の経営戦略における「品質」の位置づけは当時から後退し、むしろ製品の質保証に限定されるかの状況を呈しており、取り組みそのものも弱くなり、活動・学理を自律的に支える中堅・若手の中核人財が産学ともに枯渇するリスクも高まっています。
 もちろん製造業は、「ものづくりの品質」が経営基盤として必要であることに変わりはなく、近年繰り返されている品質管理にかかわる不祥事は企業経営を揺るがす問題であり課題は山積しています。ただし、それだけでの成長は難しくなりつつあり、「顧客や社会が求める価値を実現するマネジメントのクオリティ向上」が重要課題となっています。また、製造業を中心に培ったTQMは、「サービス産業などへの普及」を視野に入れながらも道半ばとなっています。
 さらに、新たな産業革命と称される「IoTの普及」に伴い、ものがインターネットでつながると、ビックデータから顧客ニーズを入手し、顧客価値に結びつけることができる企業が勝ち残り、それに伴い品質管理のしくみやツールはさらなる進化を遂げると考えられます。そして、IoTがプラットフォームとなる社会では「オープンイノベーションによる価値共創」が活性化し、コラボレーションが進むに従って業界の壁が次第に取り払われていくとともに、顧客との共創活動も進展していくと想定されます。
 以上の点から、これからのクオリティを考える上での課題、即ちJSQCが進むべき道は、ものづくり・サービス・ICTなどのエクセレンスを包含したマネジメントのクオリティ向上を目指し、オープンイノベーションによる価値共創を産学が一体となって推進することに他ならないと確信しております。
 JSQCは第44年度に、第50年度(2020年)を完成年度とする中長期計画QSHIN2020を取りまとめました。第47年度はQSHIN2020にもとづき、大久保尚武第44年度会長、椿広計第45~46年度会長のリーダーシップのもとに創生された改革プランを実行に移す、PDCAの「Do」の段階にあると認識しております。
 JSQC会員の皆様方におかれましては、JSQCのさらなるチャレンジに向けて、格段のご支援、ご協力を衷心よりお願い申し上げる次第です。
 なお、第47期の最重点とする活動は、以下の通りといたします。

  1. JSQCの強みの育成:ものづくり×サービス×ICT+標準化(近年繰り返されている品質不祥事の再発防止に向けた取り組み、産業界の壁を超えた共創価値づくりに役立つツールの開発、マネジメントシステム・用語などの標準化推進、ICTのさらなる活用)
  2. クオリティに関する横串機能:JAQ 設立に向けた連携協議
  3. ガバナンス強化:各エリアの中長期的なコミュニティ強化を視野に入れた企画推進、事業の企画~広報~学会誌掲載の連携推進、生産革新・サービスエクセレンスの部会化、公益化推進