会長就任にあたって

積水化学工業(株) 相談役 大久保尚武

 11月29日開催の一般社団法人 日本品質管理学会 第44回通常総会において、第44年度の会長に選任いただきました。伝統ある日本品質管理学会の会長が、はたして 私ごとき者に務まるのかどうか心中忸怩たるものがありますが、学会員諸氏のお力添えをいただき、無事務めあげることができますよう努力致しますので、どうぞよろしくお願い致します。
 私はこれまで企業経営者として、品質管理学の力を享受(ことばを換えれば利用)する立場でしたが、実際にその力は莫大なものでした。当社(積水化学工業)は1979年にデミング賞を受賞しましたが、それを機に会社文化ははっきり変わりました。また2003年には、社外監査役として元当会々長の狩野紀昭氏をお迎えしましたが(現在は長田洋氏が継承)、品質管理学が経営判断の「品質向上」にも十分有効であることが証明されていると思います。
 このように品質管理学の持つ潜在能力はたいへんなものであるにも拘わらず、率直な私の印象を申し上げると、その「真価」は日本の産業界に残念ながら十分には浸透していないと思います。
 それは何故なのだろう、というのが私の問題意識です。原因は間違いなく学界、産業界の双方にあるのでしょう。産業界、特に製造業はこの20年間の停滞で、己の体質革新の本道に手をつけることを怠ったのかもしれません。生産拠点を海外の新興国に移すことで精一杯だった、と言ったら言い過ぎでしょうか。
 しかし、私は昨年 副会長に就任してから品質管理学会の方にはどんな問題があるのだろうかと考え、何人かの理事、代議員の方にお集まりいただき、お話をお聴きしながら検討してまいりました。その結論として、これから解決すべきこと、より一層磨き上げていくもの、そういった全てを踏まえて、学会創立50周年の2020年に向け、長期計画をまとめあげることが、まず必要であろうと考えました。

 長期計画のスローガンは「日本品質管理学会 SHINKA!」です。SHINKAという言葉はいくつかの意味を持っています。これまでの学理をさらに深めていくという意味の「深化」、未来へ向けた新しい価値を見つけ出していくという「新化」、そしてこれからも大きく変化していく社会への対応と発展に寄与し続けていくための「進化」です。これらの活動を具体化した長期計画の中で、是非われわれ日本品質管理学会としての あるべき姿=真価(Future value)を明確にし、そこに到達する道筋を考えていきたいと思っています。
 そのためには産官学の連携はもちろんのこと、学会員のみなさまのご協力が不可欠です。これまで以上のご支援をよろしくお願い致します。