日本品質管理学会会員の倫理的行動のための指針
平成16年10月30日
社団法人日本品質管理学会
Ⅰ.指針制定の趣旨
Ⅰ-1 目的
日本品質管理学会会員(以下会員という)は,品質管理専門家としての行動が社会に与える影響に鑑み,社会からの期待並びに社会的責任を強く自覚しなければならない。会員の適正な行動実践のために,特に遵守すべき点を本指針として定める。
Ⅰ-2 適用範囲
会員は,品質管理の研究,実践,教育,普及に携わる専門家として,その行動に当たっては,以下の倫理条項に従うことを誓約する。
この指針は,品質管理専門家個人の良心に基づく行動,発言を妨げるものではない。しかし,その場合にも自己の行動・発言を他人が,品質管理専門家としての公的行動・発言と,会員個人の良心に基づく行動・発言なのかを峻別できるように配慮することが望ましい。
Ⅱ.倫理条項
Ⅱ-1 本文
(ア) | 会員は,専門家としての行為を適法,倫理的かつ誠実なものとすることを通じ,品質管理専門職の社会的意義,評価を高めるように努力する。 |
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(イ) | 会員は,公共の安全・福祉増進に寄与できる機会には,優先的に自身の専門性と技量を発揮する。 |
(ウ) | 会員は,専門職として職務に誠実に取り組み,社会に対して欺瞞的・背信的行為を行わない。このため自らの職務における専門的判断や専門職としての行動が,多様な利害関係の相克によって偏りが生じる事態の予防に心掛ける。 |
(エ) | 会員は,自身の行為に対する責任を受入れ,他人の貢献を正当に評価する。 |
(オ) | 会員の専門家として責任を持つ行動・職務・発言は,原則として自身の専門領域に限定する。 |
(カ) | 会員が,専門家としての主張,推論を公表する際には,第三者が検証可能な情報に基づいて,客観的かつ真実に即した方法で行う。 |
Ⅱ-2 細則
(1) | 情報発信に関して 会員による情報発信については,倫理条項本文(カ)の原則に基づいたものでなければならない。具体的には,次のことに配慮する。①会員は,専門家としての発言で公衆を欺いてはならない。特に,専門家としての職務を遂行するために,他の会員,同僚,部下,学生などを虚偽,口実,脅迫,買収等によって誘導してはならない。②会員は,他の専門家の専門的意見開示の権利を侵害してはならない。また,自身あるいは知人が利害関係者である状況に関して,専門的意見を開示する場合には,その利害関係に関する事実関係を予め表明しなければならない。また,その利害関係に起因する専門的意見の妥協は一切許されない。③会員は,専門職の権限として知り得た事実,情報,データを提供者の事前の同意なしに公表したり利用したりしない。ただし,法的に開示を要求された場合には,この限りではない。④会員は,他人が行った仕事が自身に帰属するような発言,記述,あるいは暗示を行わない。⑤会員の専門家としての主張は,その発表日時を明確に記録すると共に,参考とした関連情報を引用する。 | |
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(2) | 専門職として 倫理条項本文(ア),(ウ),(オ)については,具体的に次のように行動する。①会員は,特定個人及び公衆の,現在あるいは将来の生命,財産,人格,その他当然認められるべき権利あるいは環境が,毀誉される事態をその専門技能によって回避するように努めると共に,専門家としてこのような事態が生じることを予期した場合には,対処権限のある組織に迅速に通知する。②会員は,自己の専門知識に鑑み,妥当性を持たない文書の著者あるいは承認者にならない。また,自身が専門性あるいは,十分な責任を負っていない文書に対しては専門家としての署名を行わない。③会員は,社会に対して欺瞞的あるいは不誠実な活動を行っていると判断した個人,組織に対する一切の協力を行わない。④会員の専門家としての行動は,職務の受益者に対する奉仕を基調とした誠実なものとする。⑤会員は,品質管理の理解,適切な応用,社会への影響をより良いものにするよう努める。⑥会員は,自身の専門的職務業績によってのみ,専門職としての名声を築き,他の専門家との不公平な競争を行わない。⑦会員は,他の会員,同僚,部下,学生などの専門家としての発展を助力し,その評判,将来性,実務,研究活動,雇用を悪意または虚偽をもって,直接,間接に妨害しない。⑧会員は,専門家として適格であると判断される領域においてのみ,専門家としての職務を引き受ける。⑨会員は,自身の専門家としての能力を維持あるいは改善することに努める。 | |
(3) | 個人として 倫理条項本文(イ),(エ)に関連して行動を倫理的にするためには,以下について配慮することが必要である。①会員は,すべての人を人種,宗教,性,身心障害,年齢,出身国,学歴,職歴のような要素とは無関係に公平に扱い,互いにその自由意志,能力,貢献を尊重する。②会員は,自身の行為に対する正当な批判を求め,受け入れる。また,自身の行為に誤りあるいは不完全さを認めた場合には,それを是正する。この是正行為が,他人の批判に基づく場合にはその貢献を明らかにするべく適切な処置を行う。 |
引用文献
本綱領の作成に当たっては,Harris,C.E., Pritchard, M.S. and Rabins, M.J.(1995)Engineering Ethics, Concepts and Cases, Wadsworth(日本技術士協会訳(1998)丸善)の付録にある,全米プロフェッショナル・エンジニア協会,アメリカ化学技術者協会,IEEE,アメリカ土木学会,アメリカ機械学会,工学技術教育認定委員会の倫理規定翻訳のコア・パートをそのままの形あるいは変形して引用している。