第50年度 品質技術賞(2021年11月13日)

DXがもたらす産業構造の変化と、周回遅れの日本が取り組むべき課題

  浅羽 登志也 氏 ((株)IIJイノベーションインスティテュート)

著者:浅羽 登志也

「品質」Vol.50 , No.4  pp.6-11(2020)

[選考理由]
 本稿では、ディジタルトランスフォーメーション(DX)が産業構造にもたらす大きな変化と、そのような潮流の中で日本の企業が取り組むべき課題を論じている。
 現代社会に生きる私たちは、ディジタル化が進む中で社会に起こっている変革を分かった気になっている。
 しかし、実はその本質を真に正しく理解できてはいないことが多い。だからこそ、日本は「周回遅れ」になってしまっている。
 本稿の著者は、インターネットがもたらした変革の歴史を通して、DXの本質、すなわち、サイバーファーストの発想で業務のプロセスを組み直し直し、これまでには不可能であった新たな価値を創造することを指摘している。また、DXを推進するにあたり、変化を乗り越えるための両利きの経営、それを支える組織変革の在り方を論じている。DXを進めていく企業の経営者、技術者が参考とすべき視点、事例が多く示されており、高い有用性が認められる。
 以上のことから、本論文は50年度に品質誌に掲載された論文等の中でも優秀であり、実務者への貢献も大きいことから、品質技術賞を授与する。

第49年度 品質技術賞

『非直交実験の実務への適用』

  松 本 哲 夫 氏(ユニチカ(株))

著者:松本 哲夫/芦髙 勇気

「品質」Vol.49, No.4 pp.63-70(2019)

[選考理由]
 本論文では,非直交計画を採用しても実験効率や検出力の意味で実務上大きな問題はないようにしうることを,数値的な検討を通じて示している.一般に,直交表を用いる場合,取り扱う因子の数が増えるにしたがって,実験回数が多くなってしまう.直交表の利用は,本来,要因配置実験に比べて実験数を減らせるものであるが,実務上はさらに実験数を減らしたいというニーズがある.
 本論文は,そのニーズに対して,一部追加法・一部拡大法,意図的省略法を適用した場合の実験効率をいくつかの場合について求め,さらにそれらの手法の検出力を評価したものである.本論文の成果は,交互作用がある場合でも同様の結果が得られると期待される.今後,本分析の理論的裏付けが充実すれば,実務家に広く推奨すべき方法論として確立していくことも期待される.
 以上のことから,本論文は49年度に品質誌に掲載された論文等の中でも学術的に優秀であり,実務者への貢献も大きいことから,品質技術賞を授与する.

第48年度 品質技術賞

『カンファレンス行列と2水準ノイズを用いた直交計画によるパラメータ設計』
   森  輝 雄 氏(森技術士事務所)
著者:森 輝雄/貞松 伊鶴/松浦 峻/田中 研太郎
「品質」Vol.49, No.3 pp.66-78(2019)

[選考理由]
 本研究では、3水準のカンファレンス行列をもとに、制御因子とノイズ因子の応答モデルを想定した、パラメータ設計のための実験計画を構成している。また、一般化逆行列を用いた重回帰分析によって得られる各効果の最良線形不偏推定量を用いたパラメータ設計の方法を提案している.その方法を、金属溶融成型機、半導体BGAといった事例に適用し、従来の方法に比べてばらつきの低減と実験回数の低減を同時に達成できうることを示している。
 これは、今日の企業、とくに、開発リードタイムが早まり、また投下できるリソースが大きく制限されている企業にとって有用な手法であると考えられる。今後、繰り返し実験が困難な自動車などの輸送機械、金属加工機械の設備研究などへの適用事例を増やし、その効果が検証されることが期待される。
 以上のことから、本論文は48年度に品質誌に掲載された論文等の中でも学術的に優秀であり、実務者への貢献も大きいことから,品質技術賞を授与する。