第50年度事業計画

1.運営方針

自 2020年(令和2年) 10月 1日

至 2021年(令和3年)  9月30日

 第49年度の取組みは,新型コロナウィルスの感染拡大により,多くの行事が中止または延期を余儀なくされるなど,大きな影響を受けました.さらに,会員の高齢化に伴い,退会者数が新規入会者数を上回るなど,会員数の減少が続いています.
 一方で,ICTの活用などにより,会議や研究会,講演会などのオンライン化が促進された年度でもありました.全国の会員に向けて,一斉にサービスを提供できる手応えが得られたことは,これからの取組みにも大いに反映できると期待できます.また,ホームページが来年早々にはリニューアルされる予定で,この活用による会員サービス向上にも期待が寄せられているところです.
 このような背景を踏まえて,第50年度(50期)の運営方針をまとめるのに当たり,基本的な考え方を明確にしました.すなわち,今後も引き続き諸課題の解決に向けた取組みを継続しますが,50期の1年で完結できることは限られ,重点実施事項については概ね向こう3年程度の中期計画を立案することが相当ではないかと判断しました.そこで,2020年8月に行われた理事,代議員の選挙結果に基づき50期の体制が内定した後,中計検討WGを立ち上げて検討を開始しました.また,中期計画をまとめるためには,今一度,当学会のミッション,ビジョンを明確にして会員各位と改めて共有することも重要との判断に至りました.
 このような経緯から作成されました,「ミッション,ビジョン(案)」と「重点実施事項3ヶ年中期計画(案)」を以下に記載します.尚,これらはあくまでも原案ですので,今後新体制のもと会員各位のご意見も踏まえた上で,正式にまとめて会員各位と共有していく予定です.

ミッション,ビジョン(案)

■ ミッション(原点となる存在意義)

  日本品質管理学会(JSQC)は,会員相互の絶え間ない研鑽・学びをとおして,製品・サービスの質,仕事の質,生活の質などあらゆるQuality(質)向上に役立つ技術・手法を研究・開発し,その成果をすべての分野に普及させることによって人と組織,社会の幸福に貢献します.

■ ビジョン(目指すゴール)

  日本品質管理学会(JSQC)は,以下に掲げる「Q(質)による3つの貢献」をとおして豊かでサステナブルな日本を創り上げ,我が国の生産性・国際競争力を再び世界トップに押し上げるとともに,その成果を以って国際社会の発展に貢献することを目指します.

  ・Qの確保:財産である「ニッポンの品質管理」の更なる磨き上げ

         科学的方法論による品質管理の活用確立,品質保証への産学連携強化,

         信頼性・安全性の一層の追究 等

  ・Qの展開:培った財産を「新分野,新応用」に展開

         サービス業・農業・行政等々の新たな分野に向けた応用手法の開発 等

  ・Qの創造:過去の延長上ではない「Qの新天地」を創造

         デジタル化社会,更にアフターデジタルに向けた科学的方法論の創造,

         持続可能社会実現に貢献する新発想のQの創造 等

【第50年度 重点実施事項 (案)】*3ヶ年中期計画は,別紙に掲載します

課題対策の方向性具体的な施策(重点実施事項)
会員数の増加A)会員・賛助会員にとって魅力ある学会づくり(新会員の入会促進)(新会員の入会促進)
1 「学理の追究と社会実装」を実践するための機(場)の提供
2.学会誌の変革による学理の追究の促進
    (他学会からの研究参画 など)
3.賛助会員の役に立つ情報提供の推進
    (JSQC規格・選書,小冊子など)
「品質管理」「問題解決」の内容を
世の中に幅広く訴求
(製品品質,安全,コンプライアンスなどの
不祥事の再発防止)
B)品質管理の正しい理解と普及の促進による,安心で豊かな社会の実現への貢献1.全国の商工会,銀行などとの連携による,品質管理啓発活動の推進
     (50期はキャラバン隊活動として展開)
2.支部活動の強化
     (運営体制強化,賛助会員数増,等)
3.問題解決(PDCA,SDCA)の初等中等高等教育への導入促進
4.JAQ(Japan Association for Quality)設立に向けた取組みの推進
5.国際化の推進
情報発信の充実C)新ホームページの充実・運用改善1.新HP活用による情報発信の充実
2.新HP活用による事務作業の効率化

 第50期は当学会創設50年という節目の年になります.多くの先輩諸氏や関係各位のご尽力に依り,日本の発展に大きな貢献を果たしてこられました.こうした輝かしい伝統を受け継いで,これからも世の中から必要とされる存在であり続けられるように取り組んで参る所存です.会員各位のご理解ご協力をよろしくお願い申し上げます.

2.総合企画委員会

上記の重点実施事項3ヶ年中期計画の進捗管理の場と位置づけて,概ね3ヶ月に1回の頻度で開催を計画します.

3.庶務委員会

 庶務委員会では,本会の運営に関する庶務的事項を全て担当します.主な計画は次の通りです.

(1) 庶務全般

学会運営が円滑に進むよう,諸般の活動を進めていきます.

(2) 選挙管理

本年度も第45年度から導入したウェブによる選挙を継続して実施いたします.

(3)会員サービス

・会員資格審査,入退会審査について,各種規定に基づき実施します.
・学会員になることのメリットを広く発信し,これまで以上に会員数増加にむけて活動を促進していきます.
・第47年度から導入された会員区分である正会員(シニア),正会員(永世シニア)に関する普及に努めます.
・第47年度に定めたJSQCフェローの認定基準に基づき,認定者数の更なる拡大に向けて庶務委員会が中心となって候補者のリストアップを進めます.

(4)品質管理推進功労賞選考

日本品質管理学会品質管理推進功労賞の選考に関する運営を,各種規定に基づき実施します.

(5)会計

会計に関連する業務を,各種規定に基づき実施します.

(6)規程の制定,改定

会計に関連する業務を,各種規定に基づき実施します.

(7)学会HP

50周年記念事業の一環として,本学会HPの大幅刷新を行い,その運用方法を確立します.

(8)品質管理の正しい理解の普及

第462回理事会で学会名称変更に関して,今回は名称変更を行わないことが確認されましたが,引き続き品質管理の正しい理解の普及に向けて必要な対応策を検討します.

(9)50周年事業

50周年事業における各WGでの活動を計画的に進め,実施いたします.

4.活動委員会(事業を含む)

【研究開発】

 中長期計画,および,本年度の運営方針に基づき,以下の活動を行います.

①例年通り,既存の研究会における研究活動予算を検討し,配分します.
②第49年度に引き続き,将来を見据えた研究分野の検討と新たな計画研究会の設置を検討します.
③第49年度と同様に,研究会の研究成果や活動内容を学会誌へ掲載する活動を継続します.
④事業・広報委員会と連携しながら,研究発表会や年次大会においても,研究会の研究成果や活動内容の発表を促進していきます.
⑤第49年度に引き続き,研究活動とその成果を学会員へ広く伝え,学会員が学会の真価を享受できるようにするため,各支部とも連携を深め,学会活動委員会の実現を目指します.

【学会誌編集】

 第50年度も,例年どおり,年4冊の学会誌『品質』を発刊します.
 現在の編集方針,すなわち,学会での活動をタイムリーに会員の皆様にお届けすることを重視し,今年度も,その編集方針に従って活動してまいります.特に,研究会報告や部会報告を中心に編集していきます.また,支部活動に基づく招待論説を掲載していきます.さらに,チュートリアルセミナーやクオリティトークの講演概要,学会主催の講演会での講演内容,若手研究者の研究紹介などを掲載していく予定です.
 編集方針をより明確にし,学会誌の意義と魅力を高め,学会活動を的確に伝えることができるような紙面づくりを目指していきます.

【事業・広報】

 第50年度は,コロナの感染がまだ十分に終息していない想定から,年次大会,研究発表会各1回の他に,講演会を2回,シンポジウムを2回,事業見学会を2回,クォリティトークを4回計画しています.また,当学会の特徴のひとつである学会規格の講習会は学会賛助会員のテクノファにおいて講習会を開催開始していることから,2回開催し,規格の周知を図ります.

表.第50年度事業計画(中部支部、関西支部の事業を除く)

年次大会研究発表会講演会シンポジウム
(各研究会より)
JSQC規格
講習会
事業所
見学会
Qトーク
1122344

【JSQC選書】

 「JSQC選書=品質管理に関する,非専門家向け高度教養講座」の地位を確立すべく,引き続き,品質立国日本再生に寄与するテーマで良質の書籍の発刊を目指します.
 並行して,第50年度以降の選書テーマ候補を充実させ,時宜を得た発行計画の立案を行います.その際,JSQC選書既刊本に対する読者の声の収集・把握に努め,今後のテーマ選定等に活かします.必要があれば,テーマ選定から発刊までの一連のプロセスを改善します.書籍の内容と購入者の傾向や関係を探ることも考えます.
 また,JSQC選書の知名度向上に向け,有効な広報策について検討・実践を試みます.

4-1.東日本支部

 第49年度に引き続き,関東エリアのコミュニティ強化を目指して,活動委員会(事業・広報)が中心となり,クオリティトーク・事業所見学会などを企画・開催します.
 また,東北以北のコミュニティ強化についても昨年度と同様に,活動委員会(事業・広報)が中心となり,宮城・山形地区での継続開催,および同地区以外の行事開催について検討をさらに進めます.
 ただし,しばらくはコロナ禍の影響を注視しながら,オンライン化を考慮していかざるを得ません.

4-2.中部支部

(1) 中部支部の基本方針
 1) 本部の方針に基づいた活動を展開します.
 2) 研究会活動を軸として,産学連携による会員の相互研鑽の場を提供するとともに,品質管理に関する先進的な情報の発信に努めます.
 3) 品質管理の考え方・手法を,諸団体との連携により,様々な業種・職種に発信して,中部地区の成長に貢献します.特に,中小企業への発信に努めます.
 4) 研究発表会を核とした行事の充実に努めます.


【中部支部のスローガン】
コロナ禍に負けないよう品質管理の普及・浸透で,問題解決力を高めて,日本の生産性向上(成長)に貢献しよう!

(2) 行事の具体的な内容


 1) 研究会
 研究会活動を支部活動の中心と位置づけて,次世代を見据えた若手研究者の活性化と内容の更なる充実を図ります.
 ・東海地区の若手研究会(主査:松田 眞一)[6回/年]
 ・北陸地区の若手研究会(主査:中野 真)[発表会:1回/年]
 ・中部医療の質管理研究会(主査:岩砂 智丈)[6回/年]
 ・中部支部産学連携研究会(主査:川村 大伸)[6回/年]


 2) 研究発表会[1回/年]
 会員の多岐にわたるニーズに応えた幅広い研究・開発テーマで,かつ多くの企業・組織に展開できる発表の場を提供します.
 ・学会の新しい研究成果と一般も含めた産業界,医療界からの具体的実践事例を発表.
 ・中部支部の4つの研究会から,活動成果を発表.
 ・研究発表会終了後に特別講演を実施.


 3) シンポジウム(基調講演とパネル討論会)[1回/年]
 産学界の関心が高く,一般からも多くの参加者を得られる基本方針に沿ったテーマを選定し企画します.


 4) 講演会[1~2回/年]
 会員の関心の高いテーマによる講演会を開催する(原則は会員限定(賛助会員を含む)での開催)


 5)事業所見学会[1~2回/年]
 サービス業を含む先端的な企業や組織を訪問し,会員(幹事を含む)の研鑽の場の提供を企画します.


 6)幹事研修会[2回/年]
 幹事間の意思疎通を図り,中部支部の活動・運営に対する議論・相互研鑽ができる研修を行います.また内1回は北陸地区の幹事の協力を得て北陸の企業訪問を行います.

(3) 中部支部の運営について
 1)上記行事の企画は,幹事会で行います.幹事会は2ヶ月に1回程度を目処にweb会議を併用して開催します.開催日,場所の調整は,事務局(日本規格協会名古屋支部)にて行います.幹事会には中部支部在住の理事,代議員も参画し,支部運営にあたります.


 2)行事の運営は,行事マニュアルに沿って進めるとともに,PDCAを回し,効果的かつ効率的な運営を行います.


 3)代議員を中心として,各事業の企画を充実させることに今後重点をおいて進めます.

4-3.関西支部

(1)運営方針

 日本企業は,世界経済の中で勝ち残っていくために,さまざまな構造改革や将来の成長戦略構築に頭を悩ませています.また,低炭素社会の実現に向けて,太陽光発電や電気自動車など,革新的な技術開発が求められる時代となっています.今後,日本企業がさらに成長し,グローバル競争に勝ち残っていくためには,日本企業元来の強みである「技術開発力」「品質力」ならびに,それらの元となる「人間力」がますます重要となってきます.


 このような状況の中,これまで日本の文化や産業を支えてきた“モノづくり”“コトづくり”とともに“人間力”の基盤を引き続き維持・発展させていくことが必要であり,このとき,品質管理の果たすべき役割はますます大きくなっています.


 関西支部では,品質力,組織・マネジメント力,現場力,顧客対応力の向上策について具体的に提言することにより品質管理のレベル向上に貢献することを目的に,事業活動のさらなる活性化を図ります.


 また,昨今の感染症の拡大による社会情勢の変化や,IT化に対応し,リモートでの参加も可能になるような取り組みを積極的に行い,より多くの会員が満足できる活動を展開していきます.

(2)事業内容

 1)研究会

   ①ダイナミックロバストマネジメント研究会

 Society5.0に対応した新価値創出と,これまで研究を行ってきた「科学的先手管理七つ道具(SE7)」とISO MS の品質,環境規格の特長,意図,SDGsとを俯瞰的に融合して組織の文化へのマッチング,コミュニケーション,KPI等を明確にする.従来,企業経営に有効なマネジメントシステムとして実地で検証されてきた日本的なTQMと高度な先進技術(IoTなど)との相互関係,ヒューマンエラー,モノづくりのレベルアップ策等に関して,品質管理学会が培ってきた数々のQC技術をベースにし,グローバル化時代におけるダイナミックな問題解決アプローチを体系化します.

 2)研究発表会 【 1回 】

 産業界や社会のニーズと学におけるシーズをマッチさせ,産学で相互に研鑽できる発表会を企画します.

 3)シンポジウム 【 1回 】

 社会の要求・注目しているテーマを選定し,活発な議論のできるシンポジウムを企画します.

 4)講演会 【 1回 】

 “モノづくり”“コトづくり”の発展に寄与できる魅力ある講演会を企画します.

 5)事業所見学会 【 2回 】

 特色のある事業所の見学を企画します.

 6)QCサロン 【 5回 】

 会員サービスの充実を図るため,講話とざっくばらんな質疑応答ができるサロンを企画します.

(3)その他

 1)関西支部企画運営委員会の実施

 支部運営に関する各種の検討を行い,支部事業の活性化を図ります.中国四国九州地区の会員に対しても支部事業の案内を行い,支部事業への積極的な参加を働きかけます.

 2)データ管理の質的向上と定点観測

 支部活動に関する各種データ収集・管理を継続的に行い,支部活動の現状把握や活性化に役立てます.

4-4.西日本支部

 西日本エリアのコミュニティ強化を目指し,事業委員会と連携し,引き続き,事業所見学会及びJSQC規格講習会などを企画,実施します.
 また,コミュニティ拡大のため,エリア内各地域での行事の企画,実施についても, 積極的に検討を進めます.

4-5.生産革新部会(サービスエクセレンス部会と合同開催)

 社会大変革の原動力となるIoE(Internet of Everything),AIなどの進展は,生産革新,エクセレントサービスの共通課題であり,「コトづくり」として包括的にとらえて調査研究を進めるべく,生産革新部会/サービスエクセレンス部会は,前年度に引き続き合同で取り組みを進めます.第50年度は,「社会の劇的な変化に適応するためのカルチャー変革(DXを前提とする)」を重点とし,以下について実施します.


(1) 知識共有会:DXに伴うヒトとAIの共生,DX実装事例(現場),重点課題に合致する 標準化事例(従業員満足,シェアリングエコノミー),働き方改革の実践事例等をテーマ候補とする.


(2)(仮)若手分科会:「社会の劇的な変化に適応するためのカルチャー変革(DXを前提とする)」について,自らが考えていること,JSQCへの要望等,未来志向で意見交換する場を設置する.


(3) 成果の発信:「社会の劇的な変化に適応するためのカルチャー変革(DXを前提とする)」をテーマとした特集を学会誌で組み,書籍化への布石とする.また,学会の枠を超えた成果の発信:訴求すべき対象者を明確にして,発信の場を調査する.


(4) 調査研究:エクセレントサービスのユースケース(ツール開発含む)の調査研究を進め,フレームワークを構築する.また,フレームワークを他業種に展開する場として,サービスQ計画研究会を活用するとともに,必要に応じてワークショップを立ち上げる.

4-5-1.信頼性・安全性計画研究会

 本計画研究会は,第36年度から四期にわたり,製品安全を中心とした信頼性・安全性の作り込み技術や,社会インフラを中心とする維持管理やBCMの問題に関して議論を続けてきました.今後も引き続き,品質関連情報の有効活用および的確な組織的意思決定の実現を目指して,下記のボトムアップとトッブダウンの両方のアプローチから,未然防止による信頼 性・安全性管理の体系化を図る実施事項に取り組みます.

◆信頼性・安全性作りこみ技術(ボトムアップのアプローチ)
1) 新規トラブル未然防止法の高度化
2) 次世代品質・信頼性情報システムの具体化と拡張
3) ハザードに着目した根本原因分析(RCA)の高度化

◆安全・安心を達成するための社会インフラ構築(トップダウンのアプローチ)
1) 持続可能でレジリエントな体制作り
2) 品質管理を重視する組織文化の樹立と継承
3) ユーザ・メーカ・行政の三者協業による信頼性・安全性確保のための方法論

◆体系化のための実施事項
1) 品質不正への提言活動
2) 信頼性・安全性問題の事例調査
3) ベスト/ベタープラクティスの収集と分析
4) 今後予想される品質管理問題と対応の提起
5) 委員の個別調査・研究活動の報告


 本計画研究会は,第50年度より第五期,15年目の活動に入ります.第四期には製造業を中心とする品質不正への提言を総括することにより,研究会当初の目的に対する一つの答えを示しました.また,新規社会インフラとしてのドローンや自動車自動運転等への展開は,別途準備会が発足して計画研究へのスタートが切られることとなりました.すなわち,前者が基盤戦略への活動,後者が革新戦略への活動に分化したとも考えられます.

 一方,明日の革新は将来の基盤へ昇華すべく設計されるものであり,持続可能性やレジリエンスを実現するプロトコルを実装することが肝要です.そこで本計画研究会は,これまでの活動の集大成として,2050年における社会システムにおいて安全・安心を実現するための要素,方法論を提言することを最終期の活動として実施いたします.生産革新部会/サービスエクセレンス部会における知識共有会に参加し,その中での上記要素についての議論と提言を行ってまいります.

4-5-2.テクノメトリックス研究会

 テクノメトリックス研究会では,「統計的手法を中核とした品質管理手法の開発・普及」を主軸として,「数理科学志向型・計算機志向型の統計的品質管理手法」の開発を目指します.具体的には,メンバーが興味あるテーマを持ち寄り,それについて議論を行い,品質管理の手法として確立できるようにします.多変量解析法を中心に,実験計画法,統計的手法の理論的側面,解析事例,解析手順などさまざまな視点から研究をします.また,昨年度同様,おおむね3ヶ月に1度の開催を考えています.そして,研究成果については,JSQC研究発表会,年次大会や品質誌などで積極的に発表していく予定です.

4-5-3.商品開発プロセス研究会

 3年目にあたる今年度は,引き続き,ネット会議で機動性が増したことを活かし,3つのWGによる研究会をそれぞれ毎月1回のペースで行います.特に,12月に全体会議でのすり合わせを行い4月以降産業界に対する共同研究を呼び掛ける予定です.今年度は6月に品質工学会年次大会,11月に品質管理学会年次大会で両学会共催の企画セッションを開催し,研究の進捗を報告する予定です.

4-6.サービスエクセレンス部会(生産革新部会と合同開催)

 社会大変革の原動力となるIoE(Internet of Everything),AIなどの進展は,生産革新,エクセレントサービスの共通課題であり,「コトづくり」として包括的にとらえて調査研究を進めるべく,生産革新部会/サービスエクセレンス部会は,前年度に引き続き合同で取り組みを進めます.第50年度は,「社会の劇的な変化に適応するためのカルチャー変革(DXを前提とする)」を重点とし,以下について実施します.

(1) 知識共有会:DXに伴うヒトとAIの共生,DX実装事例(現場),重点課題に合致する標準化事例(従業員満足,シェアリングエコノミー),働き方改革の実践事例等をテーマ候補とする.

(2)(仮)若手分科会:「社会の劇的な変化に適応するためのカルチャー変革(DXを前提とする)」について,自らが考えていること,JSQCへの要望等,未来志向で意見交換する場を設置する.

(3) 成果の発信:「社会の劇的な変化に適応するためのカルチャー変革(DXを前提とする)」をテーマとした特集を学会誌で組み,書籍化への布石とする.また,学会の枠を超えた成果の発信:訴求すべき対象者を明確にして,発信の場を調査する.

(4) 調査研究:エクセレントサービスのユースケース(ツール開発含む)の調査研究を進め,フレームワークを構築する.また,フレームワークを他業種に展開する場として,サービスのQ計画研究会を活用するとともに,必要に応じてワークショップを立ち上げる.

4-6-1.サービスのQ計画研究会

 昨年度に実施したサービスエクセレンス部会が主催する知識共有会を通じた情報収集に基づき,本年度はエクセレントサービスのユースケースの調査研究を行います.サービスサイエンス及び総合的品質管理の観点からユースケースを分析し,エクセレントサービスを提供するためのツールの開発,エクセレントサービスを設計・提供・管理のためのフレームワークの構築を目指します.

4-7.医療の質・安全部会

 第50年度も,これまでと同様に,3研究会を中心に医療QMSに関する研究を進めてまいりますが,医療従事者には新型コロナへの対応を優先的に行っていただくことにし,可能なところからオンラインでの研究会を開催していく予定です.

(1) QMS-H研究会との共同研究

 今年度は,継続課題である文書管理,中間管理職教育とともに,新型コロナ対応での課題を重点テーマとし取り上げます.既に情報交換会を行い,課題やとられた対策に関する情報収集を行いました.2021年5月の研究発表会では,速報として発表したいと思います.例年行っている最終成果報告シンポジウムは,2021年2月27日を予定していますが,開催形態とともに,内容は今後検討予定です.

(2) 医療QMS監査研究会

 今年度の上半期(2021年3月まで)は中止とし,2021年4月再開に向けて準備を進めて参ります.

(3) 医療経営の総合的「質」研究会

  医療経営の総合的「質」研究会  新たに,新型コロナウイル感染症パンデミックに関する「医療と社会と法」に関して集中的に検討します.また,以下の課題について引き続き取り組みます.

・共有可能なクリニカルパスウエイの日本版の検討
・FHIR(Fast Healthcare Interoperability Resources)に関する課題の整理
・医療機器の安全管理体制
・医療に関する質管理ツールの具体的な現場での活用方法の周知と医療事故の原因究明の手段としての根本原因分析の普及
・医療安全管理の病院間の相互評価技術の構築
・院内事故調査制度に対する質専門家の係わり方の検討
・院内医療事故調査制度と医師法第21条の異状死届出義務に関する課題の整理と無過失補償制度のあり方の検討

(4) 医療の質マネジメント基礎講座

 「医療の質マネジメント基礎講座」は,2020年10月より,オンデマンドコンテンツの提供により,開講します.2020年度内には講座を終了する予定ですので,オンラインでの実施形態について反省会を開催し,今後の講座の形態について検討します.その結果をもとに,2021年度の実施形態,実施時期を決定します.

4-8.ソフトウェア部会

 第50年度は前年度に引き続き,以下のことを行います.新型コロナウイルスの感染防止策を徹底しながら,遠隔会議,各種オンライン・ツールの活用を含め,活動の立て直しを図ります.

・ソフトウェアのカテゴリーごとの品質管理方法論の構築
前年度までに,品質管理の方法論や適用手法などの違いという観点からソフトウェアの分類を行いました.それを踏まえ,それぞれの分類ごとに,作業グループを構成して,より深い議論を進め,活発な活動を行います.

・メーリングリストやSNSを利用した情報交換及び情報発信
メーリングリストや各種オンライン・ツールを利用した部会メンバー間の情報交換をより積極的に行うとともに,ソフトウェア部会の活動を理解していただくために,SNSを利用した情報発信を行います.

・ソフトウェア開発関連の行事に積極的に協賛・後援
他団体の開催するソフトウェア開発関連の各種行事に協賛・後援することで,部会メンバーの便宜を図るとともに,ソフトウェア部会活動の活性化を図ります.

4-9.管理技術部会

 第50年度も引き続き第49年度と同様な体制(4つのWGと全体会合の開催)で活動を進めます.特に,対面での会合が難しいと考えられるので,オンライン会議システムを活用し,本部会研究活動を活性化させていく予定です.各WGの活動計画は次の通りです.

・WG1:品質マネジメントの改善・発展・活用の道~中小企業のQMSモデルの研究~
 第49年度に選定した研究課題「作業標準類の整備」について深耕を行います.また,研究テーマ「品質マネジメントの改善・発展・活用の道~中小企業のQMSモデルの研究~」に相応しいテーマを探索していきたいと考えます.

・WG2:持続的成功のQMSの研究(ISO9004の研究)
 第49年度に引き続き研究活動を行います.3年目の研究活動計画は,顧客や社会のニーズを調査・分析し,組織の強みを活かし,新商品・新サービスの仕組み作りを研究し,3年間の研究結果のまとめを行います.

・WG3:有効な審査のためのツール・技法の研究
 第49年度の研究では,ISO 9001:2015の箇条4及び箇条6.1に着目した審査技法に絞って検討しましたが,第50年度では実際の審査の現場での活用を視野に入れ,組織のマネジメントシステム運営全体を対象とした審査技術及びツールの開発を進めます.まず,組織がISO 9001:2015の規格の意図(組織の状況/利害関係者のニーズを反映した組織の経営戦略・経営方針・経営計画と整合した品質マネジメントシステムの構築・運用ができる)を正しく理解し,その要求事項にいかに対応すべきかについての考え方を提示します.次に認証審査において,組織が規格の意図を理解したうえでシステムを構築し効果的に運用しているかを評価するための審査技法を開発します.

・WG4:経営に寄与するQMSの本質の研究
 研究テーマは第49年度に引き続き,JSQC規格を如何に企業・組織で活用していけるかについて研究を行います.とりわけ,「日常管理,方針管理の手引きの作成」を目標として活動し,4か月に1回のペースでオンライン会議システム等を活用して会合を開催予定です.

5.標準委員会

(1)既発行のJSQC規格の定期見直しをします.
JSQC Std21-001 2020年12月見なおし予定:「プロセス保証の指針」について,改正/ 継続かの検討をします.

(2)JSQC規格のJIS化を推進します.
・JSQC- Std 31-001 小集団改善活動の指針
・JSQC- Std 89-001:2016 “公的統計調査プロセス-指針と要求事項”(原案作成は日本マーケティングリサーチ協会)
・JSQC- Std 41-001「品質管理教育の指針」

(3)事業委員会とのコラボレーションにより学会規格の講習会を開催します.
また,50周年記念品質キャラバンについて協力します.

(4)新規学会規格の取り組みについて,49年度実施アンケートに基づき具体的展開の是非を検討し,ロードマップを作成します.

6.学術委員会

6-1.論文誌編集,表彰(学術)小委員会

【論文誌編集】

(1)従来からの方針を引き継ぎ,論文審査において,査読意見を参考にしつつも論文誌編集委員会の主体的な判断に基づき採択の可否を決定していきます.また,「著者責任」を基本とし,新規性・価値のある主張を含む論文については原則として掲載する方針についても,変更ありません.年間の掲載数10本を目指します.

(2)規定された方法に従って,投稿論文審査の質の向上と迅速化を図っていきます.

(3)国際交流委員会と協力して,ANQ Congress 2021への論文発表を促進します.特に,若手研究者への支援を積極的に行います.

(4)国際交流委員会と連携して,ANQ 発表論文を対象とした英文電子ジャーナル(Total Quality Science)の発行に向けて活動します.第50年度はVol.6 No.1及びNo.2を発行する予定です.

(5)論文掲載には相当なコストがかかるため,学会の財政状況を鑑みますと,論文掲載料の徴収は避けらない状況です.会員の理解を得つつ,引き続き検討します.

(6)学会誌編集委員会と連携して,品質誌の電子ジャーナル化について,J-Stageでの発行形態等に関し,引き続き検討を続けます.

(7)英文電子ジャーナル(Total Quality Science)でのシステムを参考にしながら,品質誌においても,論文審査プロセスの効率化を目指し,電子投稿・審査システム導入に関して,引き続き検討します.

(8)英文電子ジャーナル(Total Quality Science)をインパクトファクター付きのジャーナルにするために,総合企画委員会と連携し,協力します.

(9)昨年度に引き続き,研究発表会の活性化を目的として創設された優秀発表賞制度を継続します.

(10)論文誌編集委員会での審議の実施方法について,効果的な方法を検討し,実施します.

【研究助成】

 第50年度も引き続き若手研究者に対する研究助成を行います.募集要項の主な内容は以下の通りです.助成金額は1件5万円で5件以内.対象者は,日本品質管理学会の正会員もしくは準会員,申請時に35歳以下で大学・研究所・研究機関等において研究活動を行っている者,留学生の場合は日本の大学院に在籍する外国籍の留学生等の要件を満たす者(年齢制限はありません)とします.すでに2回採択された者は選考対象から外し,助成対象は品質管理に対する研究全般およびANQ以外の国際会議での研究発表への旅費支援も含めます.期間は1年間(2020年10月から2021年9月)です.研究成果を品質誌へ投稿,あるいは,研究発表会などで発表することを奨励します.研究期間終了後には研究成果報告書を提出してもらい,当学会誌への投稿,ANQ Congressおよび当学会での研究発表会で発表した場合には,大会名,発表タイトル,要旨集やプロシーディングスのページを記入してもらいます.

6-2.国際交流,学会間交流小委員会

【国際交流】

(1) ANQ 2020への協力
 韓国のソウルで,2020年10月22-23日に,ANQ(Asian Network for Quality)総会の開催が予定されています.大会開催の支援やアドバイスを,JSQCとして継続的に行っていきます.

(2) ANQ 2021への協力
 現時点でANQ2021の開催国・日程は確定しておりません(予定ではシンガポール)が,大会開催の支援やアドバイスを,JSQCとして継続的に行っていきます.

(3) ANQの安定的発展のための調整
 2021年度についてもANQ理事会は2回の開催が予定されています.JSQCとしてANQの発展に積極的に関与し,ANQ-CEC(ANQの品質管理検定委員会),Ishikawa Kano Award委員会には,委員を派遣する予定です.財務委員会では,JSQCが委員長をつとめます.
 2024年に,ANQを日本で開催する可能性があり,JSQC理事会での承諾の元,開催に向けた検討をすすめます.

(4) 英文電子ジャーナルの刊行
 英文電子ジャーナル(Total Quality Science)の刊行の6年目が開始されます.会員ニーズである国際学会発表(ANQ)と,英文電子ジャーナル投稿(TQS)を満たすことができるよいコラボレーションを今後とも継続強化してまいります.

(5) 海外の品質に関連する学協会とのアライアンスに関する具体的な検討
 幅広く海外の学協会と交流をもつための具体的方策について継続して検討します.特に,ANQ関係団体と交流し良い関係を作り,特に若手会員が交流する際の支援ができるようなプログラムを検討します.

【学会間交流】

(1) FMES. 横幹連合
 第50年度も引き続き,FMES代表者会議,FMES/JABEE委員会,FMESシンポジウムに参画し,経営工学関連学会との交流,JABEEの審査活動,FMESシンポジウム等の活動に,中核団体として協力してまいります.

(2) 横幹連合関係  
 1) JSQC会員から横幹連合役員に再任された椿 広計(横幹連合副会長・企画・事業委員会委員長, 統計数理研究所)が横幹連合企画・事業を支援します.特に,Withコロナ時代の多価値観相克に関わる連合加盟の文理融合調査研究会運営を支援します.
 2) コトつくりコレクション(至宝登録事業)については,品質管理活動に関する日本発信)の社会活動,研究成果について,他学会からの評価が高いので「QFD」をコトつくりコレクションへの登録を目指します.

7.安全・安心社会技術連携特別委員会

 日本原子力学会(ヒューマンマシンシステム部会/社会・環境部会)等との共催の安全・安心のための管理技術と社会環境」シンポジウムを,引き続き積極的に推進します.また,自動車事故対策機構等の審議についても引き続き参加・協力していきます.ISO 39001関連についても,認証制度の普及,支援規格の開発などについて引き続き協力していきます.

8.TQE(問題解決力向上の為の初等中等統計教育)特別委員会

 予測困難な社会の変化に対し,どのように社会や人生をより良いものにしていくかという目的を自ら考え,これを解決しうる力(生きる力)を育成する為に,2017年3月31日に,小学校および中学校の学習指導要領,2018年3月30日に高等学校学習指導要領が公示されました.小中学校では算数科・数学科のそれぞれ各学年に共通した4領域の内,1領域に“データの活用”が設けられ,そして高等学校では,数学科に“データ分析”と“統計的な推測”,情報科に“情報とデータサイエンス”が設けられ,現行指導要領に引き続き,小中高一貫の統計的問題解決教育が強化拡充されました.更に,2020年7月17日閣議決定された政府の成長戦略において,各教科等での学習を実社会での課題解決に活かす教科等横断的な教育が推奨され,2020年度までに産学連携や地域連携による好事例を創出・収集し,モデルプランの提示と全国の学校への展開を行うこと,データ活用,データサイエンスを重視した「情報Ⅰ」の入試が2024年度から実施される方向で検討されることが決定しています.
 これを受け,これまでの活動を継承し,以下の活動などにより,新たな教育課程の円滑な実現に向けて協力します.

(1) これまでの日本の品質管理界が培ってきた主体的・協働的な科学的問題解決の知を結集し,新たな学習指導要領の鍵となる“次世代への数学教育”,“情報・ICT・AI世代への教育”,“産官学の連携”にむけて,議論を継続し情報発信を行います.

(2) COVID-19に関する種々のオープンデータを含む公的統計等のデータを活用した問題解決教材を開発し,発信を行います.

(3) 一昨年度実施した,産よりの小中高の問題解決教育への支援の可能性,および小中高からの産学による問題解決教育への支援の必要性の現状把握のためのアンケート結果を踏まえて,必要な支援活動を継続します.

(4) 第40年度に設立された統計グラフ全国コンクールにおける日本品質管理学会賞の周知・徹底を図り,その質の向上に努めます.

(5) 日本統計学会統計教育員会と連携し,Web活用の“TQE問題解決オンラインセミナー”を企画・開催し,新学習指導要領の円滑な実施に向け協力いたします.