アンケートは日科技連賛助会員会社898社の役員クラスの方にお願いし,354社から回答をいただいた.(回答率39.4%)
調査結果をまず企業での経営成果から総括すると,TQMの貢献度は必ずしも充分とはいえないということである.
図1のごとく「コスト・納期」,「品質」に比較して,「売上」や「CS向上」に対する評価は低く,また今後の取組みへの期待との差も大きい.すなわち,高品質・低コストの実現というHowを求めた時代では,TQMの貢献度は高かったが,これからの売上・CS向上のためのWhatを追求する経営に対しては不十分であり,今後の重要な課題といえる.
|
図1 経営成果の比較(3段階評価の平均値) |
次に,TQMの取組みについてしくみと実践から評価したのが図2であり,次のような問題点があげられる.(1)全項目でしくみに対し,実践が伴っていない.(2)「ビジョン・戦略」に対し,「達成度評価・管理のサイクル」が低い.(3)「創造的風土」のばらつきが大きくやや低い.(4)「CS・技術開発」が低い.(5)特に「SQC」は最も評価が低い.さらに業種別では,サービス業の回答比率が全体の8%とTQMへの関心が低く,しくみ・実践の評価も機械などの製造業と比べ低いという結果になった.また自由意見でも,例えば「ビジョンに対し,具体的戦略や目標へのブレークダウンが不十分」,「お客様の意見を前向きに受けとめる活動が不十分」など,データを裏付ける意見が得られた.
|
図2 TQMのしくみと実践の比較(5段階評価の平均値) |
■ 現在,日本の企業は国際化に向けた大きな潮流に乗り遅れまいと必死になっている状況である.
毎日のように新聞やテレビで国際標準,ISOに関連するニュースが報道されている.中でも目に付くのは,品質および環境に関するISOマネジメントシステムのことである.
これらのマネジメントシステムは,日本企業ではTQM活動の一環として,品質保証委員会,環境管理委員会などの横断的組織を作って計画的に改善目標を掲げて取り組んできた活動のしくみを発展的にまとめたものである.
この他にも安全衛生委員会,設備管理委員会,教育訓練委員会などが組織されてしくみの改善を行って,企業体質の強化を図ってきたのである.
これらのマネジメントシステムを標準化して共有化しようという動きにおいて欧米に先を越されたのでないかと思う.
日本では,このような活動は各社独自に行うものと考えて,標準化しようという機運が起こらなかったのであろう.
しかしながら,方針管理,QC工程表などといった優れた管理手法が広く普及しているのは,デミング賞を授賞した先進企業の開発したものが公開されて後進の企業にも活用できるようになっているデミング賞授賞制度のしくみのよいところであると考えている.
この他にJIS規格の中にも「帳票の設計基準」のように利用価値の高いものがあることなど,既存の手法の活用も忘れてはならない.
ISOマネジメントシステムの普及に伴なって,これらのシステムの活用レベルを上げるために,よいシステム,よい手法を創出する魅力のあるTQM活動が切望されている.
このような時,日本品質管理学会で,「21世紀への提言」を宣言し,「経営科学技術の世界標準化の推進」など7つの項目に取り組んでいることを皆さんに知っていただき,この活動に対するご理解とご支援を願って私の提言とさせていただきます.