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学会誌「品質」
JSQCニューズ
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JSQCニューズ 1999年2月 No.210

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トピックス「感性工学と品質管理」
私の提言「日本のTQCの再興」

・PDF版はこちらをクリックしてください → news210.pdf


■ トピックス  感性工学と品質管理

感性工学研究会 高 須  久

日本品質管理学会の中に感性工学研究会が発足して2年近い時が経過した.
この研究会では感性工学というものがどの様に論議されているかについて少し述べたい.

感性について

感性とは基本的には認識能力の一つで「対象を受動的に直感力で受け止める」基礎能力であり,理性・悟性に対応する言葉である. ところが「感性の商品」とか「感性の品質」と言う場合には,やや異なった説明が必要であろう.

我々が消費者の立場として商品を選択する場合,理論的思(理性)による品質評価と感情的思(感性)による嗜好(又はイメージ)による評価との2面を選択基準としている. この場合の感性とは「感覚+感情」と意味付けるのが一般的である. これを品質要素の一つとするには抵抗感のある人も一部にはあるが,感性の商品となると,この感情的思による評価のウエイトが大きくなったものであろう. すなわち,使い易い,故障しない,安全であるなどといった理論的品質評価よりは「好ましい,イメージが良い」などといった感性評価が商品選択の大きな要因となる.

感性と官能について
人間の有する五官(生理学的には通常言われている5感の他に内臓感覚,深部感覚を含めた7感が正しい)をもって評価する品質評価は官能評価として重要な評価因子である. それは直ちに「甘いものが好き」とか「演歌は嫌い」といった嗜好につながる. この嗜好が官能評価なのか感性評価なのかは非常に微妙なところがある. 味覚に対する嗜好は単純に官能評価で表されるが,音楽は聴覚による評価よりはそこから生ずる感情(又は情緒)による評価である. 味覚であっても官能から感性に変化する場合もある. 例えば,コーヒーに味覚(旨い,まずい)の評価を求めるよりは「ほっとする,休息する」といった感情的価値(精神的安息感)を求めている場合もある.
工学的アプローチ
1998年10月,日本感性工学会が発足し,本年3月には第一回総会とシンポジウムが開催される運びとなっている. 本学会の設立趣意書の中で,感性工学とは「人が示す『感覚から心理』までの反応(=感性)に対して,工学の面から幅広くアプローチし,人間と人工環境の調和をめざして人間の感性を学際的に研修するとともに,その応用として,人にやさしい素材,分かりやすく使い易い製品,安心出来る生活空間の開発を支援するもの」でなければならない,としている.

感性工学の第一人者である長町三生氏によると,感性工学とは「人間が持つ感性やイメージを具体的にものとして実現するための設計レベルに翻訳する技術」と定義している. そのための工学的アプローチとして「製品コンセプトを設定した後にそのコンセプトをさらに細かいコンセプトに展開するうちにその製品設計上の物理特性に落し込む方法」と「生活者が抱いている製品に対するイメージや感性を具体的な設計品質要素に翻訳する方法」の2種を提案している.

一方,“感性をどのように捉え数値化するか”にアプローチするために(1)生理的測定,(2)SD尺度,(3)行動や態度の観察記録,(4)官能検査手法など多くの試みがなされている. そしてこれらのデータをどの様にしてモデル化するかも大きな研究テーマとなっている. さもないと感性にかかわるニーズを商品の企画・開発に取り込む事が出来ない.

心理学的アプローチ
心理学では感性を“印象を受け入れる能力”とし,特定の印象を持ってしまった気持ちや意図を重視するえ方がある. モノの作り手から顧客への意図の伝達が共通概念によるコミュニケーションでは数値による品質評価であり,イメージコミュニケーションが感性による品質評価であろうとしている.

以上,感性工学研究に関するいくつかの流れを紹介したが,「感性」という言葉一つを取ってみても確定的ではなく,多くの論点が残されている. 市場に受け入れられる商品であるためには「感性の品質」が高いウエイトを持つことがあり,研究の進展が望まれる.

 

■ 私の提言  日本のTQCの再興

アラコ(株)代表取締役会長 関谷 節郎

新しいTQM構築の活動

経営における価値観のパラダイムシフト,MB賞に代表される活力あるアメリカを見る時,日本のTQMの再構築の必要に迫られ,日科技連につくられた「TQM委員会」から「TQM宣言」の小冊子('97年1月),「TQM−21世紀の総合『質』経営」('98年6月)が出版された. この間,QCシンポジウムでも数回にわたって新しいTQMについて討議が重ねられた.
1998年12月のQCシンポジウムでの出来事
近年,企業のトップの参加が低迷していることに危機感を持たれた組織委員主担当の前田又兵衞 経団連副会長が今回,第67回を思い切った構成で企画・開催された. 特別講演:小林陽太郎氏,基調講演:豊田章一郎氏,発表者:佐々木元 日本電気副社長,唐津一教授,飯塚悦功教授といった豪華メンバーで構成された. 1日目の夜のこと,2日目の朝一番で講演される豊田章一郎氏は夕方から降り始めた大雪で零時過ぎのご到着になった. この日の昼にアルゼンチンの大統領を豊田市でお迎えする予定,雪はますます激しくなる,結局,そのまま豊田市へ向かわれることになった. 車にチェーンを着けている間に豊田会長は,まだ談話室に残っておられた参加者の方々と日本の品質管理の方向についての熱い思いを語りあわれた. 空白になった講演は,前田主担当が豊田会長の経団連での講演「日本の魅力造をめざして」をテープで紹介,主題の基調講演は,組織委員のひとりでもあるトヨタ自動車の高橋副社長が原稿の代読をされた. 内容は,後日発行の「品質管理誌」にゆずることにして,大雪の中を深夜に箱根まで来られ,徹夜で豊田に向かわれた豊田会長の姿勢,そして,不測の事態を見事にやり遂げられた組織委員の対処はこの講演を一層意義深いものにした.
提言
日本の中の心ある一部の方の熱意を国全体に広げてゆくためには,今,企業の関心はどこにあるのかを改めて明確にする,情報・通信,環境,世界的規模での統合・買収・共通化等々に対し,新しいTQMで何が出来るか? アメリカは,日本の元気のいい企業は何をしているかを解りやすい形で説明し,その効用を具体的にアッピールしてゆくことが欠かせないと思っている.

 


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