標準化を進めることの必要性は今更言うまでもないが,ISO 9000をはじめとするマネジメントシステム規格などの出現で標準化が注目を浴びている.
当会は標準化の普及推進団体であるが,設立当初から良い品質のものを合理的に作り出す技術である品質管理の普及にも力を注いできた.それは国の施策であるJISマーク表示認定制度の有効性を実現するためでもあった.幸いこの施策は大きな成果を上げ品質立国日本の実現に一翼を果たした.しかしながら,ここまでの品質はあくまでも製品品質のことである.標準化の対象にマネジメントシステムが含まれる時代においては,品質は単に製品だけでなく,技術の質,開発の質,管理の質更には経営の質までもが品質管理の対象であるとするのは自然の成り行きであろう.それは川下から川上へと品質管理の重点が移ってきたことの延長線上にあると思うからである.
対象が拡がり重点が移っているとはいえ従来品の価値がなくなったということではない.TQMの全体像や新分野に関する議論は活発であるが,既存技術を着実に実施するための議論も必要と思う.キリスト教の世界で意味のあるのは聖書そのもの以上に聖書の中の一節一節である.TQMもそれを構成する要素に意味があるといえよう.新技術開発と用途開発を粘り強く実行していかなければ時々刻々変わる企業それぞれの課題を適切に解決したいというニーズに応えていくことはできない.当会はTQMを普及する立場としてマーケットインを実践するためにも,企業ニーズに対応する形でTQMの普及推進を実践したいと考えている.
そのためには時代にあったTQMの要素技術(企業活動の種々の局面における「質」を適切に確保する方法論)の早急な開発と適用事例の作成が望まれる.当会ではこのような研究開発活動を支援することを目的として今年度から「外部研究委託」を実施しており,その成果を期待している.
TQMはけしてブームになるようなものではないし,TQMで儲けるといったものでもない.空気のように通常は意識しない存在であってもよいと思う.