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学会誌「品質」
JSQCニューズ
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JSQCニューズ 1998年3月 No.203

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巻頭言「日本経営品質賞を受賞して」

私の提言「数字のススメ」

・PDF版はこちらをクリックしてください → news203.pdf


■ 巻頭言  日本経営品質賞を受賞して

千葉夷隅ゴルフクラブ 総支配人 加藤 重正
「CSフォーラム21」との出合い

平成4年に入り,近隣のゴルフ場は入場者の延び悩みから利用料金の値下げを初める現象が顕著になってきました. この時期私共では,客単価の減少はあるものの入場者の減少は小さく,運営的には問題ではありませんでした. しかしながら私共にもその影響が表れることは時間の問題であると感じていました. そして今までの方針の「サービス改善・向上」を基本理念とした仕組みがこのままでよいのか,見直し対処するためのベストプラクティスを深く求めておりました. このような時日本経営品質賞の準備段階であった「CSフォーラム21」と出会うチャンスがありました. 異業種の製造業が中心であるこの研究会は,私共にとって現状の仕組みを見直すには沢山のヒントがあり,「異業種に学べ」ということを改めて実感をしました.

お客様の選択基準とサービス基本コンセプト

私共千葉夷隅ゴルフクラブは,オイルショックが残っている昭和52年に造成に入り54年にオープンをいたしました. 当時は全国的に開発規則が厳しく,立地条件の良い所でゴルフ場を造ることは困難でした. お客様がゴルフ場を選ぶ基準は,第1に立地条件の良さ,第2にサービスの良し悪しと言われています. 私共が位置する千葉県の大多喜町は,東京から90q圏内とはいうものの道路事情が悪く,第1選択基準には当てはまりませんでした. そこで当所より第2選択基準であるサービスの内容を充実して,お客様に満足をしていただき,継続的な利用を基本コンセプトとして運営をしてまいりました. お客様が満足をするということは,いかに「事前期待」を上回る,「実績評価」を得るかということです. サービスの評価はお客様側の権利であって,決して提供者側の権利ではありません. そしてこの評価基準はお客様の価値観や利用目的によって変化をします. また提供されるサービスそのものも,無形であってクレームが見えない・生産がお客様の前でなされまったなし・人に依存する為に品質にバラツキが発生するといった特性を持っております. つまりサービスとは不明瞭で不安定な要素があります.

サービスの提供の考え方

不明瞭で確実なサービスを提供し,お客様に満足していただくために私共では対象になるお客様の期待を把握・分析して「機能的サービス」「情緒的サービス」に分けてサービスの提供を考えています. 「機能的サービス」はある・なしといった働きの面を中心としており,サービスの具体的事項がマニュアルとして徹底されています. 「情緒的サービス」はやり方の良し悪しといった人的な対応の面を中心としています.

お客様の評価は,「機能的サービス」が欠如すると苦情が発生し,「情緒的サービス」については,主観的評価の為要望という形で発生します. 従って,まず社員全員が「機能的サービス」を完全に提供できるように徹底し,次にお客様の個々の期待に応える「情緒的サービス」を提供できるようにすることを大切にしています.

組織風土と教育

サービスの提供は,第一線の社員によって提供されます.従って「仕事をやらされている」のではなく「自分達で仕事をリードしてやっていく」という自主性を尊重したマインドの育成が重要です. 自主性を醸成するための組織風土は「逆さまのピラミッド」「クロスファンクショナルな業務」「全員参加の改善活動」「ダイレクト・コミュニケーション」といったことを基本スキルとして進めています. そして,これらの実現に大切なことが教育の面です.「機能的なサービス」を徹底する為にマニュアルを中心としたO・J・Tを基本とし,off・J・T・SDとお客様にご満足いただけることに繁がる生きた教育がなされています.
まとめ

以上の内容がお客様に展開されて「全社員お客様窓口」をモットーにアンケートを中心としたお客様の評価を大切にして,新たな課題を発見しお客様と共に歩んできたことが受賞につながったと考えます. これからは,お客様を中心においてお客様のニーズ・ウォンツに生き生きと応える第一線の社員の活躍によってこそ,企業の発展があると確信しています. それにはトップのリーダーシップとそれを実現する仕組み創りが大切ではないかと思います.

■ 私の提言  数字のススメ

玉川大学 工学部経営工学科 助教授 小野 道照
私たちの思い出に,マラソン選手,数々の柔道選手,水泳選手が現れて世界記録を更新したり,メダルを取ったとき,「日本のお家芸」復活とよく判らないことばで説明し,あるいは非人為的な事象に原因を求めていた. スポーツが根性物語につながったりする由縁かも知れない.品質管理を少しでも理解している人たちなら,なぜそういう選手が生まれたのかについて,プロセスを研究・分析するでしょう. しかし,意外とこのようなプロセスを明確にし再利用していこうとする動きが少ないのは残念である.

従来から変わらずに品質管理に期待されることは,「データ」から変化を読み取る能力をつけることである. 新しい世紀に向けて同様に期待されているのは,「データでものをいう」あるいは「事実に基づいて」という基本原理から客観的にそのデータの変化をとらえ仮説を立て,科学的に検証していく能力である. もちろん,従来と比較すればより以上にその「データ」から変化の読み取りの厳しさが求められていると考えられる.

少し品質管理と交わって「当たり前」,「理想」ということは大変難しいことであること. 「こうあるべきだ」「こうするのが理想だ」と思って,あるいはそういう思いなしに行動するけれども,管理されていることもある. 制度も意識も規定された人間が作っている以上,例えば「TQCはこういうもの」「TQMはこういうもの」「品質保証とはこういうもの」と思っているけれどもゆがんでいることもある.

アメリカでは,「豆腐のレシピ」の本が売れているそうです. 品質管理に興味のない人,やりたくてもできない会社に「QCのレシピ」の本でも提供するのも一案かと.

因果関係を言語的にもはっきりとさせた,自信に満ちた「日本的品質管理の原理」を確立すべきときがきている.


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