昨今,日本経済の閉塞観が漂っている.マクロ的には,バブル期に行ったことの清算をしているといわれている.東洋の陰陽思想でないが,陽の極から陰の極に向かって反転作用がおきているのであろうか.
人間が営む社会も巨大なるシステムであり,小さな揺れの影響が時として結果を大きくばらつかせるものである.現在の閉塞観はバブル期の清算もあろうが,金融・サービス業に対する自由化の流れが根底にあることも理解しておく必要がある.
これらの潮流は,第二次産業に対しても新たなるビジネスの機会でもあるが,金融・サービス業だけでなく広く教育,医療,公的サービスも含めての自由競争時代が到来しつつあるものと理解している.
日本の品質管理分野における歴史を振り返ってみると,鉄鋼の自由化,自動車や建設機械の自由化,そして電気業界の自由化また70年代に訪れた二度のオイルショックなどと業種,形態は変われど何度となく同様な危機がおとずれ,それに対応してきた.
それには,技術,マネジメントなど企業を運営する上でのさまざまな工夫がなされ,素晴らしい方法が開発され,実際に応用され成果を生んできた.
現在の品質管理に対する期待は,これらの潮流にたいして,新たなる答えを要求しているものと考える.今まで得られた知識を基本に新たなる品質経営の方法の概念とそれを展開する方法論の確立が必要な時期にきていると考えている.
すでにアメリカのマルコム・ボルドリッジ賞や,ヨーロッパ品質賞に代表される,国家レベルの品質賞の基本コンセプトは,品質に対するパラダイムシフトを起こしている.
企業を取りまくステーク・ホルダーの面から価値を見いだし提供し,如何にその満足度を向上させるかの視点にいれた経営としてのクオリティ(品物の質でない)の向上に取り組んでいる.
今後,これらを参考にするとともに,今まで創造されたマネジメントに関する方法などを原点にもどり見直し,要求に答える必要があると考えている.