■ ピックス ISO
9000の2000年改訂
中央大学理工学部 中條武志
2000年過ぎに発行予定のISO 9000シリーズの次期改訂版については,現在,ISO/TC176で審議中であり,その内容については未確定な部分が多い.
しかし,改訂の仕様書[1]や不完全ながら完成しているCD(Comittee Draft)[2]を見ることで改訂の方向を知ることは可能である.
■ISO 9001とISO 9004の位置付け
品質システムに対する要求事項を扱ったISO 9001 9003についは,製品品質を中心とし,経営の効率は含めないこと,顧客の要求の実現に関するものだけに焦点をしぼること,必要最小の品質保証要求事項とすることなどが確認されている.
ただし,「顧客の要求」を文書等で明示されたものに限定するのか,暗黙のニーズや期待も含むのかという点については意見の相違が残っている.
他方,品質管理のガイドラインであるISO 9004については,顧客の要求事項以上のものを効果的かつ効率的に提供することで競争上の優位を達成することをねらいとすることが決まっている.
■規格の一本化とTailoring
ISO 9001 9003の2000年改訂の最も大きいねらいは,製品の種類や事業の形態・規模によらず適用できるものにすることであり,このための,規格をISO
9001の一本のみにすることが決まった.
また,事業の形態によってはすべての要求事項に取り組むことが意味の無い場合も考えられるため,設計・開発,購買,生産,付帯サービスなど製品実現のプロセスに関する要求事項については該当しないことが立証できれば除外できる等のルールを設けることが検討されている.
■章の構成
章の構成については,ISO 9001とISO 9004 を統一し,従来の20品質システム要素を併記する形をやめることになった.
このねらいとしては,分かりやすさもあるが,製品の種類や事業の形態・規模による違いを吸収し易くする点が大きい.
現在の案は
- Management responsibility
- Resourse management
- Process management
- Measurement, analysis and improvement
となっており環境管理を扱ったISO 14000シリーズに近いものになっている. これは,マネジメントに関する複数の規格が存在し,それらの構成が異なるのは企業として対応しにくいという意見による.
■有効性強化のための追加要求事項
有効性を強化するための要求事項の追加もいくつか検討されている.
第一に,品質目標の設定・文書化を品質方針とは別に要求すること,適切な場合には部門別・階層別の品質目標を設定すること,顧客の要求を満たすための品質計画書の作成について明示的に求めることなどが検討されている.
また,不適合の防止だけでなく継続的な改善についても取り込むこと,組織が適切な品質改善の方法論についての知識を持っていることを求めることなどが検討されている.
さらに,組織の能力や効果性の評価に対する客観的な証拠も問題となっており,要員の訓練などについてその効果を評価することを求めることを検討している.
また,モチベーションを含めるかどうかが問題となっており,作業環境の人的側面・物理的側面の規定・実施を要求することが検討されている.
■補足規格の取り込み
1996年,ISO/TC176では大幅な組織改革が行われた. これは,アメリカを中心にQM(Quality
management)に関する補足規格が多数作られつつある状況に対するヨーロッパの反発から出たものと言える.
ISO 9000シリーズの整理・統合を検討するためのプロジェクト・チームが結成され,その検討結果に基づいて,現在発行されている20近くの規格の内容を,ISO
9001とISO 9004にできるだけ取り込む方向で検討が行われている.
また,TC176内部における規格の乱造を管理するため,ISO 9001とISO 9004の検討を行うグループの統合を含めた組織の簡素化と新規作業項目に対するルールの厳密な適用が進められている.
■参考文献
[1] |
ISO/TC176/SC2/N307, “Design Specification
for the Structure and Content of the Next Revision of ISO
9001, ISO 9002 and ISO 9003 Standards”, 1996. |
[2] |
ISO/TC176/SC2/N415, “ISO/CD1 9001:2000 Quality
management system :requirements”, 1998. |
■ 私の提言 サプライチェーンマネジメント時代の品質管理の在り方
(株)クボタ 専務取締役 木坂 博幸
日本経済が低成長時代に入り,事業運営において如何に体質を強化するかが問われている.
昨今,経営を診断する指標の一つとして,売上高利益率(ROS)から在庫資産に対する利益率(ROA)が注目されている.
即ち,従来の会計にないスループットと言う指標で経営を見直し,これを増大させることが企業体質を強化させることになる.
これがサプライチェーンマネジメント(以下SCMと呼ぶ)と呼ぶ手法である.
SCMはアメリカで開発された手法であるが,そのルーツは日本のTQC,JIT等でこれらをベースに理論化されたものである.
この手法では市場の変動に企業活動を即応させ,滞留(市場が必要としない製品)を極小化させ,調達・製造と言う部分最適から販売・市場をも含めた全体最適を実現させることである.
今,書店ではSCM関連の本は氾濫の感があるが,SCMの根本・必要条件・が何であるかを解説したものは少ない. SCMの実現の大前提は,QAの基本である「100%の良品を次工程に供給する」ことである.
製品は市場の要求に基づき生産され,且つ納期回答がされている. ラインオフ,即,出荷されるためには,不良品を発生させる工程では,顧客に満足を届けられない.
まさに,「次工程はお客様」の思想に,情報技術に裏打ちされたスピード経営のシステムを組み立てることが必要である.
日本では企業のTQC・TQMへの期待が80年代ほど高くなくなっているがSCM時代ではTQMの再構築が必要と思われる.
モトローラ,GEでは “6シグマ”運動によりQCの原点に戻った活動を推進しているのも,この時代背景があるのではないだろうか.
SCMの時代こそ80年代のQC へ注力したエネルギーを思い起こし,不良率は0に近づくほど品質向上の労力は増大するが,「リターンに見合うコスト」的発想でなく,限りない品質の向上を求められていると考えるべきである.
■ わが社の最新技術 エアコン組込式空気清浄器の開発
(株)ゼクセル エアメニティ事業部 中村美樹
■はじめに
近年,快適,健康指向の高まりから,空気環境の質的向上に対する要求が高まってきている.空気質を改善するアイテムとして空気清浄器があげられ,花粉,アレルギー患者の増加に伴って,空気清浄器市場は,家電製品分野を中心に急成長している.
自動車分野においても,花粉や排気ガス,タバコといった空気汚染物質が,発生,侵入しており,その効果的な改善の必要性はますます増加している.
今回,こうした市場ニーズに対応する為,社内の内気,外気ともに清浄化できるように,フロントエアコンにビルトイン可能な空気清浄器(エアコン組込式空気清浄器)の開発を行った.
■自動車内空気質の現状
車室内には,車外より,排気ガスや花粉などが侵入し,また,社内では,タバコなど,各種の汚染物質が存在している.そのため,車内を快適に保つには,それらの空気汚染物質を効率よく取り除く必要がある.
従来の据置空気清浄器は,車室内で喫煙するたばこの煙を除去することが主な目的であり,天井,および,リヤトレイ上に空気清浄器が設置されてきた.しかし,このようなタイプでは,車外より侵入する汚染物質に対しては,一旦,侵入した後に清浄化する為即効性の点からも十分な効果があるとは言えなかった.今回,開発したエアコン組込式空気清浄器はこうした課題に対応し,車内の空気の清浄化をはかることが可能となった.
■空気清浄器の構成
エアコン組込式空気清浄器の外観を図1に,仕様を表1に示す.
空気清浄器は,大きな塵埃を除去するプレフィルター部,高電圧を利用して微小なゴミや塵を捕集する集塵部,ガス成分を吸着する脱臭フィルター,高電圧を作り出す高圧電源部から構成される(図1).空気清浄器はエアコンへの着脱性を考慮して2分割されている.
高圧電源部には,車両電圧(12V)を高電圧に変換する回路,集塵部のメンテナンスタイミングを報知するタイマー,集塵部異常時に高圧出力を停止させる異常時制御等が含まれる.
また,脱臭部は通気抵抗を考慮して,ハニカム活性炭を採用した.
■空気清浄器の特徴
- 1.内気,外気とも空気清浄
- 空気清浄器は,エアコンのエバポレータ上流に位置している. 開発品は厚みが40oというコンパクトな形状を実現したため,ブロワとエバポレータの間に設置する事が可能となった.
そのため,内気,外気いずれの空気も清浄化でき,かつエバポレータの汚れも防止できるため,エアコン臭の発生防止にも効果的である.
- 2.高い集塵効果
- 集塵効果に優れた電気集塵方式により,花粉やタバコの煙はもちろん,目に見えない排気ガス粒子も効果的に除去できる. また,エアコン組込式のため,従来の据置式よりも大きな風量で高い空気清浄効果が得られる.
- 3.オゾン効果
- 荷電部でのコロナ放電により発生するオゾンにより、臭いの原因となる微生物の繁殖を防止.
- 4.低通気防止
- 電気集塵方式を採用しているため,通気抵抗の低い構造となっており,エアコンの冷暖房能力に影響を与えない構造になっている.
■おわりに
電気集塵を利用した集塵・除菌・脱臭システムを開発することにより,自動車室内の空気質改善が可能になったが,今後もさらなる快適性向上へ向けて研究開発を進めたい.
|