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学会誌「品質」
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JSQCニューズ 1998年11月 No.208

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トピックス「TRIZ概要」
私の提言「掲載論文数を増やそう」

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■ トピックス  TRIZ概要

(株)NTTデータ 公共システム事業本部 雪本 直樹
TRIZとは何か
TRIZ(トゥリーズ)とは,Theory of Inventive Problem Solvingの意味をロシア語の頭文字をアルファベットに置き換えたものである.

「発明的なアプローチによる問題変形手法」で,1946年,第二次大戦直後に,創始者のアルトシューラー(G.S.Altshuller)が,人間が発明したり問題解決をしたりというような,頭の中の思考活動に法則性があるのではないかと考え,約40万件の特許を調べ,新しい発明を考えていくのにどのような法則性があるかを徹底的に調査したものである.

矛盾を解決し,トレードオフを有しない解決策を発案した特許を多数発見し,これらの特許の問題解決プロセスそのものを抽出し,その結果,40の発明原理が得られたというものである.

それが発展し,ソビエト連邦崩壊までの間に,ロシアは秘密の国家プロジェクトとして西欧諸国の特許のほぼすべてを調査し,日本の特許も多数調べたといわれている.

TRIZの構成図

TRIZの構成
特許の問題解決プロセスそのものを抽出し,技術システムはさまざまな法則に従って進化していくという考え方で,「物質−場分析」という独特のモデル化手法と,問題を定義,モデル化,論点の絞り込み,理想解から現実的解の抽出していくものである.さらに,実際の技術システムの対立問題を克服するするための手順,「物質−場」モデルの典型的パターンごとの定石的手法を体系づけた標準解,そして実現したい機能から応用可能な原理・効果への指針を与える知識ベースから構成されている.

約40万件の特許の解析をした結果,「生産性と精度」「形状と速度」といった典型的なシステム対立が定義されたが,このシステム対立は僅か1250通りしかないことが発見され,このシステム対立を40通りの典型的克服技法(副次的技法を含めると100通り)で克服が可能であるとしている.

TRIZは,問題を解決する道筋とどのように行けばを教えてくれるもので,自己の経験の範囲内だけでえ解決法を見いだすのではなく,理想的な解決策は自分の経験分野の外側にあるということを実証しているといえよう.

特許の階層性

TRIZは,特許には階層性があるとして,5つの階層を以下のように示している.

  1. たぐいまれな発見とその応用
  2. 新しいコンセプトで新世代の解決策,サイエンス分野での解決策
  3. メジャーな改良で,経験分野の外枠で,既存の方法で根本的改善,矛盾解消
  4. マイナーな改良で,経験分野での既存の方法で対応
  5. 明白な解決策,普通の技術の組み合わせで対応
の5階層で,TRIZでの対応は,4〜5階層目は全部対応可能で,2階層目になると大変難しいとしているが,1階層目のたぐいまれな発見,発明は全体の3%程度であるともいわれている.
TRIZとQFD
実際の設計作業では,要求仕様(顧客のことば)からスタートし,数々の仕様書や図面を作成し,最終的な仕様や図面と遷移していく.設計はこの最終的な仕様や図面を作ることが目的で,途中の仕様や図面は情報の抽出・整理のためのものである(QFDの品質表も同様である).顧客のことばから出発して技術のことばに翻訳することで,設計業務の割り振りが行え,機能を実現する上で,数々の展開を行い,途中作成される図面類はインタフェースをとるための“考えを写像したもの”と考えることができる.TRIZもQFDも設計における思考過程を手順化したものであり,基本思想は「分ける」ことにあり,機能中心のTRIZと品質中心のQFD両者は親和性のある手法であろう.
どの程度普及しているか
近年,国際QFDシンポジウムでは,TRIZとの連携やTRIZに関する多くの発表がされ,スウェーデンでは創造的な設計をしようという国家的プロジェクトとしてスタートしている.

一方,アメリカでは,MITや自動車産業で研究,応用が始められている.

日本では,日経メカニカルで特集がくまれ大反響を呈し,別冊まで発行された.日本にはほとんど文献などない状態であるが,97年日刊工業新聞社から「TRIZ入門」が刊行された程度である.今後日本語文献の充実が望まれる.インターネットでは,いくつかホームページが解説されているので興味ある方は参照されるとよい.

参考文献: 畑村洋太郎ほか(1997):「TRIZ入門」,日刊工業新聞社

■ 私の提言  掲載論文数を増やそう

山梨大学 教授 新藤 久和
このところの長引く景気低迷のためか,品質管理界もやや活力が低下気味ではないかと心配している.たしかに難しい時代ではあるが,いつの時代にあっても顧客に満足される製品やサービスの提供に貢献するのが品質管理の使命であろう.

かつて,ドルショックやオイルショックに象徴されるように日本経済にとってきわめて困難な時代があったが,品質管理を進めることによって克服してきたことを再認識すべきではないかと考える.

それにもかかわらず,近年の論調の中には,これまで日本で培ってきた品質管理の代わりにアメリカ流儀を持ち込むことが新しい時代の経営のあるべき姿であるかのような錯覚を与えるものも少なくない.しかし,景気がよい国でやっていることがよいことで,景気が悪くなったらそれまでやってきたことを古くて悪いものだと決めつけるのは節操がない.

かつて困難な時代を克服できたのは,時代のニーズを先取りし,それに応えるような活動を展開してきたからであろう.しかるに,1970年代に品質機能展開や新QC七つ道具が提案されて以来,久しく新しい考えや手法が生まれてこなかったことは反省しなければならない.最近になって,戦略的方針管理や商品企画七つ道具が提案され,また,東京大学の飯塚悦功教授を委員長とするTQM委員会の「TQM宣言」とそれに続く「品質」の特集は大きな波紋を投げかけることになった.そこには,批判するだけではなく,創造的な活動を展開した人たちがいる.

新しいものを生み出すためにはリーダーとともに一緒に活動する人たちの集まりが不可欠である.学会は現在,約3000人の会員を擁している.これらの会員が小グループを編成し,研究会なども利用して時代のニーズに応えるような活動が展開され,その成果が学会誌に掲載されるようになることを期待したい.会員の1割に当たる300人が数年に1本の論文を掲載しても年間100本程度になることを考えると,現状は満足できるものではない.掲載論文数は学会の重要な管理項目であり,品質管理の学理と技術を向上させるためにも,また,学会の存在感を高めるためにも学会員の一層の奮起を促したい.


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