JSQC 社団法人日本品質管理学会
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学会誌「品質」
JSQCニューズ
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JSQCニューズ 1997年9月 No.199

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ホットニュース!
巻頭記事「JSQC versus JSQ」
私の提言「TQMの普及とそのハードル」
わが社の最新技術「皮膚老化機構解明に向けた 一重項酸素検出装置の開発」

■ ホットなニュース

大滝 厚(明治大学)
国際エンジニア教育検討委員会

さる7月28日に、日本工学会・日本工学教育協会が共催で、「国際的エンジニア教育検討委員会」の設立総会が開催され、JSQCもメンバーに加わることになりました。その主旨は次のとおりです。
  1. 4年生大学の工学部卒業生が、国際的に通用するエンジニアとして要求される能力を保持していることを実証し、且つ最終的に他国間の相互承認が得られるエンジニアリングプログラムのアクレディテーションシステム策定を目指す。

  2. 既に実績を有する各国のアクレディテーション団体(米国ABET、英国EC、カナダCEAB等)の定めたエンジニアリングアクレディテーションシステムとの整合、調整及び相互承認協定締結等の業務を推進できる民間組織(あるいは団体)の創設を準備する。

  3. わが国のアクレディテーション創設に当たり、米国ABET、英国ECの何れかを参考としてわが国の特徴を生かせるアクレディテーション基準と手順を定める。

  4. 今後わが国において創設されるであろう国際的に通用するエンジニア資格条件と、大学等における工学教育プログラムアクレディテーションシステムとの接点について調整を図る。

  5. 学会自体の広報活動の強化
以上のような設立主旨からわかりますように、エンジニア教育のISO9000版とも言えます。「4.」にある国際的に通用するエンジニア資格要件については、既にAPECで議論が進められています。いずれにしろ、これからは「国際的に通用するエンジニア(工学ではなく)の養成」が高等教育機関に科せられた課題になっていきます。

JSQCは、経営工学関係学会では、唯一の参加団体で、専門委員会の第9部(日本デザイン学会、日本物理学会、JSQC)で活動することになります(残念ながら、「その他の部会」のような印象ですが・・・)。関係学会を巻き込んで、イニシアチブをとるチャンスと考えています。皆様の積極的なご協力をお願いします。

■ 巻頭記事  JSQC versus JSQ

近藤 良夫
TQC vs CWQC

これは悪い冗談ではないが、次のようなことをしばしば経験した。まだTQM論議がいまほどさかんではない頃の話である。「TQCは日本語ではなんていうのですか」とおたずねすると、ほとんどの人は判り切った顔で、「全社的品質管理ですよ」と答えられる。そこで、「それじゃ、全社的品質管理は英語ではなんというのですか」とうかがうと、しばらく考えて「Companywide Quality Controlですかねえ」と少ししこりの残った顔つきで返事が返ってくる。はたしてTQCとCWQCとは同じものなのだろうか。

1960年代であったと記憶するが、日本のQC活動が全社的な拡がりを見せはじめた頃、ジュラン博士から「日本でTQCということばを使うと、フィーゲンバウム流のTQCと誤解されるから、TQCではなくCWQCを使うべきである」という親切な忠告をいただいたことが、私の頭にはなお鮮やかに残っている。

日科技連は1996年、TQC(全社的品質管理)とTQM(総合的品質管理)に呼称変更したが、この変更が実りの少い、不用の多くの論議をまきおこさないように願っている。

日本人にとって、このような外国語の呼称はたんなる記号として理解されることが多い。これらの呼称を国内で、日本人の間だけで使っているうちはよいかも知れないが、国際的に使う場合には、相手側の誤解を避け、理解を深めるための慎重な配慮が必要である。少し話題は逸れるが、このごろ新設される大学の大学名、学部、学科、講座名に、適切な外国名を与えるのが極めて難しい例が散見される。新設の学問分野だからという理由もないではない。しかしここでも文部省も含めて、不用の論議を避け、同時に国際的な相互理解を深めるための努力をつくすべきであろう。

JSQC vs 日本品質管理学会

さて、わが日本品質管理学会の名称変更に戻ることとしよう。

IAQの公用語は英語だが、その1966年の創設以来、名称変更はしていない。EOQは1956年にEOQCとして創設されたが、1988年のモスコー大会以来、公用語である英語のControlを削除してEOQに名称を変更している。ASQCが本年5月の総会で末尾のControlを削除して、7月からASQに名称変更したことはわれわれが熟知するところである。

これらの変更にはそれぞれ理由があって、例えばASQの機関紙Quality Progressの7月号は“Quality as a Way of Life"(「生きかたの質」と訳すべきか)の特集号とし品質がたんに企業の職場だけでなく、われわれの日常生活のいろいろの面で重視されるべきであり、実際に効果をあげつつあることを強調している。

ジュランのJuran's Quality Control Handbookの第5版は来年早々に発売される予定だが、これもJuran's Handbook on Qualityと名前を変える。これは“quality"をさらに強調したいとの意図によるものである。

このような国外の動きについて注意して欲しいのは、いずれも公用語もしくは自国語の名称についての変更であり、外国語の名称の変更ではないことである。もしわれわれが日本語の名称「日本品質管理学会」はそのままにしておいて、英文名だけJSQCの末尾の“C”を除いてJSQにしたとすると、われわれはその変更の理由をどう説明したら良いのだろうか。

韓国ではKSQCをKSQMに、また台湾では今年からCSQCをCQSにそれぞれ変更したという。それはよいとして、そのもとと言うべき自国語の名称変更とそれぞれの理由はどうなっているのだろうか。

以下に述べるのは一老兵の私見である。

JSQC vs JSQ

“control"ということばは、削除しなければならない「悪物」にいつからなったのだろう。われわれはそれが拡大解釈であることをよく知りながら、管理とはPDCAのサイクルをまわすことであると教えられ、得られた結果のうち良いものは標準化し、悪いものはその原因を除去することによって、プロセスの改善に努めてきた。

これらの個々の改善は些細かも知れないが、その連続的改善の効果は、これらを行わずに従業員の解雇やダウンサイジングのみを重点的に行って成果を挙げている多くの米国企業に比べると、長期的にみて顕著なことは明白である。またこのことは最近多くの海外企業で認められ、実施されようとしている。

いまわれわれが“control"ということばを削除することが「角を矯めて牛を殺す」愚に陥ることのないよう心から願っている。

■ 私の提言  TQMの普及とそのハードル

大阪工業大学 能勢 豊一
今から27年も前の学生の頃ですが、小生が品質管理の面白さを味わってみたいというきっかけになった日科技連出版社発行のコニカ(株)会長の米山 高範前学会長の著書「品質管理のはなし」を読んだことを思い出します。

品質管理のハードルを感じさせずに興味を抱かせる著書だったように記憶しています。

品質管理に総合的品質管理(TQC)と統計的品質管理(SQC)の2つのアプローチがあることを知ったのもその頃でした。

学生だった私にはTQCの話は雲をつかむようで難しかったのに対して、明快なプロセスと結論の見えるSQCには共感した記憶があります。

確率・分布の概念を中心に、さまざまな複雑系の現象を説明するSQCは、確かに小気味良いものでした。

今から考えると、いきなり複雑系の社会現象を理解しようとするより、制約条件付きのモデルが見せてくれる単純明快なプロセスのほうが親しみやすかったようです。

教育効果という観点でながめた場合、導入教育は複雑な理論よりも単純明快なキーワードや条件反射的な方法のほうが効果的で、多くの人の興味を引き付けます。

しかし、簡単にマスターできるものは逆に多くの人の興味を失わしめるのも早いものです。

ゲームマシーンやファミコンゲームの流行る、流行らないの境目もその辺りにあるといわれます。

楽しむまでのハードルは低く、楽しみ出すと奥が深いゲームが流行るそうです。

小生にとってのSQCは正に、ゲームのような楽しい世界であるとともに奥行きの深いアマゾンのような世界でした。

一方、TQCは最近TQMに衣替えしましたが、ここはさらに宇宙のように奥の深い分野でSQCと比較すると職人芸的部分の強いところだと思います。

自然科学の分野と違い、経営に存在する社会科学分野の現象は、集団のばらつきだけでなく個人のばらつきが大きく存在し、世の中の現象をさらに複雑にしています。

経営はいま、従来以上にドラスティックな効果を挙げる改善を求めています。

TQMが経営の問題を正面から扱う活動に向かうとき、経営に存在する現象と理論の間にある埋め尽くせていない多くの問題をどのように解決するかという点は大変興味深いところです。

■ わが社の最新技術
皮膚老化機構解明に向けた 一重項酸素検出装置の開発

株式会社コーセー研究所 研究所長 宿崎 幸一

はじめに

今日、活性酸素と皮膚老化の関係が明らかになりつつあり、活性酸素研究は化粧品分野における大きなテーマの一つになっている。

当社では4年前、東京大学薬学部と郵政省通信総合研究所との協力を得て、活性酸素の一種である一重項酸素の検出装置を開発した。そこで、この装置の特徴と一重項酸素研究の化粧品開発への応用について紹介する。

一重項酸素とは

一重項酸素とは活性酸素の一種であり、通常の安定した三重項酸素の電子配置が一重項状態に励起されたもので反応性に富んでいる。活性酸素には、この他、スーパーオキサイド、過酸化水素、ヒドロキシラジカル等があるが、一重項酸素は他の活性酸素に比べ研究が遅れていた。なぜなら、一重項酸素の水中での寿命は僅か百万分の一秒と非常に短く、直接検出することができなかったからである。これまでの検出方法は、一重項酸素との反応性生物を定量とする等間接的な方法に限られており、感度と特異性にかけていた。

そこで我々は、近赤外発光法に基づく一重項酸素検出装置を開発した。本法は一重項酸素が基底状態の三重項酸素に戻る時に出す近赤外領域の発光のうち1268nmの発光を検出するもので、物理的な信頼性が最も高いとされている。この装置により、一重項酸素が関与する現象を高い信頼性をもって証明することが可能となった。本装置を有する施設は世界的に見ても数が少ない。国内で稼動しているものは唯一と思われる。

一重項酸素検出装置の概略

実際に、一重項酸素を発生するか否かを検出する場合、試料室のフローセル中に試料を循環させ、フローセルにArレーザー光を照射する。レーザー光は、500nm付近の可視光と紫外光を用いることができる。励起された試料が基底状態の酸素にエネルギーを渡すと、一重項酸素が発生する。このフローセル中に発生した一重項酸素由来の発光を集中して分光後、Geディテクターを用いた検出器へと導く。そして、一重項酸素の発生量に対応した1268nmの発光強度を得る。発光強度の減少度合を測定することにより、一重項酸素消去剤のスクリーニングも可能である。
化粧品開発への応用例

これまでに我々は、皮膚での反応に一重項酸素が関与していることや、化粧品の品質保持のために一重項酸素の影響を考える必要性があることを明らかにしてきた。ここでは、その例を紹介する。

4−1)皮膚表面での一重項酸素の検出

暗室内においてヒトの顔面に紫外線ランプを照射すると、ポツポツとオレンジ色の蛍光が観察される。これは、皮脂を分泌する皮脂腺内でアクネ菌が産生したポルフィリン類が、皮脂とともに皮表に排出されたものである。本装置を用いて、皮脂から採取したポルフィリンにレーザー光を照射すると、一重項酸素を発生していることが明らかになった。更に、ポルフィリンから発生した一重項酸素により、皮脂が速やかに過酸化することもわかった。日中紫外線を浴びている時、皮脂上に存在するポルフィリンが一重項酸素を発生し、過酸化脂質の生成を促していることを考えると、一重項酸素の皮膚への影響は大きいといえる。
4−2)化粧品に使用されている色素の褐色メカニズム
化粧品に使用されている色素の中には、光による経時的褐色が問題になるものも少なくない。オレンジUなどのアゾ色素を一重項酸素を発生する色素と共存させると、一重項酸素の発生量とアゾ色素の褐色速度に極めて高い相関が見られ、一重項酸素が色素の光褐色の主要因子の一つであることが明らかになった。
おわりに

本装置の開発により、一重項酸素の皮膚そして、化粧品への影響について解明する手掛かりをつかんだ。更に、一重項酸素消去剤の開発は、一重項酸素による様々な悪影響を制御するために有用であることが示唆された。本装置を応用し、化粧品開発のための更なる研究を進めていきたい。


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