今年の12月に地球温暖化防止のための京都会議が開催される.京都会議に関連する新聞やテレビの総報道量は膨大であり,地球環境問題への社会の関心がやっと本格化しつつあるように見受けられる.
しかし地球温暖化だけが地球環境問題のすべてではない.近代文明が全ての局面において過去数十億年にわたって蓄積された地球資源の"食い潰し"によって成立している文明であり,いずれは終局を迎えることは誰しもが認識している.あるいは潜在的に意識している.
そこで「近代文明の寿命」を如何に認識しているかを調査してみた.最初は地球環境問題に専門度が高いと自認する研究者58名を対象にしたが,結果は驚くべきものであった.
「近代文明の寿命は100年以下」であるとの認識が示されたのである.われわれが享受している近代文明は21世紀には消滅することになる.
この調査結果は特殊な専門家のみの判断ではない.その後,同様の調査を社会人,学生,主婦,中国人など約1,000名を対象として実施したが,極めて類似な調査結果が得られている.
では,この予測値はどのように認識されているであろうか。「社会の経済体制(市場経済など)を根底より見直す必要を感じる。」に同意する社会人は58%にも達する.
これは現在の企業のあり方を全面的に見直させるものである.マーケットメカニズムに代替する新しい経済の方式を探索しなければならない.顧客至上主義も再検討が要求されることになるであろう.
またさらに「社会制度(民主主義や人権思想)を根底より見直す必要を感じる。」に対しても同意する社会人が33%も存在する.
言うまでもなく民主主義と人権思想は現在の社会を構成している理念の根幹であり,それを否定する質問に33%が賛成していることに注目を頂きたい.
地球環境問題は要因が複雑であり,しかも人類としての基本的な理念・哲学が関与している.このように関連する要因が錯綜し,しかも総合的な判断が必要とされる問題を解決できる技術分野は品質管理をはじめとする経営管理技術でないであろうか.TQMの役割もまた大きいと思われる.