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学会誌「品質」
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JSQCニューズ 2015年11月 No.344

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■トピックス:ISO 9001:2015に対する組織の対応
■私の提言:“もったいない”と後悔しない! 学会参加が“学びの機会”
・PDF版はこちらをクリックしてください →news344.pdf

トピックス
ISO 9001:2015に対する組織の対応

(有)福丸マネジメントテクノ 福丸 典芳

1.はじめに
 ISO 9001は2015年9月に発行されたので、ISO 9001の認証組織は3年間で2015年版に移行完了する必要がある。このため、要求事項の意図を十分理解したうえで対応することが必要である。

2.改定の趣旨
 今回の改訂では、(1)変化する世界に適応する、(2)顧客を満足させる組織の能力を強化する、(3)将来に向けて一貫性のある基盤を提供する、(4)組織が置かれているますます複雑になる環境を反映する、(5)すべての利害関係者のニーズを反映する、(6)他のマネジメントシステムと統合することを主眼としている。

3.2008年版との相違点
 主な変更点は、(1)規格の構造にISO/IEC専門業務用指針の附属書SLを採用、(2)リスクに基づく考え方を導入、(3)QMSの方針及び目標と組織の戦略との密接な関係付け、(4)文書類に対する一層の柔軟性を持たせている点である。規格の構造は、4組織の状況、5リーダーシップ、6計画、7支援、8運用、9パフォーマンス評価、10改善となっている。
 4.1組織の事業環境及びQMSの能力に影響する外部・内部の課題を理解すること、4.2顧客及び法令・規制要求事項だけでなく、QMSに密接に関連する(QMSの運営管理に重大なリスクを与える)利害関係者及びその要求事項を考慮すること、6.1QMSの計画策定では、リスク及び機会への取組みを行うこと、トップマネジメントのリーダーシップに関する役割が強化されている。
 以上のことから、QMSのみで運営管理することは組織の事業運営に効果的かつ効率的でないので、事業プロセスとQMS要求事項との統合を行うことが明確にされている。
 これ以外にも、7.1.6組織の知識に関する新たな要求事項も追加されており、その他の要求事項も一部追加修正されているので内容を把握することが大切である。

4.移行にあたっての注意点
aQMS運営管理担当者の規格の理解
 社外・社内研修で要求事項の意図を理解する。特に、ISO 9000の箇条2の基本概念(品質、品質マネジメントシステム、組織の状況、利害関係者など)と品質マネジメントの原則(顧客重視、   リーダーシップ、人々の積極的参加、プロセスアプローチ、改善、客観的事実に基づく意思決定、関係性管理)を理解することで、ISO 9001の理解が高まる。
b)トップマネジメントへの説明
 2015年版の規格改正の考え方とトップマネジメントの役割が強化され、さらに事業活動との一体化が図られていることを重点的に説明する。説明にあたっては、ISO 9001の序文を中心に説明する。特にQMSのPDCAサイクル(方針管理)とプロセスのSDCAサイクル(日常管理)が、より明確になったことを説明する。
c)社員への教育・訓練
 要求事項の考え方とその意図を中心に置き、特に仕事との関係を示しながら解説する。
d)内部監査員の教育・訓練
 QMSのPDCAサイクルとプロセスのSDCAサイクルの知識及び有効性に関する監査技術の教育・訓練を実施する。
e)規程類の改訂
 今回の改訂では、品質マニュアルの作成及び6つの文書化要求事項は削除された。しかし、標準化の体系に基づいて要求事項に関連する規程類の見直しを行うことが大切である。
 なお、品質マニュアルを作成する際には、要求事項の項番どおりに作成する必要はなく、事業プロセスとの統合を考慮して、事業活動の実態に合った構造にすることが効果的である。
f)移行計画の作成
 規格発行後、3年間で移行完了させる必要があるので、移行計画を早急に作成することが大切である。

 


私の提言
“もったいない”と後悔しない!
 学会参加が“学びの機会”

 
クリエイティブ マインド代表 木 美作恵

 戦後、日本経済の発展に大きく寄与してきた品質管理の歴史は、先達の志を持った奮励努力が日本の良さ・強みとしてその礎を築き、度重なる経済危機を乗り越える原動力になってきました。特に、品質管理が経営の中で大きな役割を担い、経営の柱として貢献することを証明してきました。中でも、“人財”の育成は、多くの企業が「品質管理は勉強に始まり、勉強に終わる」「人づくりはモノづくり」「品質より人質を上げろ」「仕事(使命)が人をつくる」として、質の高いマネジメント力で、“人が育つ”環境やしくみづくりに鋭意努力し続けています。
 そして、日本企業特有の強みとして、さまざまな環境変化に対応しながらも“人づくり”の大切さは途切れることなく、引き継がれています。
 しかし、学ぶ機会も情報も乏しい時代に工業化時代を支えた先達の貪欲に学び、根気強く研究・実践し、使命感をもって新たな技術革新をし続けた努力を想うと、学ぶ機会に恵まれた今の環境は、大きく異なります。それぞれの時代において、悩みは尽きないものですが、私は、現役時代を振り返り“もったいない”と強く感じていることがあります。
 それは、一歩外に目を向けると、社内では得られない学びの場が多いにもかかわらず、その機会を逃し、恩恵を受ける人が意外と少ないことです。私自身、本学会行事に参加するようになったのは、退職する1年前で、学会からのお声掛けでした。参加して驚いたことは、充実した行事を沢山用意し、質の高い学習機会を広げられることに心底感動し、何故もっと早く参加しなかったのかと後悔したことを忘れることができません。本学会ビジョンは、必要とする皆さんのために活動しており、環境変化に対応する、新しい技術・手法の研究・開発の推進に寄与し、得られた成果を産業界・社会に普及させる役割を担っています。豊かな社会を目指すために尽くす“志と覚悟”が感じられます。学会の行事や活動への参画は、現役世代の自己啓発・相互啓発の絶好の機会です。
 チャンスがあるのに“もったいない”と後悔しない為にも、本学会はもとより、多くの学び成長する機会を得て、品質を原点とする日本の未来に向けて、大きな力になるものと確信しています。


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