個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)が2003(平成15)年5月に公布されて10年を超える。この間に、情報通信技術が飛躍的に発展した。携帯電話、スマートホーン、GPS、フェイスブック、グーグルなど、多種多様なデータの収集や分析が可能となり、2015(平成27)年1月以降に、個人情報保護法の改正を図ると同時に、関係法案の提出が検討されている。
一方、平成26年3月に、EUの欧州議会本会議で、個人データ保護規則案が可決された。
個人情報保護法では、個人情報は、“個人を特定する情報”として定義されたが、この10年間の情報通信技術の発展に合わない部分が顕著に生じている。欧米のプライバシーデータの概念は、日本語でいう“個人情報”のみでなく、プライバシーに関する情報、データを収集すると個人を特定できる情報(GPSデータ、SUICAの乗降データ等)を含んでいる。ビッグデータの定義はないが、結果として収集された膨大かつ多種多様なデータの集合をビックデータと称し、このビックデータの利活用により、新産業や新サービスの創出に結びつくと期待されている。
例えば、携帯電話、スマートホーンを例にとると、ビジネスとして、キャリヤと呼ばれる通信業者としてのビジネス、スマートホーンにインストールするソフトビジネス、コンテンツビジネスが存在する。個人情報と関わるソフトの利用に伴う課金情報と利用者情報は、国境を越えて展開され市場調査や製品開発に利用されている。その反面、個人情報保護の重要性は、益々、増大している。
米国のグーグル社の利用規約では、“利用者が投稿したデータを同社が定めた様々な用途に利用できる”とあり、収集したデータを独自のビジネスに展開することができる。
個人情報保護法の改正の狙いは、ビックデータ等の利活用により大きなビジネスの起爆剤となり、一方では、“個人の権利利益の侵害を未然に防止する”ことにある。
大きな改正点は、“第三者提供等を本人の同意がなくても行うことを可能とする枠組を導入する”ことで、具体的には、“個人の特定性を低減したデータ”であれば、本人の同意がなくとも提供可能となる。
法律家の最初の議論は、匿名性(anonymity:追跡不可能性)が満たされると本人の同意がなくとも第三者提供してよいと考えていたが、匿名性は未実現のIT技術といわれ、改正案では非常に緩やかな表現となっている。
もう一つの大きなイベントは、2013(平成25)年5月24日の番号法の成立である。「クロヨン」と呼ばれ、国税庁の所得把握率が、給与所得者の9割、自営業者の6割、農業従事者の4割にとどまっている。この所得把握率の不均衡をなくすために、支払調書に事業所得者の個人番号を記載し、取りはぐれをなくそうというものである。支払い調書に個人番号を記載する必要から、どこまで取引の相手が協力するかを疑問視する向きがあるが、成功すれば税収入アップとなる。
2015(平成27)年10月から、12桁のマイナンバー制度が施行され、紙の通知番号が郵送で市町村から通知される。11桁は地方自治体で、目に見えない形で振られ、すでに適用されていて、まず、各家庭単位で番号が振られる。各職場に通知され、納税及びその他に利用される。
2016(平成28)年以降からは、住民の申請により、通知カードと引き換えに顔写真付きの個人番号カードの交付が可能である。
いずれにしても、ただでさえ、日本からデータが出ていくが、国外からはデータが来ないなど、不平等な状態下に置かれている。日本政府は、ビックデータ等の利活用により大きなビジネスを日本に呼び込むために、EUに歩調を合わせ、日本に膨大なデータが集まる仕組みを、早急に構築する必要があり、パーソナルデータに関する法改正及び関係法案の提出を急いでいる。